#43 背中の温度
6月11日(日)【7日目-8】
帰りの電車、短い間だったけど先生は爆睡していた。
お疲れなんだね。
肩にもたれかかってくる。
うちのお兄ちゃんみたいだし…。
ってか…重いからっ!
「今日はなんとか無事だったよ…。」
駅に着いて歩きながらバイトの話をしてくれた。
「昨日は巡回中にチャックが下りる音してビビったし…。」
なんとも恐ろしい話。
また、ガキ男子のしわざだな!
ゆるすまじ!
「昨日と同じとこ蹴られた…」
左のヒザあたりをさする。
昨日も…?!
「キグルミってさ、守られてると思うでしょ?でも、意外と子供の本気キックのが強いんだよ。」
なんか痛がってるくせに楽しそう。
「かわいそうになぁ…」
カバンについてるライタの左足をなでた。
「そーいや、よくわかったね。」
どういうこと?
「え?風船受け取ってたし、なんか気を使ってくれてたし…気づいてたんじゃないの?」
ゆっこさんが言ってた「ナイスコンビネーション」って……!そーゆーこと…?
今更ながら、なんか照れくさくなってきた。
「!?」
……!?
「雨…?!」
たしかにポツリときた。
朝はいい天気だったのにな。
歩いているうち、さらにポツリポツリ降ってきた。
早足になるけどすぐザーッとなる。
「走ろう!」
先生に右手をつかまれ猛ダッシュ。
大粒の雨はとても冷たく、右手はとても温かかった。
痛っ……。
早く走ってもびしょびしょは変わらなくなってきて…サンダルのベルトが擦れて痛い。
「大丈夫?」
こすれた左足が赤くなって雨にしみる。
「おぶってくから!」
背中をこちらにむける。
え?!あ。
背負われて先生の家に到着。
「シャワー、先に浴びてきな。」
張り付いた服、びしょ濡れの髪。
サンダルのスナップがなかなか外せなくて先生が外してくれた。
<つづく>
だから、着ぐるみ蹴っちゃダメ!