前回の衆院選から現在を振り返る | 大人のための政治教室

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さて、衆院選が近づいてきたので、前回の衆院選から現在までを振り返ります。

前回の衆院選からの期間は大きく分けて4つに分けられます。

 

第一次野党再編期

→統一地方選・参院選期

→安倍政権末期・第二次野党再編期

→菅・岸田政権期

 

役職等は全て当時のものです。

 

1.第48回衆議院選挙とは

まず、前回の衆院選はどのような選挙であったのかを振り返ります。

それまで安泰であった安倍政権は、2017年2月に発覚した森友学園問題、その後発覚した加計学園問題とスキャンダルに見舞われ、支持率が急落することになります。そんな中、前年の都知事選挙で圧勝した小池百合子都知事が都民ファーストの会を結成し、7月の都議選で圧勝します。自民党は豊田真由子衆議院議員のハゲ発言や、安倍総理の「こんな人たち」発言なども影響し、過去最低の23議席と惨敗します。そうした中、野党で大きな動きがあります。2016年の参院選で初めて共産党と協力体制を敷くことになり、一定の成果を上げますが、野党第一党の民進党内で共産党と協力することに疑問の声が相次ぎます。民進党が都議選で5議席しか取れなかったことも影響し、共産党と共闘することに反対する議員たちが次々と民進党を離党していきます。離党ラッシュを止められなかった蓮舫代表が辞任し、民進党代表選が行われることなります。9月1日に投開票された代表戦は前原誠司氏と枝野幸男氏の一騎打ちとなり、前原氏が新代表に選ばれます。前原氏は山尾志桜里衆議院議員を幹事長に選びますが、6日に山尾氏の不倫問題が発覚し、山尾氏は離党することになります。

民進党の乱れをチャンスと考えた安倍総理は、野党からの再三の要求があったものの無視していた臨時国会を召集し、冒頭で解散することを表明。一気に衆院選モードになります。

解散が目前に迫る9月25日、民進党を離党した議員たちと小池百合子都知事が連携し、希望の党を結党すると、28日に解散された翌29日、民進党の前原代表が民進党からは候補者を出さず、希望の党と合流することを表明。民進党所属の多くの衆議院議員が希望の党からの立候補をすることになるものの、小池氏と折り合いがつかなった議員たちが先の代表選で敗れた枝野氏を担ぎ上げ、立憲民主党を結党。野党第一党であった民進党は、希望の党、立憲民主党と、どちらにも付かずに無所属での出馬の3つに分かれた分裂選挙となりました。更に、参議院で民進党が存続していたため事実上4つに分かれ、参議院議員たちは政党ではなく、それぞれが支持したい候補者の応援をすることになりました。

10月10日の公示日の時点で自民党の圧勝、希望の党が野党第一党との予測でしたが、希望の党が徐々に失速し、立憲民主党が支持を拡大しました。結果は野党分裂で利を得た自民党が284議席で過半数を大きく上回る圧勝をし、立憲民主党が55議席で野党第一党、希望の党が50議席で野党第2党となりました。希望の党は小池百合子知事に近い人はほぼ当選せず、当選者のほとんどは民進党からの移籍組でした。

なお、公明党、共産党、維新も議席を減らすことになりました。

 

 

2.第一次野党再編期

衆院選によって4つに分かれた民進党がどうなるのかいうことが、衆院選後の最初に注目でした。

まず、混乱を招いた前原代表が辞任し、翌日希望の党へ移籍します。所属衆議院議員の大半が立憲民主党と希望の党に移籍した民進党は、参議院議員を中心とした政党となり、参議院議員の大塚耕平氏が新たに代表に就任します。

11月1日に開かれた特別国会で第四次安倍政権が誕生しますが、首班指名選挙で衆議院では立憲民主党の枝野氏が2位、参議院では民進党の大塚氏が2位と、衆参で2番目に得票した人物が異なるという事態が起こりました。その後、希望の党の小池百合子都知事が代表を辞任し、玉木雄一郎衆議院議員と大串博志衆議院議員で代表選が行われ、玉木氏が希望の党の2代目代表に就任します。

選挙の直後から立憲民主党、希望の党、民進党と、無所属で衆院選を勝ち抜いた統一会派「無所属の会」(代表:岡田克也衆議院議員)の3党と1会派は自民党に打ち勝つ巨大野党を作るための協議をしますが、なかなかまとまりません。

最初に動いたのは希望の党と民進党で、統一会派を組むことになりました。しかし、中山成彬衆議院議員ら5人が民進党との統一会派を組むことに反対して主流派と対立し、希望の党は分党することになりました。2018年5月7日に国民党と新希望の党に分かれ、国民党はその日のうちに民進党と合併して、新たに国民民主党を結党することになりました。民進党籍の国会議員は自動的に国民民主党に移ることになるため、民進党内でも離党が相次ぎ、立憲民主党に移籍する議員や、無所属で活動する議員が多数いました。

なお、新希望の党は2019年の参院選で所属参議院議員が出馬しなかったことにより、国会議員5人という政党要件を失って政治団体になりました。

2018年の3月に財務省による公文書改ざん問題が発覚し、7月には西日本豪雨における赤坂自民亭事件が発覚し、安倍内閣の支持率は一時的に下がることになりました。また、参議院の定数増や特定枠の設置が決まり、内閣不信任案における立憲民主党の枝野代表の3時間演説が話題となり、緊急出版されることになりました。

 

 

 

3.統一地方選・参院選期

2018年の9月には自民党総裁選が行われて安倍総理が石破茂氏を破り3連続当選(通算4回目)し、歴代最長政権への足掛かりとなりました。2019年に入ると統一地方選や参院選に向けた動きが加速します。

まず、3月に大阪都構想の民意を問うとして、松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長がダブル辞職。これにより、統一地方選最大の注目選挙が大阪府知事選挙と大阪市長選挙となりました。4月1日に新元号「令和」が発表されると、自由党の山本太郎参議院議員がれいわ新選組の結党を発表し、自身を含めた候補者を次期参院選に擁立することを公表しました。

統一地方選前半で維新はそれぞれ役職を入れ替え挑み大阪市長選で松井一郎氏が、大阪府知事選は吉村洋文知事が圧勝し、大阪府議選、大阪市議選でもそれぞれ維新が圧勝しました。他の道府県では維新はほとんど議席を獲得できず、立憲民主党が顕著に議席を増やす形になりました。統一地方選後半でも同様の結果が生じています。統一地方選後半と同日選となった衆議院補欠選挙では、沖縄3区ではオール沖縄が支持する屋良朝博氏が、大阪12区では維新公認の藤田文武氏が当選し、地域の特徴が顕著に出ました。同時期、自由党が国民民主党に吸収されました。

新天皇が即位し新元号「令和」の時代が始まると、6月には、前月の国後島訪問時の発言をめぐり維新の丸山穂高衆議院議員の糾弾決議が可決します。参院選に合わせて衆議院が解散されると予測を立てる人もいましたが衆議院が解散されることなく6月26日会期末を迎え、参院選モードになります。

参院選では立憲、国民、共産、社民による共闘が行われ、全ての一人区で候補者の一本化が行われました。選挙結果は3回連続で自公が改選過半数を獲得するものの、自民党が議席を減らし、改憲勢力での3分の2を下回ります。共闘野党はあまり議席が伸びず、維新は関西だけでなく東京、神奈川でも議席を獲得し、既成政党では唯一の明確な勝者となりました。

この選挙では4月に結党されたばかりのれいわ新選組と国政初挑戦のNHKから国民を守る党が議席の獲得と政党要件の達成をし、今世紀で初めて政治団体が政党に昇格するという新党ブームが起こりました。れいわ新選組は今回から設けられた比例代表の特定枠で重度障がい者2名が当選するものの個人最多得票を得た山本太郎代表が落選、NHKから国民を守る党は立花孝志党首が当選し、選挙後に丸山穂高衆議院議員が入党しました。

 

なお、この選挙については過去に詳しく書いたので、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

 

4.安倍政権末期・第二次野党再編期

2019年9月9日の台風15号が千葉県を中心に大きな被害を出し、市長たちが災害対応をする中、まともな対応ができない鈴木栄治(森田健作)知事が批判されます。同時期に内閣改造が行われ、第4次安倍第2次改造政権が発足します。10月12日にも巨大台風が東日本を中心に遅い、大きな被害が発生します。

NHKから国民を守る党の立花孝志党首が10月10日の参議院埼玉補欠選挙へ立候補したことで自動失職。この選挙は立花氏と、立憲や国民などが支持する上田清司前埼玉県知事の争いとなり、上田氏が圧勝しました。

10月4日に開会した第200回臨時国会で桜を見る会問題が注目され、翌年の201回通常国会でも大きく取り上げられることになります。

こうした中、12月25日にIR汚職で自民党の秋元司衆議院議員が逮捕され、翌月起訴されます。また前年から疑惑のあった参議院広島選挙区の買収事件では3月に秘書らが逮捕され、6月18には河井夫婦が逮捕、翌月起訴されます。

1月には日本で最初の新型コロナウイルスの感染が発覚し、国会ではコロナウイルス関連の質疑や法案が中心となります。2月27日に安倍総理が公立学校の臨時休校を要請したことで自粛モードとなり、3月24日には東京オリンピックの1年延期が表明され、4月7日には最初の緊急事態宣言が発令されました。

5月には検察庁法改正をめぐり主にtwitterで抗議運動が行われて廃案に追い込まれます。

こうした中、アベノマスクと呼ばれる布マスクの配布などのコロナ対策が批判を浴び、安倍内閣と自民党の支持率が急落し、8月28日には持病の再発を理由として安倍総理が辞任を表明します。安倍総理の辞任に伴って自民党総裁選の投開票が9月14日に行われ、菅義偉官房長官が、岸田文雄、石破茂両氏を破って当選し、16日臨時国会が開かれて第99代内閣総理大臣に就任します。

同時期、立憲民主党、国民民主党と、衆議院会派「社会保障を立て直す国民会議」・「無所属フォーラム」の合流協議が行われます。合流新党には衆参合わせて149人の議員が参加することなり、立憲民主党、国民民主党を共に解党することも決まりました。これにより、法的には民主党、民進党の後継政党である国民民主党が決まり、かつて政権を担った民主党の歴史が完全に幕を閉じました。9月10日に代表選挙と党名選挙の投開票が行われ、立憲民主党の代表であった枝野幸男氏が、国民民主党の政調会長であった泉健太氏を破り初代代表となりました。また、新党名は「民主党」を上回り、旧党名と同じ「立憲民主党」となりました。

一方、合流新党に参加しないことを表明した議員のうち13名が旧党名と同じ国民民主党を結党し、暫定代表に国民民主党代表であった玉木雄一郎氏が就任します。12月8日に代表選が行われ、伊藤孝恵参議院議員を破り引き続き玉木氏が代表となります。

また、この頃、東京都知事選挙が行われ、自公が実質支援をした現職の小池百合子知事が、立憲や共産が支援した宇都宮健児氏、れいわ新選組代表の山本太郎氏らを破って再選しました。

 

 

5.菅・岸田政権期

2020年9月16日に組閣された菅義偉内閣は、衆議院の任期満了が1年1カ月程度であったことから、組閣当初から衆院選がいつ行われるのかが話題となりました。就任当初は高支持率を誇り、10月に日本学術会議の任命拒否問題が発覚しても大きく下がることはありませんでした。

しかし、年末になるにつれてコロナウイルスの感染者が増加すると、安倍内閣末期の7月に始まったGoToキャンペーンが批判の的となって支持率が急落し、中止に追い込まれました。

また、12月には吉川貴盛元農水大臣の現金授受問題が発覚し、衆議院議員を辞職しました。

 

この頃大阪では「大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票」が行われ、反対多数で特別区の設置は中止となりました。4月以降支持率が上昇傾向であった維新は、この件で支持率が落ちることになります。

 

年が明けて2021年1月7日に2度目の緊急事態宣言が出されると、国民に外出や会食の自粛を求める中、与党議員の外出や会食発覚が相次ぎ、大きな批判を浴びます。

3月には千葉県知事、千葉市長のダブル選挙が行われ、知事選は熊谷俊人氏がトリプリスコア、市長選挙は神谷俊一氏がダブルスコアで勝利し、共に立憲民主党などが支持する候補者が自民党推薦候補に圧勝するという結果になりました。

4月には、前年12月の吉川衆議院議員(北海道2区)の辞職、同じく12月にコロナウイルスで羽田雄一郎参議院議員(長野選挙区)が死去、2月に河井案里(広島選挙区)の有罪が確定して当選取り消しとなり、衆参補欠・再選挙が行われます。菅総理の国政選挙初陣となりますが、いずれも野党の公認や推薦候補が勝利し、自民党は不戦敗を含めた3連敗となりました。

 

コロナウイルスにまともな対策が打てない菅内閣の支持率は低調の中、7月には東京オリンピックの開催などが争点となって東京都議会議員選挙が行われ、主要各党がいずれも思ったように議席を獲得できない引き分けに近い結果となりました。これに関しては過去にまとめたので詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

緊急事態宣言下で無観客の元行われたオリンピックが終わると、横浜市長選挙が行われ、大臣を辞任してまで出馬した小此木三郎氏を破り、野党各党が支援した山中竹春氏が当選しました。これについても過去にまとめたので、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

そうした中、菅内閣の支持率と自民党の支持率は菅政権発足以降最低を記録し、菅総理では選挙を戦えないと考えた自民党国会議員による菅おろしが始まりました。9月3日には菅総理は自民党総裁選に出馬せず、任期満了で退任することを表明し、新総理の元、任期満了後に衆院選が行われることが確実となりました。

9月29日に行われた自民党総裁選で岸田文雄氏が河野太郎、高市早苗、野田聖子の3氏を破って新総裁に就任します。10月4日に菅内閣が総辞職して、臨時国会が開会し、岸田文雄氏が第100代内閣総理大臣に就任します。岸田氏は10月14日に衆議院を解散し、19日公示、31日投開票で衆院選が行われることが表明しました。共に自民党議員の辞職によって発生した参議院静岡選挙区、山口選挙区の補欠選挙が7日に告示され、現在に至ります。

 

 

6.今後

14日に衆議院が解散されて国会が閉会、24日に参議院補欠選挙の投開票が行われ、31日に衆院選の投開票が行われます。既に衆院選モードになっており、野党は候補者の一本化を加速させています。11月1日の早朝には大勢が判明する予定です。衆院選後30日以内に特別国会が行われ、岸田内閣が総辞職し、衆院選で自民党が勝利すれば第二次岸田内閣、自民党が破れれば新政権が誕生します。