五月女真奈は、鷹野鍼灸院に勤めて、一年。
病院の小児がん病棟に九年以上前に
入院していた。
院長は鷹野夏彦
小澤という四十代の患者、年に一、二回
程度通っている。いつもは肩凝りとか腰痛
今回は喉に何か詰まっている感じ
耳鼻咽喉科では、異常なし
施術が終わって、『いただきもの』をもらった。
お笑いのチケットだった。
真奈にかつて患者として入院していた
小児がん病棟の看護師長の福留さんから
電話が掛かってきた。
入院している子供たちとその家族を対象に、
親子マッサージ教室に来てもらえないかとの
依頼され、なかなかの評判だった。
慶吾という子供がいる、滝田さんという
元芸人さんの息子さん
治療費は奥さんの実家からでている。
患者さんの小澤さんとコンビを組んでいた。
梅核気はストレスなどで、喉が詰まっている
感じになっている。
ピエロは正式には、クラウンと言うらしい。
クラウンが小児がん病棟に来ている。
「ホスピタル・クラウン」という専門の
人がいる。
なんとそのピエロは小澤さんだった。
一か月ずっと先輩クラウンについてあちこちの
病棟に行き、医療上の最低限の知識や
患者さんとの接し方などを厳しく叩き込まれた。
喧嘩別れした、相方の滝田に会いたいがために
クラウンの仕事を勉強した。
第二話 坂道に立つ女
急角度の坂を登り切った家への訪問診療
電話をかけてきたのは、船山諒子さんという
女性だった。三十代前半くらいの若い女性
患者さんはご主人で車椅子生活で、
交通事故による頚椎損傷で、完全麻痺で
治る見込みはない。諦めずに治療を
受け続けることで、2人は希望を
持ち続けることができるという。
鷹野に相談すると断ると言われた。
八つ当たりしている奥さんも診てあげたら
いいと言う。
お腹から胸に向かって動悸がせり上がって
来るような感じがあるが検査を受けても
異常なし。→『奔豚気』
血だらけで道路に横たわっている諒子さんが、
轢き逃げにあった。
犯人は、元不倫相手
死亡した。
ご主人の轢き逃げも、故意のものだった。
第三話 師、 去りし後
真奈の父重信が大腸がんで入院することに
なった。
鷹野の離婚した奥さんの父親で、恩師である
湊先生の十三回忌に一緒に行くことになった。
読経した上杉というご住職は、湊先生の
患者だった。
急性の腰痛で上杉が倒れた。
峰岸という派手な先輩が急性の症状を
取り除いた。
病院に行ったほうがいいと言った鷹野は
みんなの前で罵倒された。
しかし、上杉は亡くなった。大動脈解離だった。
湊先生も大腸がんで亡くなったので、
父親に、鷹野から教えてもらった「癌根」
という奇穴に艾でお灸を施した。
第四話 アイスマンの呼ぶ声
「父親は大きな病に冒されてしまった。
村のシャーマンは、病が癒えないことを
察知すると、それは魔物に魅入られて
いるからだと判断を下し、誰にも知られずに、
殺さなければ災いがあると、その役回りを
彼に与えた。
山に狩りへ向かおうと父が言い出した。
父の背中に狙いを定めたが、外した。
彼は心を無にし、何度も何度も父の頭に
石を打ち据え続けた。」という夢を見たと、
オーストラリア出身の同級生クロエが
真奈に話した。『悪夢』の治療をお願いされた。
親指の爪の付け根のところに艾を載せて
燃やしてくださいと言われた。
外国人の患者さんが来院してから、その夢を
見るようになった。
母校の講演会に参加し、マイトナー博士の講演で
「通称『アイスマン』と呼ばれる、この石器時代の
ミイラには、複数の刺青の痕が残されています。
これが鍼灸に於けるツボと位置が一致して
いるのではないかと指摘したのは、二〇一二年に
行われたこのミイラプロジェクトにも関わった、
医学博士のレオポルド・ドルファー氏でした」
と言った。
なんとその人物が、クロエさんの鍼灸院に
通っていたエッツィ氏であった。
後日、クロエの鍼灸院でマイトナー博士と
待ち合わせした。
「アイスマンの刺青って、足にあるものは、
もしかすると全部、『五輸穴』なんじゃないか」
と鷹野が言っていたと、マイトナー博士に話した。
イタリアの研究チームの最新の報告書で、
アイスマンの胃からヘリコバクター・ピロリ菌が
発見された。
鷹野が想像するには、アイスマンの患者像は、
腰痛や坐骨神経痛で体も悪く、もう働き手としては
役に立たなかった。そこに大病を患い、治癒は
したものの、家族の負担になっていた。
数日後、マイトナー博士が鷹野鍼灸院に
やってきた。鷹野が言った。
オーストリア出身のマイトナー氏はアイスマンの
子孫か何かじゃやないの。」
第五話 今なお君をたずねて
どことなく、みすぼらしい印象のある男が、
真奈が宿泊している旅館の部屋に遠慮なく
上がり込んできた。デリカシーのない対応に
不愉快な気分になる。
彼は以前、都内で鍼灸院を開業していた。
真奈は「相川クメ」さんのことを聞きたくて、
その男を呼んでいた。
クメさんは、認知症で迷子になっているところを
警察に保護された。身内の住所も連絡先も
わからなくて、ずっとボランティア鍼灸できた
施設が預かっている。
クメがこの特別養護施設に入所したのは、
飽くまでも身元がわかるまでの一時的な措置と
いうことだったが、それから七年、クメを迎えに
来る人はいない。
クメが、職員が目を離した時に転んで
救急車で運ばれた。X線で大腿部骨折が
判明した。らせん状の白い線が、写っていて
これが鍼だと思うと医者は言った。
『埋没鍼』という治療で、現在は施術していない。
真奈の患者の史恵さんの親戚にその治療を
受けてひどい目にあった人がいて、そこを
訪ねてみたがいまはマンションになっていた。
東京都世田谷区にある住宅地で、そこにある
古いラーメン屋を見つけて、そこで聞くと
長谷部さんという人が開業していたが、
患者さんから訴えられて、家を売ったらしい。
温泉地に長谷部という鍼灸師を探しに行った。
長谷部は旅館に勤めていたが、経営不振で
リストラにあっていた。クメさんのことを
聞いてみたい。なんとアイカワ・クメではなく
ハイカワ・クメだということがわかった。
『灰川粂』と書くのもわかった。
世田谷ですぐにわかった。
偶然クメさんのご主人が亡くなって初七日を
終えて、落ち着いたところだった。
今の若い人は知らないと思いますが、私が
沖縄から出て京都で浪人生活を送っている時に
歌声喫茶というお店があり、入り口でお粗末な
歌集を200円ぐらいで購入して入って、大声で
歌うという、ストレス解消には良かったように
思います。施設で、クメさんが口ずさんでいた
「カチューシャ」は特によく歌われていたように
記憶しています。この歌はご主人との思い出の
曲だった。
