ふくろをつくる( ゚Д゚) ”ひふのおでき” 粉瘤(ふんりゅう) | ひふみのへや ~narimasu-hifuka~皮膚科専門医の備忘録〜

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皮膚科専門医(皮膚診=ひふみ)です。日々の診療で患者さんたちから学んだこと、主に「肌」・「皮膚」(ときどき「推し」)をテーマに綴ります。溢れる情報に溺れそうな時代ゆえ、信頼性の高いサイトも紹介します。
必要に応じ加筆/訂正することがあります。

ひふの ”おでき” のなかで

けっこうよく見かけます

 

なぜか皮膚が気まぐれに

もぐりこんだかのような

おでき

 

それが

粉瘤

(ふんりゅう)

表皮嚢腫

ひょうひ⁻のうしゅ)

です

 

国際的に見ても

おできの意味から見ても

「表皮嚢腫」

のほうが優れている

と思うのですが

 

我が国特有の

「粉瘤」

という通り名に敬意を表し

話を進めていきます

 

「粉瘤」

皮膚の表面(表皮)が内側にもぐり

ちょうど袋のようになったもの

 

です

 

私たちのひふは

新しい細胞が生まれて1か月半前後かけて

最表面(外気に触れるところ)まで

上に上に進み

その細胞の最期は「垢」

といわれるものに相当します

 

「粉瘤」の袋の内側は

本来ならば

皮膚の最表面に相当するわけですが

では

逃げ場を失った「垢」

はどうなるのでしょうか

はてなマーク

 

袋の中に堆積されていきます

 

袋の厚みは極めて薄いので

なにかの拍子に袋が破けて

中味が皮膚の内外に

飛び出すこともあり

炎症を起こすことがあります

(かなり痛いらしい…)

 

今まで出会った粉瘤の中身について

少しだけご紹介すると

 

フレッシュものは

ラードみたいな

白くきれいな脂のよう

お願い

 

やや古いものは

灰色みを帯びてきて

酸化した見た目も香りも

酸化した脂やあぶらかすのよう

グラサン

熟成されたものの場合

灰色身はさらに強くなり

中味だけではなく

袋本体の一部も混在し

北方の遠い国の発酵系珍味

を彷彿とさせる香り

ガーン

を楽しませてくれます

 

粉瘤の興味深いところは

小さい粉瘤は何年たっても

ほとんど小さいままですが

大きい粉瘤は

ソフトボール大までになることも

あるところ

 

海外の教科書には

直径0.5~5㎝

日本の教科書には

直径1~2㎝

(ときに10㎝以上)

と書かれていました

ひょっとしたら

民族差があるのかもしれません

 

基本的に良性おできに含まれるので

小さいものであれば

そのままにしても問題ありませんが

 

きれいさっぱり粉瘤と

おさらばを希望される場合は

手術が最良です

 

ときどき自分で中身を定期的に

絞りだすという方もおられますが

おすすめしません

 

ごくごくまれに

袋が破けて大炎症を起こし

大破裂するとともに

袋ごとごっそり出てくる

こともあり

(「棚ぼたラッキー(?)粉瘤」と密かに命名)

この場合

手術の必要はなくなりますが

袋のあった場所がぽっかりと

クレーターのように空くので

傷がふさがるまでしばらくかかります