現代日本人は鉄不足、たんぱく不足と言われている。鉄不足、鉄分を運ぶタンパク質不足によるアトピーのような皮膚炎に悩まされている人は多い。人の体は食べているもので作られているけれど、その食べ物を作る土壌が壊されているから、まわりまわって人の体が壊れていっている。
「土壌ミネラルの減少が止まらない」
***
海洋汚染、大気汚染、水質汚染が叫ばれるなか、作物が育つ農地の土壌汚染や栄養不足も大きな問題となっています。
普通のスーパーで売っている野菜は、味も香りもしなくなりました。現在の農業のやり方に問題があり、土壌のミネラルが減少しているためです。これは日本だけの問題ではなく、世界中で農地の土壌ミネラルの減少が指摘されています。
ミネラル不足の土壌からは、ミネラル不足の野菜しか採れません。同じような色と形をした野菜であっても、昔ほど栄養は摂れなくなっています。実際に、野菜の栄養価は激減しています。1950年と2015年の比較で、ほうれん草の鉄分は100g中13mgから2mgと85%も減少しています。ニンジンや大根などその他の野菜でも、80%ほど減少しているとされています(文部科学省「日本食品成分表初版と2015年版」参照)。
ミネラルの測定方法が時代によって異なっていることから単純比較はできませんが、野菜をたくさん食べて栄養を摂ったつもりでも、日本人の多くが「かくれミネラル欠乏」であることは確かです。
現代人の栄養解析をすると、鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラル不足がない方は珍しいくらいだといわれています。当院の患者さんの傾向を見ても、うなずける結果です。私は潜在的な鉄不足によるうつ、パニック、不定愁訴に警鐘を鳴らしてきましたが、問題は鉄だけでなく、他の栄養素も不足しているのです。
アメリカの調査ではアメリカ人の45%がマグネシウム欠乏で、1914年以降のキャベツ、レタス、トマト、ほうれん草のカルシウム、マグネシウム、鉄分、亜鉛は著しく減少しているそうです。過去100年間に大量のミネラルや栄養素を失っていると報告されています。
土壌がミネラル不足になった原因は、現在の農業では堆肥を使わなくなり、農薬と化学肥料を使うことが当たり前になったからです。植物が土壌からミネラルを吸収するには、土壌菌の働きが不可欠です。しかし、多くの農薬を使うことで土壌微生物が減少してしまいました。土壌菌が減少すると、植物は土壌ミネラルを吸収しづらくなってしまいます。また、土壌菌の働きで土壌のミネラルは豊かになりますが、農薬のせいで土壌菌が働かないと、土壌が痩せてしまいます。
化学肥料の多用も大きな問題です。本来、土壌菌は多様なミネラルやビタミン類を生み出しますが、化学肥料は、窒素・リン・カリウムのみを大量にばら撒きます。
確かに、植物は化学肥料によって早く、大きく育ちます。農薬と化学肥料を組み合わせた農法は効率が良いため、世界中で普及しました。しかし採れるものは、大きい割に味のぼやけた栄養が少ない農作物。それを食べる人間も必然的に栄養不足に陥ります。
