現発事故から7年経過し、私たち人類がどの程度被爆しているのか?どんな影響がでているのか?少し遠くの課題になりつつある。
ただ、自然界は明らかに被爆の結果の変異が起きているようだ。
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被曝ニホンザルは警告する
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以下抜粋
2011年の東京電力福島第一原発事故の取材を進める中で、私は記者として事故原因の究明とともに、放射能の健康被害に向き合うことを余儀なくされた。人間への直接的な健康影響もさることながら、生態系への影響が懸念された。日本列島は長期にわたり、取り返しのつかない放射能汚染に晒されてしまったからである。
そんな時に出会った研究のひとつが、日本獣医生命科学大学羽山伸一教授のニホンザルに関する一連の論文だ。2017年に番組制作のために一度取材したが、今回改めて研究室を訪れた。
その羽山教授がサルの研究を始めたきっかけの一つが、「奇形ザルは訴える」だったことを知り、巡り合わせを感じた。
まずは結論を明らかにしよう。日本の野生生物の中で、分類学的に人間に最も近縁な霊長類であるニホンザルが、福島第一原発事故による放射線被ばくにより、血球の減少や胎仔の低体重および脳の発達遅滞に陥っているのである。日本は地球上の野生霊長類生息地の北限だ。チェルノブイリにサルはいない。その意味で、福島のニホンザルはヒトを除いた霊長類の初めての原発事故による被ばく動物なのである。

羽山らが注目したのはサルの血液である。チェルノブイリ原発事故後、土壌汚染の高い地域で、子供の血球数などが減少する事実が知られていたからだ。
 野生のサルの血液検査は1960年代から行われ、すでに200個体以上のデータが集積されていた。比較対象には福島第一原発から400キロ離れ、放射能汚染のない青森県下北半島のサルが選ばれた。下北は世界のサルの北限である。
羽山らは2012年4月から2013年3月までに、福島で捕獲されたサル61頭と下北のサル31頭の血液を比較した。(参考文献4)
赤血球数、白血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット(血液中に占める血球の容積)を比べたところ、いずれも福島のサルは下北のサルに比べて、有意に低いことが分かった。福島のサルの筋肉中セシウム濃度は1キログラム当たり78-1778ベクレル、下北のサルは検出限界以下だった。
また筋肉中のセシウム濃度と血球数の関係を調べたところ、4歳以下の子ザルの場合は負の相関、つまりセシウム濃度が高いほど白血球の減少が大きいことが確認された。
(中略)
■更なる衝撃、胎仔への影響
羽山らが血液の次に注目したのが、胎仔への影響だ。福島市で年間100頭程度捕獲されるサルのうち、身ごもっているメスの数は決して多くない。比較したのは2008年から2011年の事故前にお腹にいた胎仔31頭と、2011年の事故後から2016年までに捕獲された母ザルから取り出された胎仔31頭の二つのグループである。
結果は衝撃的だった。事故後の胎仔は成長が遅く、とくに脳の成長が遅れていたのである。(参考文献5)
論文は2017年6月に発表されたが、血液の時とは打って変わって、メディアではほとんど取り上げられなかったという。
「私にとっては胎仔の方が衝撃だったのですが、全くと言っていいほど反応がありませんでした。昨年夏、霊長類学会でも発表しましたが、記事にはなりませんでした。」 

「現在、福島県の各市町村では年間の積算被ばく線量の上限が20ミリシーベルトという途方もない基準を設けて、避難区域を解除しました。そんなところに、これから子供を産もうとする夫婦も帰還すべきだろうか?この論文でニホンザルが野生環境の中で先行して示している“母胎内での胎児成長の鈍化”という危険なシグナルに、人間は謙虚に学ぶべきでしょう。医学生理学的には帰還してあえて人体実験に加わる必要など全くないと思います。」(参考文献7)
 まるで何事もなかったかのように、帰還政策がすすめられている。前原子力規制委員会委員長の田中俊一が、飯館村に居を構えたことまでが美談として報じられている。「放射能の影響は大したことない」という「第二の安全神話」が作られようとしている。
  被ばくニホンザルはものを言わない。しかし血液や胎仔に現われた異変は、人間の健康影響の先行指標と言えるだろう。人間は自然から学ぶべきである。被ばくニホンザルの警告に、私たちは謙虚に向き合うべきだろう。