アカデミー賞を第1回から順番に観て感想を書くブログ -2ページ目

第6回アカデミー作品賞『カヴァルケード』

第6回アカデミー賞作品賞

(1932年8月1日~1933年12月31日までの公開作品が対象)


『カヴァルケード』

(1933年米/フランク・ロイド監督)


グラスゴー出身のフランク・ロイド監督が

1899年~1933年までのイギリス情勢を

とある名門資産家夫人の目を通して描いた大河ドラマ。


一応は、この名門マリヨット家の奥様ジェーンが

主人公ってことになるのだけど、別にこの人が何をやるわけでもナシ。

2人の息子をタイタニック号の沈没と

第一次世界大戦で亡くして寂しいな……みないな。


カヴァルケード


しかも何気に登場人物が多くて、召使の家族やその親類とか、

誰が誰だか途中で混乱してくる。


気になったのが時間軸。1900年に生まれた女の子ファニィが、

15年後にはもう完熟状態、お色気満点の人気ダンサーに成長して、

名門一家の次男坊と恋に落ちるのだが、彼女の年齢設定は正しいのだろうか。


もう一点。これは字幕も含めてだが、1899年の大晦日に、

「もうすぐ19世紀が始まる……」的なセリフが

ポンポンとび出てくるのだが、19世紀って1901年からじゃないの? 


序盤に出てくるボーア戦争や、第一次大戦の背景を

きちんと理解していないと、何がどうなったのか、

うまく把握できないはず。

そういう意味では予備知識ナシで0から観ても、

あまり面白味のない映画であります。


とにかく史実をギチギチに詰め込みすぎで消化不良。

子供達の死も記号でしか表現していないし……。

おかげで奥様の悲しみが伝わらない。

CAVALCADEとは直訳すれば騎馬行進とかパレードのこと。

日本初公開時の邦題は『大帝国行進曲』でありました。

全体的には反戦を気取ってはいるんだけど、

根底は英国万歳的な風情がぷんぷん香ってきます。


今回は初めてワンコインDVDをネットで購入してみたのですが、

さすがに超廉価版、特典映像や日本語吹き替えバージョン、

キャスト・スタッフ紹介が付いていないのはまだしも、

チャプター機能すらついていないのには驚かされました。


次は『或る夜の出来事』じゃ! 

まだ日本でいう昭和9年の作品です…

現場三昧

延々と現場に詰めていた『アキハバラ@DEEP』が、
13日の深夜にどうにかこうにかクランクアップ。
1日押しではありましたが、明けない夜はないのですね。


この日は午前中から『デスノ【後編】』の現場にもお邪魔。
ちょうど30人くらいのチビッコが見学に来ておりまして、
いつ泣き出したり騒ぎ出したりするのかハラハラ状態でしたが、
事前にお母さんお父さんからよほどキツク言われていたのか、
数時間立ちっぱなしだったのに大人しく観ていました。偉い。
ライトやLが通りすぎるたびに全員で凝視するのがカワユス。


さて。日活から東撮への移動するのにちと思案したんですが、
電車だとかなり不便ですね。バスを乗り継ぐのは時間が読めないし、
結局、京王線で新宿まで出て、山手線で池袋、池袋から
西武線ってな超大回りパターンを使ってしまいました。
ちょうど調布の真上に位置するのになあ。

第5回アカデミー作品賞『グランド・ホテル』

第5回アカデミー賞作品賞

(1931年8月1日~1932年7月31日までの公開作品が対象)


『グランド・ホテル』

(1932年米/エドムンド・グールディング監督)


グランドホテル形式ってな映画用語を小耳に挟んだことのある人も多いでしょう。様々な登場人物が同じ時間軸で様々な事件に遭遇し、やがてリンクしあい……ってな群像劇……で合っているのか不安だけんども、まあそんな感じの映画ですわ。最近の映画なら『THE有頂天ホテル』とか『大停電の夜』とかですかね。


でもって不勉強極まりないボキは、その手の映画を形容するのに便利な言葉を、本家の映画を観ることもなく時々自分の原稿にも使用したりしていたわけですな。てなわけで今回の鑑賞でようやく後ろめたい気分を払拭することができました。



グランドホテル


ベルリンの高級ホテルを舞台に、


・落ち目のロシア人バレリーナ、
・ホテルで盗みを働く自称男爵、
・事業が危機に瀕した太った実業家、
・その実業家の速記係の美女、
・病に冒され、残り少ない人生を謳歌しようとする初老の男…


といった曲者揃いの宿泊客が繰り広げる悲喜劇を多角的に描き出しております。出演しているのは、いずれ劣らぬ当時の大スターばかり。グレタ・ガルボを筆頭に、ジョン・バリモア、ジョーン・クロフォード、ウォーレス・ビアリー、ライオネル・バリモアという5人もの大スターが競演。当時ではさぞや画期的なことだったのでしょう。


さて。前記した登場人物5人が各々複雑な事情を抱えているだけに、5つのエピソードが細か~く描かれて、最後に一本の線でパキッとつながるのかなあと思いきや、案外すんなり5人が交流してしまい、素直に時間が流れております。これはやや拍子抜け。それでも見ごたえは充分なのですが、「グランドホテル形式」という言葉自体が一人歩きしている嫌いもある。誤用も多そう。気をつけよう。


伝説の大女優グレタ・ガルボ(当時26~27歳)のバレリーナという設定が記号でしかなく、舞台のシーンなどは一切オミット。それでも説得力が落ちないのは流石ですな。(原題:GRAND HOTEL)


次は『カヴァルケード』じゃ!

アキハバラ@DEEP

更新頻度オチまくりでスイマセン。


昨日『グランド・ホテル』観ました! 今日明日中にはレビューをUPしたい心づもりです。


ただ今9月公開予定の映画『アキハバラ@DEEP』の現場にお邪魔しています。


原作は石田衣良さん、主演は山田優ちゃん、成宮寛貴クン。なかなか面白くなりそう!


『デスノート』試写

ようやく『デスノート』 の試写に行ってきました。

公開まであと4日ですが。 内幸町ワーナー試写室超満員。
30分前に到着したけど、ぎりぎりで最前列だった。

さて、この先はネタバレに注意しつつも、
これから劇場で観ようと思っている方の
興を削ぐ記述もあるかもしれないのでご注意ください。















サクサク派の金子修介監督に頼んで
パツパツのスケジュールで作ったにしては、
なんとかなっていてよかった……
ホッとした……というのが鑑賞直後の素直な感想です。

ボキのように内情を知らずに楽しみに一般試写に
足を運んだファンの反応も、デスノコミュなどを
チェックするに、まずまずだった模様。

不安材料だった松ケンのエルは予想以上によかった。
むしろ藤原クンのライトが期待が大きい分、
超キレモノの天才児という風情をイマイチ出せずじまい。
現時点ではエルに押されっぱなしの印象がぬぐえない。
リュークのCGはまったく違和感なく驚き。素直に感心した。

人が死ぬシーンが中途半端だったのが残念。

グロテスクかコミカルか、どちらかに徹してくれたほうがよかった。

デスノートのわかりにくさを要約してくれているし、
BGMの付け方とかB級ホラーの味わいもあって、
これは海外で受けそうだなあ……と思いました。


後編にも期待!

シマロン

第4回アカデミー賞作品賞

(1930年8月1日~1931年7月31日までの公開作品が対象)


『シマロン』

(1931年米/ウェズリー・ラッグルズ監督)


アカデミーで初めて(といってもまだ4回目だが)西部劇が作品賞に選出。シマロンとはフランスの女性向けデニムブランド……ではなく、19世紀後半のオクラホマのとある開拓地を指している。スペイン語で「荒くれ男」の意味だと作中で説明がああった。さらに本作の主人公ヤンシー(リチャード・ディックス)は息子の名前にシマロンと名付けている。


シマロン


とにかく一つのところにじっとしていられないヤンシーが家族を連れてシマロンへ移住。新聞社を起こして権力を得たと思いきや、単独で姿を消してしまう。かわって新聞社を切り盛りしていた奥さん。「愛するダンナは死んじゃったのかしら…」とあきらめかけていたそのとき、ヤンシーカムバック。あーでもないこーでもないとかき回した後、またまた姿を消して……。


西部大開拓時代の破天荒な男の半生記、というより失踪日記ですが、なかなか面白かったです(いやね、もう、アカデミー作品になかなか面白いとかいう感想もいい加減にせいよって感じですが)。


現在でも数多く垂れ流されているハリウッド半生記モノスタイルがすでに完成しているところに感心感心。さすがだなあ。西部劇といってもドンパチにさほどの魅力はないのですが、主人公がインディアンや黒人への偏見が一切ない部分はベタですが好感が持てたし、ラストシーンはペーソスが効いてオツでした。


アメリカが急速に近代化していく様も見て取れて歴史モノとしても見所が多いです。1889年から始まって、本作公開時のリアルタイムである1930年までイッキに見せてくれます。


60年にアンソニー・マン監督、グレン・フォード主演でリメイクされていますが、当然のように筆者は未見。機会があったら見てみますわ。(原題:CIMARRON)


次はあの『グランド・ホテル』じゃ!(これは楽しみ)

お父さんのバックドロップ

スンマセン、『シマロン』見てますが、レビューしばしお待ちを。

とりあえずオススメDVDレビューでお茶をにごさせてくださいまし。


『お父さんのバックドロップ』


 人が死んだり、生き返ったり。泣かせよう泣かせようとする製作側と泣こう泣こうと必死になる観客。日本映画に客が戻り始めたといっても、こんな調子じゃお先真っ暗だ。
 だが、『お父さんのバックドロップ』のように、そうした立ち位置と真っ向勝負した素晴らしい映画も、ひっそりと世に送り出されている。

 時は1980年。弱小団体「新世界プロレス」は、金欠でほとんど解散寸前の状態。苦肉の話題づくりとして、エース格だった「お父さん」が超凶悪なヒールに転向する。そんな父親を息子はうんざりとした目で見つめていた……。


お父さんのバックドロップ


 原作は、急逝した中島らも氏が89年に発表した小学生向けの短編小説。らもさんの著作では特異なジャンルだが、非常に人気が高く、過去4度も映画化の話があったほどである。らもさん自身も、大切な3本のうちの1本と公言していた。

 父と子の絆を描いたシンプルな話ではあるが、心の触れあい、すれ違いを、ひたすら丁寧に描いているので、なにげない言葉や風景が心に響いてくる。
 涙腺の弱い人なら、息子のカズオが、ひざを抱えながら他界した母親のビデオに見入るシーンで、早くも落涙するだろう。天才子役・神木隆之介君の潤んだ瞳は凄まじい催涙効果だ。

 そしてクライマックス。男の生き様を息子に見せるため、無謀な勝負に出る宇梶剛士扮する下田牛之助の姿は、観る者すべての涙腺を鷲づかみにする。なにしろ原作者のらもさんですら、試写が終わったあとに立てなくなるくらい泣いてしまったほどである。

 衝撃なのは、そのらもさんが床屋のダンナとして登場するシーン。ほんの数分ではあるが、あきらかに空気が一変するのだ。今更ながら、その圧倒的な存在感に驚かされた。


奈良崎コロスケ【近況】
68年生まれ。著書に『ミミスマ~隣の会話に耳をすませば』(宝島社)。

起きてる時間がすべて仕事というのはいかがなものか。

バタフライ・エフェクト

GWオススメDVD2

『バタフライ・エフェクト』


リプレイ映画の最高傑作!


 バタフライ・エフェクトとは、「蝶が羽ばたいただけで地球の反対側で竜巻が起こる」という、いわゆるカオス理論のこと。小さなボタンの掛け違いでも未来に大きな影響を及ぼすことの例えだ。日本の諺でいえば「風が吹いたら桶屋が儲かる」って風情ですかね?


バタフライ・エフェクト


 てなわけで本作はタイトルどおり、期せずしてタイムトリップを繰り返すようになった大学生が過去に修正を施すたびに人生を劇的に変えてしまうというリプレイもの。この手の作品は枚挙にいとまがないが(日本映画の代表作は藤子F不二雄原作の『未来の想い出』)、整合性を保つのが難しく、ツッコミどころ満載の凡作が多かった。


 ところが本作はギリギリで物語の破綻を防いでいるうえに、息つく間もない超スピードで展開し、しかもラストはホロリとさせられるという奇跡的なエンターテイメントである。間違いなくリプレイものの最高傑作といっていいだろう。


 ただし序盤から全キャラクターの一言一句、一挙手一投足に伏線がぎっちり張られているので、相当な集中力が必要だ。時系列も高速で拡散していくので、ぼんやりしていると置いてきぼりをくらうこと必至である。複雑に入り組んだパラレルの大山小山を乗り越えた者だけが、パキッパキッとパズルがはまっていく強烈な快感を得ることができるのだ。


 初恋相手を助けようと幾度となくタイムトリップを試みるも、ことごとく悪影響が残ってしまうという数奇な運命に弄ばれるエヴァン役には、03年版「世界で最も美しい50人」に選出されたアシュトン・カッチャー27歳。デミ・ムーア(43歳)の若きツバメとして有名だったが、昨年ついに結婚。熟女に夢を与える美青年として人気が出そうだ。


 ヒロインのケイリーには『ラットレース』のエイミー・スマート。エヴァンが過去を修正するたびに頭の天辺から足の爪先まで完璧に別人になるのが楽しい。来年30歳とは思えぬ見事なコスプレギャルっぷりに眼福眼福。


##アシュトン・キャッチャーは前作の『ジャスト・マリッジ』に続いて週間動員全米1位を獲得。日本ではまだまだマイナーな若手俳優だが覚えておきたい有望株だ。

第3回アカデミー作品賞『西部戦線異状なし』

第3回アカデミー作品賞


『西部戦線異状なし』

(1930・アメリカ)ルイス・マイルストン監督


4/30の日曜日に鑑賞しました。この日が新宿ツタヤへの返却日だったのです。ここまで観てきたアカデミー賞作品の中では(といっても3本ですが)一番ひきつけられた作品です。1930年製作。日本の元号でいえば昭和5年ですな。


『つばさ』も反戦的な後味はありますが、やはり戦意高揚映画の感は否めない。『つばさ』が『パールハーバー』ならば『西部戦線異状なし』は『プライベートライアン』てな趣です(いくらなんでも『パールハーバー』ってのは『つばさ』失礼か)。


西部戦線


第一次世界大戦を若きドイツ兵の目を通して描いた完全なる反戦映画。とにかく戦闘シーンは壮絶の一言。ラストの印象的なシーンも余韻を残します。これは製作から76年も経った今観ても充分鑑賞に堪えうるどころか、ブツ切りの構成、BGM一切ナシでここまで見せてしまう監督の力量に感服しました。ちなみにルイス・マイルストンは監督賞も受賞。


ボクは淀長さん解説版のDVDを借りたのですが、いきなりネタバレ的トークが始まったのであわてて本編へ飛びました。しかしながら観終わってから淀長さんの解説を聞くと、なぜこのタイトルがついたのかも納得できるし、男嫌いのクレタ・ガルボが主演のリュー・エアーズを褒めていたという小ネタなども出てきてなかなか味わい深かったです。


次は第4回アカデミー作品賞『シマロン』。




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本当はもっと作品についての解説を書きたいのですが、

ひとまずここでペンを置かせてください。

明日は滋賀への日帰り出張なのです……。

随時肉付けしていきますので、今夜はこれにてご容赦を!


それにしても月3本って……このペースだと年末までに

第27回『波止場』(1954)までしかいかないよ。

イヌゴエ


GW進行で死んでます。『西部戦線……』も

レンタルしているのですが、いっこうに観るヒマがなく、

延滞してまた借りてを繰り返しています。なにやってだか。

更新しないのもアレなので、別冊ブブカで書いた

オススメDVDレビューを1ヵ月遅れでアップします。ご参考までに!


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『イヌゴエ』

遠藤憲一の天才声優ぶりに酔いしれる


 犬がしゃべる映画だから『イヌゴエ』。「動物が人間の言葉を話す映画なんて散々見てるよ~」と鑑賞以前に食傷気味発言が漏れ聴こえてきそうな気もするが、この映画の主役たるフレンチブルドッグが話す言葉は関西弁、しかも渋みがかったオッサンの声なのだ。


 声を担当したのは怪優街道鋭意驀進中のエンケンこと遠藤憲一。東京生まれの東京育ちなのに流れるような河内弁を操り、「交尾したいのぉ、ごっつ交尾したい」などとお下劣セリフをバンバンつぶやいてくれる。これがブスカワ犬の代表格であるフレンチブルの愛嬌顔にドンピシャでマッチング。しょっぱなのセリフ「寒い…寒いな」でつかまれたら最後、あとは延々と細かく笑わされ続けること請け合いだ。


イヌゴエ


 本作が凡百の動物トークモノと一線を隔すのは、犬がしゃべるようになったといっても人間とスムーズに会話ができるわけではない、という点。あくまで「欲求のままに行動する動物の独り言が聞こえてくる」という程度に抑えたのが作品の妙になっているのだ。

 犬の声が突如聴こえるようになった臭気判定士の芹澤直喜役に『リアリズムの宿』の山本浩司。芹澤は必要以上に鼻が利くため、体臭のキツいペットを飼うなんて考えもしなかったのに、父親に押し付けられるカタチで同居することになったフレンチブルドッグのペスと奇妙な友情を育てていくことになる。

 直喜の彼女・道場はるか役に馬渕英里何、同僚の力石創役に村上淳、直喜が一目惚れをする美少女・音無ちぬ役に宮下ともみ……主な登場人物は以上の4人。日本映画界の屋台骨を支える実力派が揃っているとはいえ、ハッキリ言って地味なキャステイングだが、ハリウッドのようなベタベタなCGアプローチをせずとも名演を連発するペス役のブン太が、堂々たる主役を張っているので無問題だ。

 最後はお約束のお別れシーンが待っているが、これが大いに笑い泣きできる名仕上がり。サプライズもあるのでお楽しみに。