ピーピーピー…

 

 

僕は目を覚ますと見知らぬ部屋にいた

 

 

僕「ここどこだろう…」

 

 

僕は身体を起こし、テーブルの上にあるメガネをかけようとした

 

だけど

 

なんだか違和感を感じた

 

今までは指に麻痺があるため

 

眼鏡をかけるのも手元がおぼつかないし

 

身体を起こすのにも

 

ベッドのリモコンを使わないと出来なかった

 

なのに

 

まるで健常者の時のような身のこなしだった

 

 

僕「あれっ…なんだこれ…」

 

 

コンコン…

 

見知らぬ人「起きましたか?」

 

僕「???」

 

見知らぬ人「覚えてませんか?」

 

 

そう言われて僕は目を凝らしてよく見た

 

 

僕「あっ…」

 

 

よく見ると当初担当してくれていた医者だった

 

 

僕「先生…なんでここにいるんですか…」

 

先生「ここは病院だよ」

 

僕「なんで病院に…」

 

先生「身体はどうだい?」

 

 

先生にそう言われて

 

自分の身体を隅々まで触った

 

 

僕「感覚がある…」

 

僕「ってことは…」

 

 

僕は恐る恐る片足をゆっくり地面につけた

 

 

僕「立てる…!!!」

 

僕「えっ、なんで…」

 

先生「実はある人に頼まれて嘘をついていたんだよ」

 

先生「ごめんね」

 

僕「ある人?…え、何がどういう…嘘???」

 

先生「君はね、手術で一時的に身体の神経を切っていただけなんだ」

 

 

僕は頭の中がごちゃごちゃで何が何だかわからなかった

 

深呼吸をした

 

 

僕「どういうことですか?」

 

先生「実はね、君のお姉さんに頼まれたんだ」

 

 

回想

 

 

姉「先生!お願いがあります!」

 

先生「なんですか?」

 

姉「弟が生きていたのは本当に嬉しいんです…」

 

姉「でもきっと…このまま生きていてもきっと弟は碌な人間になりません」

 

姉「だから…」

 

 

 

先生から姉とのやりとりの詳細を詳しく聞いた

 

 

どうやら姉は

 

間違いを犯した弟をなんの罰も与えずにこのままにしておくのが心配だった

 

だから

 

先生に手術をお願いした

 

そういうことだった…

 

 

僕「そうだったんですね」

 

先生「君はこれまでに障害者の身体を身に染みて経験し、たくさんの苦難があっただろう」

 

先生「でも、これは全て君を想うお姉さんの愛だったんだよ」

 

僕「…。」

 

 

僕はこれまでの苦悩を思い出し涙が溢れていた

 

それと同時に

 

姉からの愛…当たり前の日常が戻ってきた喜び

 

色々な感情が交差した

 

 

そして僕はそっと眠りについた

 

 

 

先生の”嘘”から始まったこの物語は

 

 

”本当に大切なものとは何か”

 

”当たり前の日常が当たり前じゃなくなる辛さ”

 

そして

 

”生きていることが何よりも幸せか”

 

 

僕にたくさんの”気づき”を与えてくれた素敵なプレゼントだった

 

 

 

 

はじまり