何も予定がないので暇を持て余しているこの連休も6日目。
アドベンチャーラインに乗って奥多摩湖にでも行ってみようかなと考えながらも、天気予報の傘マークで気力が萎えてしまう。
なにより深酒と夜更かしで、のんびり寝てしまっているのでアドベンチャーラインに乗って出かけるには遅い時間になってしまう。
そんな生活も癒されるので好きではあるけれど、せっかくなので今日はシネマネコさん、14:30上映回を鑑賞しに行った。
作品のせいか年輩の方が多かったけれど、とりあえずいつものB-5の座席につけた。

九十歳。何がめでたい

朝、ベッドで目覚めた愛子はノロノロと起き上がり、ちょっと落とした物を拾うのにも難儀する始末。
ポストの新聞を取りに出ても人と目を合わさないようにそそくさと家に籠り、ホットミルクを飲みながら居間で新聞を読む。
夫との関係に悩む人生相談のコラムを読みながら、自分だったらズバリと“あなたが嫌い”と言ってしまえばいいのにと思うが、それでは回答者として失格だと自覚している。
そんな愛子がテレビの音量を大きくして見ていると、2階に住む娘の響子がおりてきて音量を下げた。
「聞こえないのよ、若い子の声が。早口だし」
そんな愛子に気分転換に出かけるように勧める響子に「この歳になるとね、友だちもみんな“お先に”とも言わずにあの世に逝っちゃってるのよ」と返す愛子。
仕方なく美容院へ行った愛子だったが、その帰路、走り回る人々を眺めながら「ピョンピョンうさぎがノロノロ亀さんになったていうのに、誰も気づいてくれない」と呟いていた。
そんな愛子はベンチに座って「90歳。何がめでたい」と吐き捨てるのだった。

その頃、出版社では吉川が部下の女性の原稿に及第点だと言って「やればできるじゃないか」と褒めていた。
しかし人事部に呼び出され、その女性から転属願いが出ていることを知る。
理由は吉川のパワハラ。
吉川がその部下を焼肉屋で励ました行為も、それに当たるという。
「焼肉屋で0時まで説教したのは立派なパワハラです」
「業務以外の内容に異性を付き合わせるのはセクハラに当たります」
と、吉川の行動が全てハラスメントになると指摘され、すでに調査結果として“大声で怒鳴られた”などのパワハラが認定されていた。
「処遇が決まるまでリモート勤務としてください」
そう言われた吉川が自宅に戻ると、そこには誰もいなかった。
そしてテーブルの上に置かれていたのは、妻からの離婚届だった。
そんな吉川は後輩が編集長を務める部署に配属され、何も発言せずおとなしくしておくように言われた。
その部署の若手水野が、佐藤愛子のもとへ出かけていった。

水野を居間に迎えた愛子は、水野が持ってきた土産についての話をひと通り聞くが、水野からのエッセイ執筆の依頼は断った。
「2年前に小説を書き終えて、空っぽなの」
その報告を企画会議の隅の席で聞きながら、佐藤愛子のプロフィールを読んでいた吉川は、その経歴と人柄に興味を惹かれていた。
『戦いすんで日が暮れて』で直木賞、『幸福の絵』で女流文学賞、『血脈』で菊池寛賞。一方で、夫の借金を返済したというエピソードなど。
「断筆宣言されているし、本人が了承しないとね」
編集長と水野が別の作家をあたろうと言い出した時、大声で吉川が制した。
そして吉川が愛子の自宅を訪れた。
愛子の意見が今の時代に求められていると力説した吉川だったが「私のなにを読んでそう思いになったの?」と問われ、口ごもってしまう。
「書けない、書かない、書きたくない!」
それからも日参する吉川は、愛子の著作を読みあさった。
日々違った土産を持っていくが、愛子の返事は変わることがない。
「頑固な婆さんだなぁ」吉川がそう思えば「頑固なおっさんだなぁ」と愛子も思っていた。
そして何度目かの訪問。
「今日が最後です」
吉川が意を決して執筆を依頼したが、やはり愛子の答えはNOだった。
たっぷり時間をかけて、落胆のため息をもらしながら、ゆっくりと玄関を出て行く吉川。しかし愛子の孫桃子が外を見ると、門のところで膝から崩れて落胆する吉川の姿があった。
「おばあちゃんのせいであの人自殺しちゃうかも」
そんな吉川のもとへ響子が駆け寄っていき、原稿用紙を一枚手渡した。
そこに記されていたのはエッセイのタイトル案【90歳。何がめでたい。】だった。

しかしいざ書き始めると、愛子は全く筆が進まなかった。
書くことがないのだ。
そのことを吉川に伝えると、吉川はなんでもいいと言う。

そんなある日、保育園の新設が“子どもの声がうるさい”という理由で反対運動にあっているという新聞記事を見つけた愛子は、そのことについて書き始めた。
“こんなことを言う国は衰退宣言をしている”
愛子は戦争体験者だ。空襲警報の際、声をひそめて過ごした。その時の静寂の恐ろしさを知っているのだ。
“騒音は平和の証。町は様々な音が入り混じっていて、うるさいくらいでいいのだ”
“子どもの無垢な声は未来だ”と綴った。

その原稿を読んだ吉川は「やっぱり作家さんだったんですね!良かったです!」と愛子に電話したが、その感想に「薄っぺらな感想」と悪態をつく愛子だった。
そうは言いながらも、愛子はそれまで鬱屈としていた表情は活き活きとしてきていた。

一方で吉川は、離婚届を置いて出て行った妻とはネット電話でも顔さえ見せてもらえない状態だった。
そして後輩の水野には、コラムのロゴデザインを見せてもたいした反応をしてもらえなかった。

愛子は孫の桃子とレストランへ向かうためタクシーに乗っていたが、そこで運転手とスマホについての話で盛り上がっていた。
「スマホと携帯って何が違うの?若い子がずっと見てるあれはスマホ?携帯?」
スマホを持たない愛子は、そんなものに頼るようになったら日本中がアホになると熱弁した。
話に夢中になった愛子は、運転手が目的地に着いたことを告げても話をやめようとしなかった。

それらは原稿になっていった。
特集記事のために家族写真を見せて貰った吉川は、孫が20歳になるまで続いた、孫とのコスプレ姿の年賀状などに興味を惹かれていた。
「来年は一緒に撮る?」
愛子が誘うが、ふと自分のコスプレ姿を思い浮かべた吉川は断った。
「つまらない男ね」

出版社では水野がネットメディアの会社に転職してしまっていた。
吉川は有給休暇を申請するように言われるが、意に介さなかったが、そこで家族旅行でも、と言われた言葉で自分の現状に思い至り、真っ白になっていた。
「はっきりしろ!」
愛子の声で我にかえると、桃子の誕生日パーティとして庭で行うBBQに参加するかどうかを訊かれていた吉川。

喜んで参加するが、愛子からは相変わらず憎まれ口を叩かれていた。

やがて連載だった愛子のエッセイが書籍として出版されることになった。

初版部数は1万5千部。
吉川が差し出した本を突き返す愛子。
「売れてたまるか!」

「返さないでください、ご自分の本を」

しかし【90歳。何がめでたい。】は売れた。
5万部を超えるヒット作となり、街ゆく人々は皆読んでいた。
ベストセラーとなり取材が殺到する愛子の自宅。
取材陣に軽妙に切り返す愛子の言葉はさらに人気となっていった。
一方、そのヒットを生んだ編集担当としてネット記事にも載っていた吉川は、なんとか娘の美優とレストランで会うことができた。
しかし美優は離婚が進まない両親にイラついていた。父親に会いたくないと言ったのは美優本人だったのだ。
「お父さんはうちにいても誰のことも見たことがなかった。お母さんはね、お父さんの実家の片づけを何年もかけて一人でやったんだよ。お母さんが、一人でこっそり泣く姿を私は何度も見たの。もうお母さんを自由にさせてあげて」
去っていく娘に、何も言えない吉川。

それでも吉川は元気を振り絞って愛子の家を訪ねた。

そこにいたのは水野。水野はネットメディアでのエッセイ執筆依頼にきていたのだ。
それを引き受けたという愛子を止めようとする吉川。
「作家は編集者のものじゃないんだよ。器の小さい男だね」
その言葉で吉川は我慢ができなくなってしまう。
「器の小さい男ですよ!時代遅れのカス扱いされて、妻や娘や犬にも逃げられたような男ですよ!!」
出て行く吉川に、慌てる響子と桃子だったが「放っておきな」と愛子に一喝されてしまう。

それからの愛子は少し気力が落ちてしまっていた。
テレビのリモコンが効かなくなっても、FAXが紙詰まりを起こしても。
何かあれば担当に連絡すればなんとかしてくれる。それはわかっていても吉川に頼るのを嫌がって電話をしない愛子。
自分ではどうしようでもできず、業者を呼んで無駄に金を払わされる。

そして倒れ込んでしまう。
そんなこともあり、吉川の携帯がつながらないからと編集部に電話をした愛子は体調不良で吉川が休んでいることを知った。

そして愛子は検査のために病院へ行くが、朝、桃を半分食べてしまったことを理由に検査を断られてしまうのだった。

その頃、吉川は病院で十二指腸潰瘍の薬を貰っていた。
そして吉川は房総の墓を参り、実家の様子を見に行き、自分が家族を見てきていなかったことを思い知るのだった。
そして海辺から愛子に連絡をする吉川。
「これから田舎の土産を持ってお邪魔してもいいですか?」
その電話の向こうで倒れる音がして、不通になってしまい、慌てて愛子の自宅へ向かう吉川。
吉川が着くと、居間で響子が泣いていて、ソファに寝かされた愛子の顔には白い布がかけられ、その横で桃子が泣いていた。
「先生・・・」
愛子に駆け寄る吉川の目の前で起き上がる愛子。
愛子のいたずらだった。

ダンスコンテストの日。会場に入った吉川は、緊張していた。
それは美優の出場するコンテストだ。
吉川の隣の席にそっと座ってくる愛子。
「僕はいいじいさんになれますかね」
「いいじいさんなんてつまんないわよ。面白いじいさんになりなさい」
そして美優の演技が始まり、涙を流す吉川は、思わず立ち上がって拍手をしていた。
その会場で、妻に離婚届を渡す吉川。
落ち込んでいたが美優から“見に来てくれてありがと”というメッセージの着信で気を良くした吉川は、愛子に昼飯を奢ると言い出すほどだった。
その吉川のスマホに連絡が入った。それは愛子の受章の報せだった。

旭日小綬章受章の記者会見。
相変わらず軽妙な返しの愛子の言葉に、取材陣からも笑いが起こっていた。
しかし最後の質問に答えはじめた時、それは変わっていた。
「最後の小説を書き終えてから、何もしないでいたら鬱病になりかけてたの。そこへ編集の人が来てね。これがとにかくしつこい奴で。でも書き始めてみたら、なんだか活力が沸いてきてね。私には書くということが必要だったの」
それは吉川への感謝の言葉でもあった。
「100歳。何がめでたい!」

2023年100歳を迎えた佐藤愛子を、90歳の草笛光子が演じた。
【草笛光子生誕90周年記念作品】と銘打たれている作品だ。
実話をベースにしながら、コミカルでテンポ良く進む展開で、泣かせの部分と笑いの部分が非常に明確で観やすい作品だ。
老いるということを軽妙に表現しながら、そこからでも活力を与えてくれる出会いがあるという希望が描かれていて、全体を通じてとにかく明るい気持ちにさせてくれる。
印象的なシーンは、ダンスコンテスト会場での愛子と吉川のシーン。
いや、北海道の別荘で拾ってきた犬の話かな。東京に連れてこられたけれど、仕事に没頭する愛子にあまり見てもらえないハチが、ずっと窓から愛子の仕事姿を見つめているのは一番印象的なシーンかもしれない。

エンドロールでは佐藤愛子本人の幼少期からの写真が出てくる。
遠藤周作が“マドンナ的存在だった”と評している通り、綺麗な方で、100歳を迎えた近影でもその雰囲気は残っているように感じられた。
作品の中では草笛光子が、序盤の老いぼれた雰囲気を中盤から一気に活力溢れる雰囲気に演じ分けていて“何かできること”があるかないかで、生活や表情が一変するのが手に取るようにわかる。
断筆宣言後、世間にも人にも興味を失っていた老いぼれていた愛子が、再び筆を取ることで、世の中に対する怒りなどを感じられたと語るラストシーン。
言いたいことを言えない、言いにくい窮屈な世の中になればなるほど、こうゆう人の言葉は響いてくるのだろう。
言葉は暴力にもなりうるけれど、ほとんどの言葉はそうではない。
思っていることを正直に口にしただけで叩かれるような世の中はどこか歪んでいる。
劇中、文明の進化について語られる言葉が印象深い。
“これ以上便利な世の中になるより、人の精神が進化すべきだ”
そんな佐藤愛子は、100歳の現在も、最新刊が出版されている。
今日は少し早めにシネマネコさんに行って、併設カフェで昼食を摂った。
明太子クリームパスタとホットドッグとシネマネコソーダ。
相変わらず美味しい。
ふと気づいたのだけれど、昔、苦手だった炭酸を最近は飲めるようになってきた。
先日はコーラでさえ、自販機で買って飲んだくらいだ。
ただ、そんなことで驚くのは別れた妻くらいだろう(笑)

昨日は特に目的もなく、ただただ気分転換のつもりで約2年ぶりにイオンモール日の出に行ってみた。
久しぶりに電車に乗った気がする(笑)
武蔵引田駅なんていう辺鄙な場所で、近くには東京サマーランドがある場所。

特に目的なくショッピングモールをぶらつくのも怪しいだけなので、青梅ではあまり食べられそうにないステーキでも食べようとレストラン街で【モンスターグリル】に入ってみた。
まぁ、それなりの味ではあったけれど、とりあえずお腹は膨らませられたので、改めてぶらついているうちに、思わず洋服を買ってしまった。
ショッピングモール、恐るべし・・・。

で、本屋も覗いてみたら、電車の広告で見かけて以来、気になっていた本をようやく見つけられて、本当に久しぶりに本を買ってしまった。
ショッピングモール、恐るべし・・・(笑)
これからの楽しみは10日後に迫った恒例の男子会くらいのものか。
今回は第一回目以来となる、女子の参加があるので、楽しみなものになる(笑)

ただテーマがイタリアンで、坂の上レストランに行こうとしていたのだけれど、日程が決まるまでに時間がかかりすぎた影響で予約が取れなくなってしまい、昨夜は大慌てになった(笑)
なんとか代案が決まったので良かったけれど。
残りの休日をどう過ごそうかな。
明日は100%の雨予報。
やっぱり日本酒を煽りながら『タッチ』観て過ごすだけなんだろうな。