【長文注意】ITmedia News「クリプトン・フューチャー・メディアに聞く」完結を受けて | naos (TGAStudio/MOTION-R) のTGA Staff Room

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制作プロジェクト「TGAStudio(Team Get Away)」代表&Rock Band「MOTION-R」リーダーnaosが、きままにTGA内外のことを書くブログです。


テーマ:
連載最終回。JASRAC問題に触れた岡田記者に答える伊藤社長。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0802/26/news029.html
(過去3回は上記リンクから辿れます)

※記事では「初音ミク」という言葉が連発されていますが、ここでは
リンとレン、そして過去発売されたVOCALOID商品も含める意味で、
「VOCALOID」に言葉を置き換えて表現します。
また、この連載についての感想は、JASRAC問題についての記述まで
は控えておりましたが、記述が終わり、連載も終わったということ
なので、JASRAC問題を中心に感想を書きます。

また、この記事はPCで300行を超えるかなりの長文です。
できればPCでご覧下さい。


*****

3回目の記事で、
「2次創作の同人文化も知らなかったし、本当に驚いた」
と語った伊藤社長だが、それはタテマエと思う。
マーケティングの段階で、VOCALOID作品が、同人、ニコニコ動画、
Youtube等々に二次利用されることは、同社の当初の予想の範囲内と
考えるべきで、VOCALOID作品がネットに増えることが、ソフトの
知名度を上げる宣伝に繋がることも承知だった筈。

しかし、ミクの声を聴いた瞬間「これは使用範囲がヲタ方向のみに
限定されてしまうかも」と危惧した私の想像以上に、VOCALOID
作品はネットに溢れた。
空耳等、予想外の面白がり方も続発。
元祖オープンソースミュージックである「ちんこ音頭」らの時代とは
違い、今は発表の場にニコニコ動画やYoutubeがある。噂の広がり方
は圧倒的に早かった。

そして、楽器に目覚めた思春期の少年少女が辿る同じ道…コピーから
創作へとあっという間に広がり、VOCALOIDの声の特徴を意識した
オリジナル作品が登場する。

そして、いわゆる「みっくみく問題」…VOCALOID作品の商業化問題
が発生した。


記事からの引用。

「初音ミク曲がJASRAC管理楽曲になっている」——そんな小さな発見
が昨年末、ネット上で大騒動を引き起こした。みんなで盛り上げてきた
ミク曲が、みんなのものじゃなくなる。ファンたちは焦った。

 JASRACに楽曲を信託すれば、使用料を支払って許諾を受けない限り、
2次利用ができなくなる。ネット上で自由に利用しあうことで盛り上がっ
たミク曲の創作のサイクルが、その時点で止まる。」



この問題は、ニコニコ動画を運営する「ドワンゴ」グループが模索してい
た「ニコニコ動画で利益を出す」という動きや、同グループが持つ着うた
サイト等とのシナジー効果狙い他の思惑が背景にあったのだろう。

実際同グループは、ニコニコ動画で爆発的な人気となった、同人サークル
イオシスの二次創作楽曲「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」の
着うた化(2007年春)等がヒットしたことにヒントを得たのか、
同グループ内に音楽出版社を設立。
「ニコニコ動画で面白がられた曲を、CDや着うた等で発売して、利益を
生み出す」というのが、この時点で赤字であるニコニコ動画の赤字脱出、
黒字化を目指す同グループの狙いだったのでは。

まずは制作コスト等を考慮して、同グループが提供するラジオ番組に出演
していた声優に、番組テーマ曲と、ニコニコ動画向けの盆踊り風楽曲を唄
わせてテスト。この楽曲は勿論、同グループの音楽出版社により管理され
ている。
この試みは必ずしも成功とは言えなかったが、直後のVOCALOIDブーム
が、同グループに絶好のチャンスを与えることになる。

ニコニコ動画で人気だった「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」
に目を付けた同グループが、作者に連絡を取り商業化に踏み込む。
「魔理沙…」はもともと同人ゲームBGMの二次使用曲であり、所詮は
他者のコンテンツ。今度は楽曲がニコニコ動画にUPLOADされており、
当然、同グループの管理が可能。


ところが、「彼等(ドワンゴ)としてはビジネスとして当然の流れ」
だったJASRAC信託が、ニコニコ動画ユーザの大反発を受けること
になる。


*****

もともと、ネット発の音楽は、JASRAC非信託で、利益を出さない、
制約を産まないことで広がった。
「ちんこ音頭」しかり。「ムネオハウス」楽曲群しかり。
作者もほとんど匿名。媒体はmp3だけ。だから二次創作という
遊びが広がった。今や人気作編曲家となったmanzoさんも、
「ちんこ音頭」を未だに愛し続け、どっかの人気ロックユニット
風(笑)の洒落た編曲で、ライブで歌い続けている。

manzoさんといえば萬Z名義「日本ブレイク工業社歌」でもお馴染み
だが、彼は同曲をJASRAC信託する代わりに、二次創作を可能な限り
全部受け止めて、それを「ブレイク祭り」の名の下に、各作品を
「プロの手による遊びの精神」で進化させ、CD+DVDで発売。
人気作品だった、逆再生バージョン、ユーロビートバージョン等の
二次創作作品が、プロの手が少し入ることで大きく化けるという
付加価値で、ファンの支持を受けた。
プロが二次創作の価値を認めて商品化したという好事例だろう。

私が作詞した「フルスロットル」も、非信託で、流通ルートの利益
と、CDの制作やプロモーション等々、発売元の経費利益等々を
差し引いた金額が、バイクレーサー「関口太郎選手」のレース活動
資金に提供されるという仕組をつくり、
manzoさんの歌唱(萬Z名義)でリリースされた。
私を含めた作者全員が、「関口太郎に捧ぐ」として、一切の金銭的
な利益を享受しなかったこと、そして「管理楽曲」という、発売元
が、JASRACではなく発売元自身で楽曲の著作権を管理する手段を
行使し、二次使用を認めたことで、
「フルスロットル」はネット住民の理解を受けた。
(余談ではあるが、この管理楽曲制度は私もこのとき初めて知った。
今では笑い話だが、CD発売=JASRAC信託と当然のように考えて
いた私は、当時「もし信託されたらボコボコに叩かれるなぁ…」と
真剣に悩んで、発売元と2ヶ月以上の時間を費やして話し合って
いた。)

勿論、今のニコニコ動画のユーザの大半は、そういった過去の
ネット音楽群を知らない。2chも含めてだが、こういう、
「面白がってくれる層」は2年程度の周期で逐次入れ替わって
いる印象がある。
ちょうど、世の中の「ブーム」と呼ばれるものが、長く持っても
1~2年で消費される構造と同じだろうか。
それは上記楽曲群のニコニコ動画に於けるビュー数を見れば
一目瞭然。
「フルスロットル」関連の動画で一番古いmanzoライブでさえ、
ビュー数は3000程度。VOCALOID作品の、ほんのちょっと
面白い画像よりも低いのだ。

*****

さて。話をこの記事の話に戻そう。

ニコニコ動画で利益を生みたいドワンゴグループの焦りと、
ネット住民の根強いJASRAC嫌悪が産んだこの騒動は、
いろいろな問題を浮き彫りにした。

音楽業界のビジネスモデルにどうしても疎い作者(以下「職人」
と呼ぶ)。(これは仕方ない。私とて昔は疎かったのだから。)

「魔理沙…」に限らず、ネットで流行る音楽の成功の鍵が
「非信託、制約なし」にあることを理解せず、既存の音楽業界の
ビジネスモデルで安易に処理しようとしたドワンゴグループ。

非信託、すなわち上記の「管理楽曲」という手段があったにも
関わらず、ユーザを忘れた同グループへの非難の声は当然であった。
(ただし、その非難の声が職人にも向けられたのは、同じ音楽職人
として、彼の気持ちを察すると、とても残念だった。彼は、恐らく
音楽業界のビジネスモデルを「知らないうち」に、ドワンゴ側の
レールに巧みに乗せられてしまっただけのように思えてならない。)


記事にもこうある。

「JASRACや、JASRACと契約した音楽出版社を否定するわけではない。
信託すれば楽曲の管理や使用料の徴収が効率化するし、作者にも印税が
入るなど、メリットも少なくない。
だがJASRACに信託すると、2次利用の連鎖が生み出した創作のサイクル
が止まる。

(中略)

「JASRACはありがとうを届けない」——伊藤社長は言う。
JASRACを含む音楽著作権の仕組みは、対価を稼ぐためのプロ作品が
前提で、ユーザーがアーティストに届けられるのはお金だけ。
支払った著作権料は、JASRAC、音楽出版社、事務所とたくさんの
“中間搾取”を経てやっとアーティストに渡る。

(中略)

この複雑な音楽著作権ビジネスの仕組みは、マス向けCD販売を前提に
した楽曲には、必要だったかもしれない。しかし1人でPC 1台で作った
曲——バーチャルインストゥルメントで作曲し、「初音ミク」で歌い、
ネットのファンたちが自発的にプロモーションした個人製作の楽曲を
ここに載せようとすると、矛盾が吹き上がる。

 「JASRACは『音楽を作ることができる人は、特別な才能を持った
ごく少数』という前提に立っている」と伊藤社長は話す。

(中略)

この矛盾の背景に、CGM(Consumer Generated Media)時代の到来
という大きな変化があると伊藤社長はみている。
「著作権の仕組みは、CGMを前提にしていない。急にそういうのが来た
からみんな、泡を食ってる」」


*****

JASRAC非信託他の理由がいろいろあり、「フルスロットル」が、旬の
うちにカラオケ化できなかったのも事実であるし、JASRACがネットと
協調するというような、お互いが「win-win」の関係になるような
考え方を現状持ちあわせていないのは確かと思う。
しかし、かといってJASRACを完全否定してしまうのも…。

でも、「急にそういうのが来たからみんな泡食ってる」というのは違う。

2002年。
「ちんこ音頭」「ムネオハウス」で、音楽業界は気がつくべきだった。
あのとき、FM京都さんなどのごく一部を除いて、業界は「所詮は素人
がやっていること」と無視をした。
実際私はとある現場で「あんなのは素人の遊びだろ?」と言われた。
仕方がないのでその人物にはムネオハウスの「yabaiyo」を聴かせた。
彼の表情の変化にニヤニヤした。
「素人の遊びじゃないでしょ?・・・変わりますよ、音楽業界は」

実際は音楽業界が「泡喰ってる」のではない。
「知らないヤツが泡喰ってる」のだ。
実際、アニメや声優さんの楽曲の作編曲家さんがひとりで行う制作
作業は、ムネオハウスの制作作業の手法と今や同じ。
機材やソフトも進化して、ひとりで、ヴォーカル以外の全部の音が、
以前のようなMIDIレベルでなく、リアルで作成可能。
中には、manzoさんのようにヴォーカルやコーラスすらこなして、
まさに「ALL IN ONE」で直接マスタリングに持って行けるような
天才すらいる。

そして職人は今、VOCALOIDで遂にヴォーカルまで手に入れた。
まだオールマイティとは言えないが、「うた」が「職人ひとり」で
つくることができる。

「ちんこ音頭」は作曲者のヘタウマヴォーカルから始まった。
「ムネオハウス」は基本インスト曲で、そこにボイスサンプリング。
「フルスロットル」も最初は名無しヴォ-カリストの協力で始まった。

ネット音楽の時代なんて、とうの昔に来ていた。

ただ、VOCALOIDブームで、それが表面化した。
業界的に、認めざるをえなくなってきただけではないだろうか。

*****

今、クリプトンさんが始めた「ピアプロ」は、騒動で傷ついたり不安に
なった職人にとって、居心地のいい場所であって欲しいと願う。

記事より。

「「ピアプロ」は、「Peer Production」の略。2次利用可能な楽曲や
イラストの投稿サイトだ。個人の「見たい」「見てほしい」、
「聞きたい」「聞いてほしい」、「認めたい」「認められたい」という
願望をつなぎ、コミュニケーションをかきたてて創作意欲を刺激し、
新しい創作が次々に生まれる場を目指した。」



職人同志のコラボ。
かつては2chが担っていた役割が、こうやって時代の変化と共に変わる
ことはとてもいいことだと思う。
問題は、「プロを目指したい職人」「ビジネス化したい楽曲」の受け皿。
正直、「ネットで人気が出た作品をどうビジネス化するか」は大きな
課題として残っている。
勿論JASRACが変化すれば言うことはないが、そう簡単ではない。

記事にもこうある。

「ただ難しいのは、全ユーザーのコンセンサスを得た上でビジネスに
できるかどうか。創作物を商品化すると「ユーザーが盛り上げてきた物
でもうける気か」と快く思わない人が必ず出てくる。「みくみく」作者
が「もうけに走った」と批判されてしまったように。

「マネタイズしようとすると起きるあつれきは、CGMを阻害する要因
だろう。チューニングには気を遣う」」



ネット音楽の商用化のアイデア。

そのアイデアとしては「非信託、二次使用OK、低価格」が前提。
ここは「フルスロットル」と同じ。
今はamazon.co.jpやタワーレコードさんなどの流通業者さんが、
レーベルと直取引をしてくれる。
もちろん、流通コストは定価に対して一般的に3~5割程かかるので、
最低でも1500円以上のCD価格にはなる。

また、iTunes Storeさんにたまにインディーズアーティストの楽曲が
リストアップされている。manzoさんの「日本ブレイク工業社歌」
も実は取扱いが始まっているのをご存知だろうか。
こういうルートも見逃せない。

ちなみにイオシスさんがamazon.co.jpのルートで販売を始めたが、
もともと同人サークルさんで低価格設定だったがゆえに、今は書籍
扱いとなっている。これも、流通コストを上乗せすれば、CD扱い
されるように思う。
(但し値上げになってしまうのは残念ではあるが)


さて、販売ルートはそれで確保できたとして。
ユーザにはこう呼びかける。

「買い支えることが職人の支えになる」と。
「買い支える貴方が、職人のスポンサーです」。

『職人のスポンサー』


考えてみたら、「フルスロットル」は音楽販売の側面を持ちながら、
実は「関口太郎選手をスポンサードする」、すなわち「関口太郎を
買い支える」動きだった。
その動きは、瞬間とはいえ、amazon.co.jpのインディーズチャート
1位
という結果をもたらした。

気に入った職人には、買い支えることでスポンサードする。
モータースポーツのパーソナル(レーサー本人)スポンサーと同じ。
「買う」「消費する」んじゃなくて、「参加してもらう」。
マシンや革ツナギに名前は載らなくても、その曲のCDを買ったという
事実が、スポンサー活動になる。

クリプトンさんの言う「ありがとうを届ける」という考え方は、
スポンサー活動を通じて「ガンバレを届けた」、「フルスロットル」の
考え方に凄く近いと感じる。

CDを買い、聴き、良いと思い、ブログの記事にし、そこに記事があれば
コメントもする。
ニコニコ動画の画像も綺麗に演出する。
果てはコンサートに行き、客席も光で綺麗に演出してみせる。

(実はこの辺は、桃井はるこさんのファン(彼等はモモイストと呼ばれる)
が熱心に実践している。昨日、「Chuo Line」の公式動画で、綺麗に演出
された、オレンジの「ヽ(´ー`)人(´ー`)ノ」の顔文字(歌詞に相応しい
カップルの仲の良さを示している)が、とても微笑ましかった。)


そんな消費者の意識転換。
これをうまく打ち出せないだろうか。


よく2chやニコニコ動画の常套句で、

「***はワシが育てた」(AAつき)

というのがある。そういう「ワシが育てた」意識を、ユーザに持って
貰う仕組み…勿論前提として低価格でないと意味がないが、それが
可能になれば、自然と「金儲けしやがって」という声は変わると思う。


最後に、伊藤社長のこの言葉で、本稿を締めくくりたい。
私も、この理想のお手伝いを、ネットの片隅で、このブログを通して、
してゆけたらと思う。
良心的で素敵な職人がたくさん、小規模でいいからブレイクする。
それが、日本の音楽産業を、もっと豊かにすると、私は思っている。


「「誰もが創作活動を通じて自己表現でき、正当に認められる世の中が
理想と思う。そのためのサービス提供、製品開発を続けていきたい」」



【3/2追記】
ムネオハウスについての問い合わせコメを複数頂きました。
若ことWORKER HEAD君が動画職人として健在とのこと。
懐かしい名前です。
ここで彼を特定する記述は避けますが、情報有り難うございました。

あと、なんかmuneohouse.netが閉鎖されてしまってるようですね。
ということで、転載自由のムネオハウス。
yabaiyo2バージョン、私の方で提供しますのでお聴き下さい。

 ●オリジナルバージョン(from 10th album)
 ●RADIO EDIT(naos作 / from 22nd album)

簡単に説明しますと、この曲は2002年4月に、突如2chテクノ板の
ムネオハウススレに投下された楽曲で、制作者は未だ不明です。
但し、当時の機材やソフトの能力等を考慮すると、恐らくはプロ、
またはそれに準じたスキルと機材をお持ちの方の作品ではないかと
ずっと言われてきています。
私はその後この曲を編集して、ネットラジオ等々で使いやすいよう
なイントロ短縮バージョンのRadio Editを制作した…という訳です。

この曲登場以前も、高いスキルを持った方々が楽曲を投下していま
したが、その中でもこの曲は群を抜いた完成度でした。
当時スレにいた方は勿論、後追いで楽曲を聴かれた方も、これが、
単なる「素人の遊び」の域を大幅に逸脱した、
「史上初のネット音楽ムーブメント」であったことを、
ご理解頂けると思います。
そしてこの「yabaiyo」は、まさに「ムネオハウス史上最高の楽曲」
と呼ぶに相応しい楽曲です。

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