繭/青山七恵 | なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

なおぱんだです。
北の国から、読んだ本、買った本、大好きな曲、そして日々思うことなどをポツリポツリと書いてます。

 

 

同じ店で働く美容師として知り合った夫婦は、結婚して1年が過ぎて二人の生活を満喫していたが、夫は心を病んで仕事が続けられなくなり、今では仕事を探しながら家事を担当して毎日を過ごしていた。妻はそんな夫を気遣いながら、独立して自分の美容室を持って生活を支えていたが、突然雇っていた女の子の独立話が持ち上がったことで後継者探しに頭を悩ませていた。周囲からは何の問題も認められない二人だったが、妻は優しい夫に対して時折り暴力的になる自分を抑えきれず、それを受け入れる夫に対して怒りの衝動が収まらないことに恐れを抱いていた。ある日、夫に対する暴力に歯止めが利かなくなった妻は、発作的に自宅を飛び出してごみ袋を道路に散乱させているところを、たまたま通りかかった女性から声をかけられる。彼女は同じマンションに住んでいたが、ある秘密を隠して妻に接近していき、二人の生活に踏み込んでいく。その女性の存在に不審を覚えながらも距離を保った関係を続けていくうちに、夫婦二人の間に芽生える狂気がすべての人間を狂わせていく。

 

初めて読んだ作家の作品ですが、結構な長編作品でありながらこれといった感慨がわきませんでした。面白いかと聞かれれば面白くないこともないとしか言いようのない、つかみどころのなさしか感じませんでした。夫に対する暴力的な衝動が抑えられない妻が抱える恐怖感は伝わってきますが、中華鍋で殴りつけて失神させるまでの暴力はただのやり過ぎで、殺意を持ちえない殺人未遂だとしか思えず、そこまで妻が追い詰められる理由が見いだせないので全然共感できません。妻の前に現れる女性の存在も、夫に関する秘密を握っていることを匂わせながら、なんともいえない不安定感のまま結末を迎えるので、最後までどこか落ち着かない雰囲気が拭えず気持ちをかき回し続けます。大まかに二部構成となっていて、前半は妻が語り手となり、後半は接近してきた女性が語り手となって、それぞれの立場からの視点で事件となる輪郭を描いていきますが、後半の導入部分だけちょっと夢中になって読み進めたものの、すぐに失速して惰性で読み終わった感じです。決して面白くないというわけではなく、読む人や読み方によって受け取り方が変わってくるんだろうなという、そんな作品でした。