**転載です***
このお話は、フィクションです。
ですが、日々センターではこういった事や、想いが留まることなく流れているんだと思うと、
「捨てないで!」「簡単にペットを飼わないで」と思ってしまいます。
「不要なのは、ペットの命では無く、殺処分なんだ…」
またか…。
倉田は、大きなため息を付いた。
倉田が動物収容センターに勤め始めて、既に3年がたとうとしていた。
センターにペットを持ち込む人間との会話は、何回経験しようと理解することが難しい。
「家族で海水浴に行くから、もう育てられないから」と、飼い猫を持ち込み殺処分を依頼する母親。
足元では子供が愛猫と別れかれたくないと泣いている。
それでも母親は「海に行きたくないの?また飼えば良いでしょ。海に着いたらアイスクリーム買ってあげるから」と泣きじゃくる子供に言い放っていた。
「猫は家族では無いのですか?殺さなくてもペットシッター等頼めば、飼育可能なのではないですか?」
倉田が説得を試みるが、母親は「この子の情操教育にもなったし。また機会が有ったら、今度はセンターから貰うわ」と平然と言ってのけた。
倉田は、内心穏やかでは無かったが、引取りを拒否する事は出来ず、泣く泣く引き取るしか無かった。
「いいえ、もうペットは飼わない方が良いと思います」とアドバイスするのがやっとだった。
「仔猫の時に可愛そうで拾ったけど、住んでいるアパートがペット禁止で、近所から捨てろって言われて…私も歳だし…許してね」と飼い猫を持ち込む高齢の女性。センターの中に連れて行かれる愛猫向かって手を合わせていた。
「今更だけど、もともとペット不可のアパートに住んでいるなら飼ってはダメでしょう?此処まで一緒に過ごして、殺してしまうのは可愛そうですよ。拾った時点で里親募集をすれば良かったのに。もう動物は飼わない方が良いですから」
と、言うと、老婆は、「拾ったの。拾ったから育てて居たんだけど、近所の人が捨てろって」と言うばかりだった。
ある日には、軽トラックで3匹の仔犬が運ばれて来た。
「いつもすまないね~。また産まれちゃって」と、今まで何回も仔犬を持ち込む男性
「いい加減にしてください。母犬の不妊手術をしてくださいよ。こんなに愛くるしい仔犬を、あなたは何回殺処分にしているのですか?」
「だって、産まれたんだから仕方ないだろう!お前何様のつもりだっ?自分の犬をどうしようと俺の勝手だろう?そんならお前が飼えば良いだろう!」
倉田は悔しさで言葉も出ない。
「お前にやるよ」と言い捨て、男性はさっさと帰ってしまった。
倉田の手元には、大きなダンボールの中で無邪気にじゃれている3匹の仔犬と、これが命の値段なのか?と毎回その価値に悩む引き取り手数料が残った。
倉田の同僚の美弥子が近づいてきた。
美弥子は箱を受け取りながら、頬を膨らませて怒っている。
「またあの人ね。今まで何匹の仔犬の命を奪ったら気づいてくれるのかしら?」
「まったくだよ…。こんなに愛らしい仔犬を、どうして殺すことが出来るのか…何度言っても不妊手術をしてくれないし…困った人だよな…」
センターの職員は、毎回苦しく辛い思いをしながら、もくもくと仕事をこなすしか無かった。
どんなに、里親募集をしても、全頭を救うことは出来ない。
それでも、倉田は、このセンターから動物を引き出し、新しい飼い主を探すボランティアをしている団体の代表に連絡を入れた。
「もしもし…溝田さん?毎回すまないのだけど…また仔犬が持ち込まれて…。凄く可愛い子なんだけど、里親募集出来るかな?」
倉田の暗い声に、状況を察した団体の代表溝口は
「また、あの人の仔犬でしょう?まったく、酷いわよね!実はうちもいっぱいなんだけど、何とかするわ!じゃ、後で行きますね」
勤めて明るく返事を返してくれた。
倉田は「ありがとう」と言うのが精一杯だった。
午後になって、その仔犬達は無事ボランティア団体に引き取られて行った。
倉田は1日の仕事を終えて、帰宅の準備をするときに、
「今日は、救えた。でも、明日は分からない。毎日同じような事が続く…動物収容センターが不要になる世の中が出来れば良いのに」と、暗い気分になる。
だが、「気が重くなっても何も解決しない!」と気持をリセットし、今や日課となった「動物達が普通に生きられる世の中になりますように」と空に向かって手を合わせ、センターの門を出た。
翌日、倉田が出社すると、同僚の美弥子が、中くらいのケージに入れられた猫の前で暗い顔で思案にくれていた。
「ねえ、倉田さん。この猫なんだけど、お腹に赤ちゃんが居るの。もう数日で産まれそうなんだけど…持ち込みなの…」
「えっ?」
倉田は声を詰まらせた。