スパイ・ゾルゲ
『オットーと呼ばれる日本人』@新国立劇場
太平洋戦争前、日本の国家機密を旧ソ連に流したスパイ事件をモデルにした作品。
君、蜂の子を食ったことがあるかい。
あれほどうまいものはない。
生きたまま口にいれるんだよ。
だけど君、刺されやしないかね。
さされる前に、プッと噛むのさ。
そのスリルがたまらない。
食うか食われるか。
木下順二さんごめんなさい。
疎覚えのままやり取りを載せました。
1930年前後上海における、オットーと林の会話。
その後時がたってオットーはこうも言う。
たとえどんなことがあろうとも、
これだけはほしいとおもうものを捨てることだね。
その極限を誠実に真摯にかみ締めて楽しんでいるかのように。
さらに最後にこう言う。
私はオットーという外国の名を持った、
しかし正真正銘の日本人であった。
そして、そのようなものとして行動してきた私は
決して間違っていなかった、と。
蜂の子のくだりがたまらない。
それが、この時代を生きた男の証のようで。
地球儀を思わせるセット。
床面にゆがんだ罫線。
その上を日本語、英語、ドイツ語が飛び交う。
光の交錯、言葉の交錯、音の交錯。
意義深い作品。
戯曲、かってこよ。いや、歴史をやりなおそ。