宮菜穂子オフィシャルブログ「菜時記」Powered by Ameba -1854ページ目

スパイ・ゾルゲ

『オットーと呼ばれる日本人』@新国立劇場

太平洋戦争前、日本の国家機密を旧ソ連に流したスパイ事件をモデルにした作品。


君、蜂の子を食ったことがあるかい。

あれほどうまいものはない。

生きたまま口にいれるんだよ。


だけど君、刺されやしないかね。


さされる前に、プッと噛むのさ。

そのスリルがたまらない。

食うか食われるか。



木下順二さんごめんなさい。

疎覚えのままやり取りを載せました。

1930年前後上海における、オットーと林の会話。


その後時がたってオットーはこうも言う。

たとえどんなことがあろうとも、

これだけはほしいとおもうものを捨てることだね。


その極限を誠実に真摯にかみ締めて楽しんでいるかのように。

さらに最後にこう言う。

私はオットーという外国の名を持った、

しかし正真正銘の日本人であった。

そして、そのようなものとして行動してきた私は

決して間違っていなかった、と。


蜂の子のくだりがたまらない。

それが、この時代を生きた男の証のようで。


地球儀を思わせるセット。

床面にゆがんだ罫線。

その上を日本語、英語、ドイツ語が飛び交う。

光の交錯、言葉の交錯、音の交錯。

意義深い作品。


戯曲、かってこよ。いや、歴史をやりなおそ。