第6番ガヴォットの「謎の音」

 

10日後に本番を控えて、いまだに悩んでいる音がある。第1ガヴォットの7小節目(最初のアウフタクトの小節はゼロ小節と数えて)

 

 

Miの前に何か間違いなく書いてある。私にはどうしても♯にしか見えない。しかしその次のMiは♯では都合が悪い。ナチュラルがついていなければならない。

ちょっと洒落た音がする。ちょっと聴き様によっては、少しデカダンなブロードウエイミュージカル調の響きにも聞こえる。しかし和声の理屈的には何の問題もない音だ。いわゆる減7度の和音で他の音で埋めるとSol♯とSiが入る。

 

ところがこの謎の記号をどのエディションも全て完全に無視しているのである。

 

最新のベーレンライターはいろんなヴァージョンを併記する手段をとっているがそれでもAMBの書いた音は二つともMiと書いている。

 

ヘンレも同じ。どこをどうみてもこの謎のシャープらしきものは見当たらない。

 

これが何か注釈があって、このシャープらしきモノはハエの死骸の足だとか、後世の誰かのイタズラだとか書いてあるならわかるのだけど、どのエディションも一言も何も書かない。

 

10年前くらいからこのMiシャープを私は弾いているけれど、だんだん心配になってきた。

 

どなたか教えてください。

 

追記:よく調べて見たらベーレンライターのCritical reportにこんなのがこっそりと書いてあった。

 

 

もう一つはこちら

 

 

第2ガヴォットの16小節目。なぜか、本当になぜかみんなこの音をRéではなくSiと弾く。ほとんど例外なくそうだ。

こちらも多くの版がSiと書いていて、これといった注釈もない。ベーレンライターはこの通りAMBの書いた音をほかのソースと並列して出している。さもAMBが間違えて書いたのを直してあげたみたいな態度だ。

 

しかしこの4回続けて愚直に出てくるRéはそんなにおかしな音か。そんなことはない。その反対だと思う。この部分はミュゼットという踊りの音楽でバッグパイプの音楽を真似している素朴な音楽だ。この音をSiにするとちょっと気が利いた、ハイセンスな都会風な少しパリっぽい音になる感じはわかるが、反対にミュゼットの素朴さが失われる。

 

こちらは、私がRéを弾く世界で最後のチェリストになってもを弾きます。ちなみにこの四つのRéのどれかにちょっとしたモルデントを入れるともっとバッグパイプ風になる。