恵比寿にベヴィトリーチェというレストランがある。

恵比寿はひょんなところにちいさくて素敵なお店がある場所なのだが
ベヴィトリーチェもまさにそんな恵比寿の特徴的なレストラン、という風体である。

ベヴィトリーチェはイタリア料理の店だ。
とてもよい仕事をする。

振りかぶって150kmのストレートを投げてます。
という料理。
でもそのストレートを投げるために
どれほどのあいだ走りこみをしたんだろう。
という料理。

そうしてもちろんストレートというひとつの球種のなかにも
さらに奥行きと深みと技巧があるということ。

素材がとてもていねいに扱われていることに
まず驚いた。

この料理をつくるひとの手が見たい、と私は思う。
どんなふうに繊細に、あるいは豪胆に
素材を手にするのだろう。

そうしてひとさらひとさらには
最後のひとふりとでもいうべき
ほどこし、がされていて、
そのひとふり、が料理の余韻を響かせる。

やっぱり繊細だ。
豪胆なようでいてとても繊細なイタリア料理。

ういきょうのリゾットをスモークサーモンで包んだアミューズも
れんず豆のスープも
春野菜の網焼きも
料理として完結していながら次への料理への期待をふくらませる力を持つ。

白タンポポの葉とホタルイカのソースのリングイネ。
ボルチーニが効いている生ウニとコンソメゼリーの冷製カッペリーニ。

もうセコンドを食べるころには
目がまわりそうだ。

私がいっとう気に入ったのは
ソースである。
春野菜に具された、バーニャカウダソース。
そのきりりとした味わい。

そういえば子どものころに
よく草を食べた。
というと語弊があるが
その辺りに生えている草を
どういう味なんだろうとかあるいはそこまで考えずに
ぱくりと口にしたものだ。

子どものころに食べた野生のものは季節を象徴する味だ。
白タンポポを食べたら
その子どものころの春の土手の記憶がよみがえってきて
懐かしいような気持ちになった。

ベヴィトリーチェに話を戻そう。
このレストラン、店の入り口には活花があって
それは丹精して活けられていることがひとめでわかるものだった。
こういうところの手を抜かない店が、私は好きだ。
古材だろうか、アクセントにあしらわれている梁もみごたえがある。
地下のワインセラーは、ちょっとどきどきするくらいのもの。
私はワインを飲めないのだが、ワインを好きな方にはたまらないのだろう。

久しぶりに好きな店に出会えた。
そんな気持ちになる店である。
ご紹介してくださった方に感謝したい。


#イタリアンレストランベヴィトリーチェ(恵比寿)