定時制高校3年生の秋、卒業後の進路をどうするか、担任教師と進路指導教師の面接を受けた。

長兄と長姉は中卒後に就職し、次兄は建築大工になるために職業訓練校に通い建築大工に。次姉は三交代の仕事をしながら定時制高校、都内の会社に勤めながら二部の4年制大学に進学。私はお金がかからない県立の看護学校を見つた。毎月3万円の奨学金は卒業後に県内の医療機関3年間就業すれば返済免除。学生寮は自宅から通学できない学生なら誰でも入れる。水道光熱費名目の寮費、食費と教科書代、日用品を何とか工面すれば学生でいられる。

試験科目は、英語、国語、数Ⅰ、理科は選択1科目(生物で受験)、社会も選択1科目(政治経済で受験)。

進路指導教師に進学理由を「お金がかからないから」と。「うーん、人と接する仕事より検査技師など別の職業のほうが向いているような気がするけど、、、」と言葉を濁された。40年近くも看護の仕事をしてきた身だが、この教師が見抜いていた私の傾向が、今ならとても良く分かる。

あわてんぼうで怒りんぼで、そそっかしくって、何かに夢中になると周りが見えなくなる。好き嫌いが激しく、納得できるまで自分の主張を曲げない。 もう、発達障害特性満載だもの。

定時制高校を卒業しただけの19歳で社会人になる自信がなく、どこでもいいのでお金がかからない学校でもう少し勉強をしたいという気持ちだけ。看護学校の教務にしたら、迷惑千万なんだが。

是が非でも看護師になりたいわけでなく、1校受けて不合格になったら、またその時は考え直すつもりだった。毎月の給料は手取りで3万円弱。たいした貯金もない、親兄弟に頼りたくない。受験料や受験のための交通費もなく、市内で徒歩20分くらいで行ける1校に絞った。

入試は1月の中旬。朝からボタ雪がガンガン降り、試験開始の9時前にすでに20㎝ほど積もっていた。試験はさほど難しくなく、終わるころに雪が止んで、学校の玄関前が雪融けで水浸し。面接で正直に、看護師になりたいわけではないと答えるのはまずいので、大人に気に入られそうな理由を話したはずだが、なんと言ったか覚えていない。20歳前の娘は結構したたかなんだって、自分のことを思い出して苦笑してしまう。

2週間後に合格発表。この日も大雪。雪が降りしきる中を、傘をさし長靴を履いて合格発表を見に行った。募集定員は100名で、自分の受験番号もあった。とりあえず、やれやれ。あと3年間か4年間は、最終進路を決めるまでの猶予が与えられたと安堵した。

試験当日と合格発表の日の、ボタ雪は何を暗示していたのだろう。

アスファルトに降り落ちるとすぐ融けてしまうボタ雪。

雪でも嵐でも、とにかく受かれば儲けもの、程度だったのだと思う。