評判の映画「ドライブ・マイ・カー」を観てきた。

 

 アカデミー賞4部門にノミネートされて初めてこの映画のことを知ったぐらい,いわゆる映画通ではない。

 でもまあ,映画も,小説と同じく好きなものとそうでないものがある。その点では「好きな」映画だったかもしれない。

 基準がだいたい不純で,小説や映画に登場する女性が魅力的かどうかなのである。

 

 その基準でいうと,残念ながら途中で亡くなってしまう霧島れいかさんは,SEXの最中でないと脚本のストーリーが浮かんで来ないという困った性格。当然夫以外の男性ともしてしまうのだが,美魔女であるのですわ。

 

 それから,意外と言っては失礼なのだが,聴覚障害を持つユナさん役を演じていたパク・ユリムさんがとても清楚で可愛かったです。

 

 映画の内容そのものではないが,作品の大きな要素といえばサーブ900 turbo 16Sだろう。スエーデン製のこのカッコいいクルマだからこそ,この映画が成り立ったといえる。

 

 1974年から94年まで生産された(情報元に信頼性がないが)初代900シリーズの中でも,最高の160psを誇り,航空機メーカーの設計を生かした空力特性とスタイルで,一時期はすごく人気があった(お金がなかったボクでも安いモデルを検討したくらいだ)。

 

 真っ赤なサーブを大事に乗り続けている西島秀俊扮する家福と,演劇祭で専属ドライバーとして雇われ,黙々と丁寧な運転を続ける三浦透子扮するみさきが,そのサーブを通じて,互いに目を背けてきた過去をさらけ出し,しっかりと正しく向き合うことの大切さに気づく。

 

 果たしてその判断は正しいのだろうか。

 

 この映画に共感する多くの大人は,自分の人生を振り返って,同じような葛藤があったはずである。例えば夫婦なんて,お互い秘密を持ちつつ,そしてそれを知りつつ,あえて暴露したり非難せずに見て見ぬふりをしていることもあるのではないだろうか。まさに映画の家福のように。

 

 以前見たクローサーという映画では,美しいストリッパー(ナタリーポートマン)を取り合う二人の男のうち,結局最後に彼女を射止めたのが,冷静沈着にことを進めたというか,感情を剥き出しに自分に正直に生きた破滅型の男(しかも若くてかっこいい方)ではない方の医者だったのだ。

 ボクにとって,この映画こそ,人生を特に女性との関係をうまくやっていくテキストのような,強く影響を受けた映画だった。

 

 だからこそ,この映画の最後に家福が言った「ボクは正しく傷つくべきだった」というセリフは,ちょっと危険な気がする。皆が皆そんなに逞しくないんだよ。

 

 それにしても,ほとんど喜怒哀楽を感じないまま3時間もスクリーンに惹きつけられるって,やっぱりすごい映画なんだ!