『エージェント6』
第1作 『チャイルド44』
はミステリ小説風、第2作 『グラーグ57』
はアクション・冒険小説風だった。
で、この第3作目はスパイ・謀略小説風味か? いや、ちょっと違う?
ともかく、この作家は同一主人公による3つの異なるジャンルの小説を描いたようだ。
3作に共通していたのは、
物語の舞台が共産主義ソビエトによる恐怖政治が布かれた時代情勢下であったこと、
体制側の人間である主人公レオ・デミトフがイデオロギーに反した行動を強いられる中で、どのように生き延びることができるのか?というのがメイン・プロットであったこと、
そんなメインプロットを展開しながら、おそらく著者は、主人公の家族に対する感情を主題としていたのかな?ということ。。。
だが、3作の風味は随分違う。(と思う)
エンターテイメント小説としては3作とも見事なオチをつけて完結させながらも、シリーズを通してみるとどうにもスッキリとした読後感が味わえなかったのは、主題の重さを突きつけられたからなのだろう。ほんと、ズッシリとした作品だ。
本作、前2作とも傑作であることに間違いはなく、非常に読み応えのあるシリーズだが、再読するには重過ぎる。
蛇足:
今回、トム・ロブ・スミスのデミトフ3部作を読み終わって思い出したのが、90年代にフィリップ・カーという作家が 『偽りの街』、『砕かれた夜』、『ベルリン・レクイエム』という、同一主人公を登場させながらも異なるテイストの3連作を描いていたことだ。確か第二次世界大戦を挟んだ物語だった・・・。第1作の『偽りの街』はハードボイルドの傑作だった・・・はず・・・。