『深海のYrr 』 | 本だけ読んで暮らせたら
2009年02月19日(木)

『深海のYrr 』

テーマ:ファンタジー・SFとか
DER SCHWARM (2004)
『深海のYrr』  フランク・シェッツィング/著、 北川和代/訳、 ハヤカワ文庫NV(2008)

地球各地の海で起こる数々の異常現象。

新種の海中生物の発見。北アメリカの西岸で引き起こされたクジラによる船舶への襲撃事件。北ヨーロッパ大地が北海に沈みこむ大陸棚斜面に賦存するメタンハイドレートの熔解と気化。


これらの異常現象に最初に気付いたのは海洋生物学者や地球科学者達だった。彼らは、その原因を明らかにしようと奔走する・・・。

ノルウェー工科大学教授で、海洋生物学者のシグル・ヨハンソンは、ゴカイなどの海洋生物の異常発生や異常行動にもっとも早く気付いた科学者の一人であった。そして、クジラが意図的に船舶を襲撃した現場に居合わせたのが、合衆国の海生哺乳動物などの専門家であるレオン・アナワクであった。

物語はこの2人の科学者を中心に動き出す。


海洋における異常事態はやがて世界中に拡大して行く・・・。

北海のメタンハイドレートの熔解による大陸斜面の崩壊で北ヨーロッパは海に沈む。海岸から上陸した無数のカニや水揚げされたロブスターが持ち込んだ毒性物質によってヨーロッパやアメリカ海岸部の都市は壊滅状態となって行く・・・。


一方・・・、人類を導くと自負するアメリカ合衆国は、これらの厄災への対応を開始する。

地球規模の未曾有の危機に対し、その原因究明と解決に向けた作戦を指揮するのが合衆国大統領の信任厚い女性司令官ジューディス・リーである。彼女の元で作戦に従事するアメリカの軍人やCIAエージェント達。長いながい物語の中盤以降は、司令官ジューディス・リーと彼女の部下達にも多くの活躍の場面が与えられる。

司令官ジューディス・リーは、シグル・ヨハンソンやレオン・アナワクを始めとする科学者達を集め、新造空母インディペンデンス号をグリーンランド海に進める・・・・・。海底に潜むモノを求めて・・・・・・。



この話、とにかく長い!

上巻は、多くの科学者たちの人物紹介と、数々の海洋異常現象の状況描写だけに終始している。物語の核心はまったく見えない。中巻以降、リー司令官が登場してから、やっと物語がダイナミックに動き出す。

この作品、半分読めれば読了できる。だが、それまでは読者に辛抱を強要する。

・・・ってことで、これから読む方は気合を入れられたい。


さて、読み終わった達成感は大きい。

だが、小説としての内容がスペシャルだったかというと、それほどでもなかったような気もする。

それでも、2点ほど興味深く読めたところがあった。


一つ目は、Yrr(イール)というモノの設定の新しさである。

物語の後半部では、Yrrの正体らしきものが徐々に判明し出すが、この“Yrr”という設定は、SF作品としてなかなかオリジナリティがあるように思えた。しかも、最近流行の脳科学などを中途半端に読んでいる私のような人間には、科学的にもなんだか在り得そうな錯覚を引き起こさせる。


二つ目。

この物語には、シグル・ヨハンソンとレオン・アナワクという2人の科学者の他にも、地球科学者、分子生物学者、火山学者、地球外知的生命探査研究員、音声分析家や海洋ジャーナリストなどの理系人間がわんさか出てくる。

物語の後半部では、Yrrへの対応の仕方で、科学者達とジューディス・リーを始めとする軍人・官僚達との対立が露になってゆく。こうした対立は、人間・自然・世界に対する認識の仕方や価値観の決定的な相違を示していて物凄く面白く感じた。

スケールは格段に小さいが、科学・技術の世界で仕事をする(私も含めた)技術者と、会社運営・事務処理に従事する人間との、仕事への対応の仕方の違いを日常でも感じることの多い私には、こうした場面はのめり込んで読むことができた。


とにかく、この作品、読み出すには気合が、読み出してからは惰性(慣性)が必要です。

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