第一章 もう届かない15
『・・・・』
『ふ~ん、そーなんだ』
俺は素っ気なく答えたが、
胸の鼓動は高鳴っていた。
「冷たっ!」
千冬が何か変な物を見るような眼で言ってきた。
『あぁ!何が?』
「それだけ?」
千冬は、俺が理子のことを好きだったと事を知っている。
俺が直接話したわけではないが、
あの日の事を…
理子からでも聞いたのだろう。
俺もバカではない。
千冬が俺に対して気を使って喋っているのがわかる。
『別にいいじゃないの。俺らもう27だぞ』
<そう。俺は今年で27歳になる。>
『結婚するって言われても不思議じゃねーよ!』
強気なことを言っていたが、
心の中は泣いていた・・・