青龍がお気に入りの場所で、体の半分を水につけていました。ここは家の前にある広くて丸い池です。水が太陽を反射してきらきらとしていました。 

「青龍、青龍」
 白龍が空からテレパシーで話しかけていました。普段から青龍も白龍もテレパシーで会話をしているようです。青龍は話しかけられても無視して気持ちよさそうに水に浸っています。白龍は降下しては止まって「青龍」と呼びますが、青龍は何度呼ばれても知らぬ顔でいました。

 

 この様子を窓から見ていた二人がいます。一人が小学二年生の女の子で、もう一人は母親でした。
「ママ、見て。白虎がいるよ」
「白虎ではなくて白龍よ」
「え、白龍。白虎にみえる」
「何を言っているの。白龍よ」
 龍がみえているのは、この二人だけでした。
 
 
 ついに白龍は青龍の目の前まで降下して止まりました。
「青龍、青龍」
 それでも青龍は反応しません。
「青龍、どこかに行こう」
 また反応がなくとも、白龍はめげません。
「青龍、遊ぼう」
「いやだ。ここから動かない」
 青龍はお気に入りの場所から動きたくないのです。しかし、白龍は強引にでも青龍を動かそうと、口で青龍の口をつつきかみます。青龍は白龍の口をふりほどこうと、水に一瞬もぐりました。白龍は口だけが水にもぐりました。水中でも青龍と白龍は口が絡まったまま格闘し、青龍が水から顔を出すと、その勢いで白龍の口がようやく離れました。
「青龍に来てほしい所がある」
「行かない。ここが気に入っているのだ」
 との会話が長い間続きましたが、青龍はしぶしぶ折れて白龍に付き合います。白龍は楽しそうにお出かけを楽しみますが、水が気になっている青龍は戻りたいと思うばかりでした。
 
 にぎわう地下街に連れていかれ、青龍はさらに帰りたくなりますが黙っています。
「この店が行きたかったところ」
 白龍は店の前で止まって言いました。ここはさっき窓から見ていた親子が開いている洋服店です。センスのよい服ばかりが置いており、青龍は長い間無言でみとれます。
 
 親子が店に入り、開店の準備をします。
「ここのお店、最近、僕の家になった。ついてきて」
 白龍に言われて青龍はついていくと、そこは洋服店の屋根裏でした。しかし、青龍は疑問に思います。
「ここ、地下街なのになぜ屋根裏」
 三角の天井に窓があり、日差しが入ってきて明るいのです。また屋根裏にしてはとても広い空間でした。
「いつもここでひんやりとしているのだ」
 白龍は青龍が水に浸っている時のように、気持ち良さそうにガラスの薄い台に顔と体をくっつけました。白龍が少し丸まれば、体が台におさまります。丸くて小さいガラス板の底から、細長いが丈夫なガラス棒で大きい台を支えているようです。背丈の高いスタンドで、青龍は驚いていました。
 スタンドは親子が何の気なしに誰かが必要としていると感じて、特注したのでした。
 
「この店、大きな洋服店なのだよ。気持ちよいし、ここの店を見守りたいし、しばらくここを住処にする」
「よかったな」
 青龍はそう言って、屋根裏を透けて空へと上昇しました。気がおもむくままに、池に戻り水に浸ったのです。
 
 のちに白龍がスタンドにいると子供が気がついて、だきしめます。
 青龍は白龍の存在に子供が気づいたと池から動いていないのに気がつきました。わざわざ店に行って、白龍に気がついてもらえてよかったなと言い、しばらく白龍の上に体を乗せて過ごしました。白龍と青龍は何の会話もなく過ごしていますが、有意義な時間のようでした。
 青龍は無言で池に戻って水に浸り続けるのでした。
 
 この話は、一昨日に見た不思議な夢でした。小さな女の子は私で、親が若い時の母でした。この夢を見ている時、温かくて、目が覚めてもじんわりとしていたのですが、物語のようでブログにのせてみました。龍はイラストでかわいくなっているだけで、こんなにかわいくありません。下手な絵ですが、イメージとして描いてみました。空と池はもっと綺麗で澄んでおり、龍の色も違い胴体もとてつもなく大きくてゴツゴツとしています。目と口元はイラストの通りでした。
 
 
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