賀茂川の上流、京都市内(西院)から原付で1時間ほどの雲ケ畑は、
渓流の山あいに襞のように家々が点在する林業の村である。
毎年、8月24日の夜に、松明でつくった文字が浮かび上がる松上げが催される
と聞き及び参る。
雲ケ畑松上げは、雲ケ畑集落の奥側にあたる出谷町と、北区の出張所がある中畑町の二箇所。
出谷町は福蔵院、中畑町は高雲寺の境内から視るよう、
在地の長男しか参加できない保存会の若者が、昼間のうちに真割木の松明を山の斜面に揚げて、
文字を作るのだが、20時の点火までどんな文字かは秘密。
20時ジャストに福蔵院の住職が鐘を叩いて、点火。
「心」の文字が漆黒の山肌に浮かびあがる。
(夜景モードのスローシャッターを拡大したモノなので不鮮明をご了解あれ)
すると、山肌に紅点が次々と下ってくる。
松明を持った保存会の若者が、福蔵院へ駆け寄り、拍手があがる。
2キロ弱離れた中畑町の高雲寺へ原付移動。
高台の高雲寺へ登ると、「士」の火字が浮かぶ。
雲ケ畑の方々は、出谷町と中畑町が相談することなく文字を決めていると口を揃えるが、
「志」が5等星まで見える夏夜にまたたく。
実は、雲ケ畑松上げで松明を燃やすのは2箇所ではない。
雲ケ畑の手前、中津川町でも道路に先祖の霊を送る松明を三基立て、
これの着火を合図に、中畑町の松上げを点火する。
土地の方々はお神酒を含み、夏の終わりをかみ締めるのだった。