コンクリートの地べたに


座り込んでいるのはもう辛い時期になってきた。


だから、


昼間はスーパーやデパートなんかを歩き回る。



食料品コーナーには


試食を勧める店員さんをよくみかける。



それを食べるほどの


究極感は、ない。



それどころか・・・


私は、プライドが高いほうなのかなと自分で思う。




買うことの出来ないことを解っていて


タダでたべさせてもらうことはできなかった。





「おいしーよっ!一口食べてみて!!」



太った男性店員が私にいなりずしを勧めた。



本当は・・・


空腹だった。



でも・・・



「試食だけでもいいから。食べてみてよ」



笑顔満杯で言う店員に、


思わず手を出した。




こぶりないなりずしは甘くて美味しくて。


空っぽの胃に気持ちよく入っていった。



「あれ?おなかすいてるのかなー?もういっこいっちゃう?」



調子のいい店員に勧められて、


もうひとつを口に含んだ。




あまり食べない私にはそれで充分だった。




「美味しかった?美味しかったでしょー?


よかったらまた今度買いに来てよ。ねー?」




軽く頭を下げて


その場をあとにした。




ここにもなかった。


だけど・・・暖かい気持ちにはなれた。




つづく・・・