小話 7

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たいきくん目線です☺





そっと、反対側の肩を優しく押して起こさないように自分の肩にもたれ掛からせることに成功した。
心の中で両膝ついてガッツポーズしながらも、こんな小細工をにっしーに見られたら…と怖くなる。



でもごめんなさい、工藤大輝、今めっちゃ幸せです。





会社の休憩スペースで資料を読んでいると遠くの方からでもキレイに聞こえる透き通った声。
大好きな宇野お姉様が笑顔で自分の名前を呼ぶ姿にすぐに顔が緩んでしまった。


「まだ集合時間じゃないからここに居ようかなぁ」

「え!ぜひっ!」

「大輝はちゃんと資料見なさい(笑)」


俺の勢いにおかしそうに笑いながら隣に座る。
こんな些細なことでもすごい嬉しくて、スマホを触りながら何か真剣に文字を打っている姿をバレない様に横目で盗み見る。

何か話したいけど注意も受けたし、いやでもこんなチャンスなかなかない。

どうしようかと悶々としている俺を余所に頭がフラフラしたかと思ったら寝落ちてしまった姉さん。

小さな声で名前を読んでも起きなくて、落とす前にとそっとスマホを手から取っても起きなくて。
姉さんの時間を聞いてないから起こした方が良いのに、こんな所で寝落ちするくらい疲れているのなら寝かせてあげたい気持ちが勝って口を噤む。




そうして、ふらふらと船を漕ぐ姿に出来心で引き寄せてしまったこの現状。


「………やばい…」


なにがやばいって、嬉しいのと、どう起こすべきかと、もし誰かに見つかったらと、でもやっぱり嬉しいのと。

正直な気持ちは隠せない。


「…みさこ…さん…」


羨ましいと、ずっと呼びたかった名前を呟く。
その擽ったさと距離の近さに持っていた資料を強く握り締めてしまった。

警戒心もなく眠るその姿に思わず喉がなる。

甘い良い香りと、長い睫毛が時折震えてとてもキレイだ。


「…………ほんと無防備ですよね…」


ゆっくり手を伸ばして頬にかかる髪をそっと耳に掛ける。

もう少し…もう少しだけ、と頬に手を添えようとした瞬間「大輝?」という聞き慣れた声が背後から聞こえてきて慌てて手を引いた。


「おつかれー、なにやってんの?」

「ぁっ……お、お疲れ様です…」


心臓がキュッとなった。
調子に乗って忘れていた存在に後悔しても遅い。

起こさないように振り向くといつの間に居たのか真顔のにっしー。


「…えらく爆睡してるね〜、帰ってこないと思ったらまったく、しょーがねー奴だなぁ」

「や、、ね、寝落ちしちゃって…」


背中に汗が伝う感覚を味わいながら笑顔を見せると同じ様に笑顔になって「大輝も忙しいのに悪いな」と姉さんの前に腰だけ屈める。


「宇野ちゃん、おーい、、」

「ぁ、、まっ、時間、もう時間?」


声を掛けながら姉さんに伸ばしかけたにっしーの手を制するとちょっとだけ眉を顰めた姿に手が震える。


「姉さん疲れているみたいだから、まだ大丈夫なら、俺は大丈夫なんで…」

「…ふーん。大輝は優しいな」

「…いや、」

「でもごめんな、お前の優しさ無駄にして」


そう言うと姉さんに近付いて「実彩子」と甘い声で呼ぶとチャームポイントの唇を姉さんの唇に合わせる。

起こっている状況が一瞬理解できなくて、至近距離で見るキスに見惚れてしまった。
わざとらしくリップ音を立てながら離れる動作はとてもキレイで、悔しいけど絵になる二人。


「ぅ、ん、、…れ?…たかひろ?」

「おはよ」

「ん、、ぁれ?…寝てた?」

「うん、大輝の肩でね」

「え、うっそ!ごめーん!!」

「いや全然!全然、大丈夫です!」


王子様のキスで目覚めたお姫様のようにすーっと目を覚まして肩にあった重さがなくなった。
残ったのは微かな温もりと甘い香り、そして淡い心。


「ったく、お前ココア買いに来たんだろ?さっさと買ってスタジオ戻るぞ」

「あ、そうだった!だって大輝いるんだもーん」


上目遣いで「ねー?」なんて言われて「ねー?」なんて返して。
いつものような、戻ってきた3人の時の雰囲気。


「これ大輝にあげるね!枕のお礼っ」


そう手渡されたカフェオレ。
忙しい時には甘いものだよ、なんてお姉さんらしく。

有り難く受け取ってお礼を言うと隣で待っているにっしーが早くというように姉さんの腕を取る。
それを見て咄嗟に反対側の手を握ってしまった。


「また今度、ご飯行きましょう!」


またもや少し眉を顰めたにっしーに少し声が裏返ったのは情けなかったけど負けずに言えた!


「もちろん!また行こうねっ」


何も気にしていない姉さんの返事にムスっとしたにっしーを見て、ほんの少しだけ勝てた気がして笑みが溢れる。


「ソロ曲もまだ感想全部言ってないですし」

「え〜?まだあるの?(笑)」

「いやMVの方とか、全然語れますよ!あと写真集のお話もしたいし…」

「ふふふ、お手柔らかにお願いします〜」


嬉しそうな姉さんの顔にデレデレしてると、姉さんの手を掴んでいた俺の腕に重なるにっしーの手。


「しゅーりょー!ほらもう行くよ」

「っ痛、、痛い痛い痛い!爪!爪!」

「ちょっと何やってんの隆弘!」


俺の腕を掴むフリして爪を立てるにっしーはいつもと変わらない笑顔で。
俺達のやり取りを笑いながら見て、やんわり助けてくれる姉さんもいつもと変わらない。


「にっしー抜きで姉さんと飯行ってやる…」

「へー、できるもんならやってみろよ」

「こっちには日高の兄貴という強力なコネがあるんで」

「お前っ、それ反則だわ!」

「あははっ、ほらもうわけわかんない事言ってないで行こ?大輝もごめんね、邪魔して」


またね、と俺にファンには見せられないような(いや見せてるか)変顔してるにっしーの腕を引いて歩きだす姉さんに笑顔で手を振る。

後ろを向いたまま変顔し続けるにっしーは角を曲がる瞬間にいつもの優しい笑顔に戻って「またな!」と手を上げた。


きっといつまでたっても敵わないし、叶わない。

二人が大好きだからこんな関係が幸せだ。


ちょっと調子に乗るのはご愛嬌ってことで…。







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タグの正解は何になるのだろう、笑。