HPVワクチンの流産リスク上昇を否定した論文と研究手法を強く批判する | NANAのブログ

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~HPVワクチンによる流産リスク上昇を否定した論文の結論は、疫学統計的観点からみて不当なミスリードである~

~論文の元になった臨床研究の手法には重大な欠陥がある~

~HPVワクチンは流産リスクを上昇させることが強く示唆される~

(※ 前回ブログ記事において『HPVワクチンに関する宮川剛氏の言説を斬る(2)~流産論文に関する宮川剛氏の統計疫学的解釈・解説を斬る~』のタイトルで次回ブログ記事のエントリー予告をしていましたが、一個人である宮川氏の論文に対するコメントを批判するよりも、本家本元の論文の問題点に焦点を当てて論じることの方が本筋だと考え、掲題の記事タイトルとしました。)

本ブログ記事では、HPVワクチン(2価ワクチン)の流産リスクを検証した論文(2015年)
http://www.bmj.com/content/351/bmj.h4358.full.pdf+html
が「流産リスクの上昇はない」という結論を下したのは、疫学統計的観点からみて不当なミスリードであること、また論文の元になった臨床研究(長期観察研究)の手法には、欺瞞的とも言える重大な問題点があることを指摘します。
そして、HPVワクチンの接種は流産リスクを上昇させる可能性が高いことを明らかにします。

また、そういった批判や指摘は同時に、「流産リスクの上昇はない」とした論文の結論をそのまま受け売りした宮川剛氏の言説や、論文の結論を無批判に拡散した他の複数の「解説記事」や「ブログ記事」などにも向けたものにもなります。

問題の論文(2015年)は、がん研究の最先端を担っていると言われる米国の公的研究機関 NCI(National Cancer Institute)の疫学研究者たちが発表したもので、謂わば、HPVワクチンに対して「流産リスクは無い」との「お墨付き」を与えた論文と言えるものです。

この論文が発表されたのを受けて、日本においてもHPVワクチンは流産リスクを上昇させないと断定する以下のような「解説記事」や「ブログ記事」が複数発信されました。
それらの記事を読んだ人の中には、「HPVワクチンによる流産リスクはない」と早計した方もいることでしょう。

2価HPVワクチン、流産リスク増大の根拠なし/BMJ

HPVワクチン接種後の流産リスクは上昇しないことが長期観察研究で示される/NCIブログ~がんの動向~

後者の記事は、海外のがん医療関連記事や論文を翻訳・解説をして情報提供するサイト『海外癌医療情報リファレンス』が米国NCIのニュース記事を翻訳したものです。
(※ こ記事の原文はこちら

このNCIのニュース記事の中で、HPVワクチン(Cervarix)の流産リスク解析を最初に報告した論文(2010年)
http://www.bmj.com/content/340/bmj.c712
の筆頭著者でNCI疫学研究者のSholom Wacholder氏(昨年、逝去)が、2010年論文の追試と位置づけられる2015年論文の報告を受けて語った以下の言葉が紹介されています。

「今回の結果は2価HPVワクチンに付随する流産のリスクが皆無であることについて“強力な証拠を提示し、安心をもたらした”」
(原文:the new results “provide stronger evidence and reassurance” about the lack of a miscarriage risk associated with the bivalent HPV vaccine.)

また、HPVワクチンの流産リスクを検討した一連の論文の「結論」を受け売りしたブログ記事としては、こんなもの↓もあります。

「子宮頸がんワクチンで不妊」はやっぱりデマ

そして、宮川剛氏はHPVワクチンによる流産リスク上昇は否定できるとする以下のようなコメントを残していました。

【宮川剛氏のコメント】
http://togetter.com/li/959517より引用)
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流産についてもほたかさんの引用されている論文
http://www.bmj.com/content/351/bmj.h4358.full.pdf+html
では統計的に有意なところまではいっておらず、その論文で見かけ上の数値の上昇(誤差)にすぎない可能性が高いと結論されています。数値的には上がっているサブグループもあるので、今後も研究が継続的になされる必要は言及されており、その点は注意が必要だとは思いますが、逆にいえば、その程度のものともいえます。
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以上、「HPVワクチンは流産リスクを上昇させない」と結論した論文を無批判に引用・肯定する解説記事やブログ記事および宮川氏のコメントを長々と紹介してきました。

しかし果たして、論文(2015年)の臨床研究から示された統計データは、Wacholder氏が語るように、「流産のリスクが皆無であることについて“強力な証拠を提示し、安心をもたらした”」と言えるものでしょうか。

そんな断言はとても出来ないと言わなければなりません。

【論文と研究手法に対する疑問点や問題点:批判ポイント①】

妊娠13週~20週での流産がHPVワクチン接種群で有意に増加したという統計データは決して軽視できない。

妊娠0週~20週の全流産率がHPVワクチン接種群と非接種群の間で有意差が出なかったのは、統計検出力が不足していた可能性が高い。


下記の図は論文(2015年)の[Fig 2]を転載したものです。
2015年HPVワクチン流産データ

[Fig 2]の表の中で「CVT+PATRICIA」というのはCVT(The Costa Rica Vaccine Trial:南米コスタリカでNCIの主導のもとに行われた臨床試験)のデータとPATRICIA(PApilloma TRIal against Cancer In young Adults:ワクチンメーカーのGSKがスポンサーとなって主導した臨床試験)のデータを合算したものを指しています。

また「CVT(update)」とは、次項の批判ポイント②でも取り上げますが、CVT(RCT試験)を終了して「長期観察研究」に入ってから新たに2836名の被験者が対照群(HPVワクチン非接種群)に組み込まれた後に得られたデータを指しています。

(※ 「CVT+PATRICIA」の中間解析報告をしたのが上述したWacholder氏らの論文(2010年)で、「CVT+PATRICIA」の最終解析と「CVT(update)」の解析を合わせて報告したのがPanagiotou氏らの論文(2015年)ということになります。)

[Fig 2]を見て分かるように、妊娠13週~20週での流産リスク(「CVT(update)」と「CVT+PATRICIA」の合算値)はHPVワクチン接種群で有意に増加しています。(相対リスク:1.34 95%信頼区間:1.03~1.73)
この統計解析結果は非常に重要な意味を持っています。
論文の著者らは、妊娠0週~20週での全流産率においてHPVワクチン接種群と非接種群の間に統計的な有意差がなかったことを理由に、妊娠13週~20週で生じた流産リスクの有意な上昇を無視できるかのように述べていますが、それは疫学統計的解釈として正しくありません。

たとえば論文筆頭著者のPanagiotou氏は、妊娠13週~20週での流産リスクの有意な上昇について、
「病態生理学的な機序が存在しないので、このような軽微な上昇は統計解析上の偶然性による可能性があります」などと述べています。
(原文:Given the lack of an established pathophysiological mechanism that could explain the subgroup finding, it may be due to the role of chance in statistical analyses)

しかしそもそも、HPVワクチンによる流産リスク上昇の医学的メカニズムついては殆んど何も解っていないのですから、妊娠13週~20週の流産率に有意なリスク上昇が見られた理由を説明する「病態生理学的な機序」が単に見当たらないからといって、それを否定するのは科学的な態度とは言えません。

医学的には、妊娠12週以前に起こる流産は胎児の染色体異常などが主要な原因であり、13週以降の流産は母体側に起因するところが大きいと言われています。したがって、HPVワクチンが母体に何らかの健康被害、障害を引き起こした結果として、妊娠13週~20週の流産リスクを上昇させたと考えるのは不自然なことではありません。

また、Panagiotou氏の「(流産リスクの)軽微な上昇は統計解析上の偶然性による可能性があります」という主張にも看過できない問題があります。
流産リスク上昇の絶対リスク値:0.8%(相対リスク値:1.37)は一見小さな数値に見えますが、HPVワクチンは健康な10代女性全員に打つことを勧奨し前提としているのですから、0.8%の絶対リスク上昇値(相対リスク上昇値:37%)は決して「軽微な上昇」と言えるものではありません。だからこそ、HPVワクチンの臨床試験では、より標本数(被験者)の大規模で追試的なRCT試験によって安全性の検証が求められたのです。

新たに2836名の被験者が対照群に組み入れられて長期観察「CVT(update)」に移行する前の「CVT+PATRICIA」の段階において既に、妊娠0週~6週、7週~13週、13週~20週の各在胎週において、また合算した妊娠0週~20週においても、流産リスクの上昇傾向は見られていました。
「CVT+PATRICIA」で見られた流産リスクの上昇傾向が被験者数が増えても変わらないとした上で私が行った試算では、もしCVT試験の被験者数を約3倍に増やしていれば、妊娠0週~20週の全流産リスクは有意に上昇しているとの検定結果になります。(片側検定 p=0.05)

ですから、妊娠0週~20週の全流産リスク上昇の有意差が検出されなかったのは、統計検出力が足りなかった(標本数が足りなかった)“可能性が高い”とするのが疫学統計的に妥当な解釈です。
統計学的に言えば、βエラー(本当は差が「ある」のに、差が「ない」としてしまうエラー)の可能性が高いということです。
統計学はあくまで確率論なので断定はできませんが、充分な統計標本数(臨床試験に参加する被験者数)のもとに検出力の高い試験が行われていれば、HPVワクチンは有意に流産リスクを上昇させるとの結果が出ていた「可能性が高い」と言えるのです。

では、この論文の統計データを日本に当てはめた場合に、どのような流産リスク上昇の試算になるでしょうか。
この点に関しては、ほたかさんがブログで解説と試算の記事を書かれています。
『それでもHPVワクチン受けますか? 不妊(流産)リスクの増加』
このブログ記事は、HPVワクチンの流産リスクを検討した一連の論文の批判レビューとしては先駆的なもので私も参考になりました。ご一読をお薦めします。

ほたかさんの記事では、
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10,000人がワクチンを接種し、出生率1.4を使ってラフに計算すると14,000回の妊娠・出産があるとして、HPVワクチン接種による流産増加数は、

14000×0.008=112人

1人の子宮頸がん死を防ぐために、100人以上の未来の命が失われる?
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と試算されています。

この試算の元になった絶対リスクの0.8%は妊娠13週~20週の流産リスク上昇だけを評価したものですが、妊娠0週~20週全体の流産リスクにおける上述したようなβエラーを考えれば、絶対リスクの数値はさらに大きくなる可能性もあります。


【論文と研究手法に対する疑問点や問題点:批判ポイント②】

長期観察研究「CVT(update)」に入ってから“流産リスクが元々高い被験者たち”が対照群(HPVワクチン非接種群)だけに組み入れられている。

このような観察研究の手法は先に行われたRCT臨床試験の科学的信頼性を台無しにするものであり、欠陥のある観察研究から得られたデータや結論には重大な疑義がある。


次に指摘しなければならないのは、これが一番大きな問題点だと言えますが、「CVT(update)」と名付けられた長期観察研究の研究手法の問題です。

長期観察研究「CVT(update)」の手順(プロトコール)を示した下記のフローチャート図[Fig 1]は、論文(2015年)から転載したものです。

臨床試験プロトコル


[Fig 1]から分かるように、RCT試験である「CVT」を終了して長期観察研究「CVT(update)」に入った時点で、新たに2836名の被験者が対照群(HPVワクチン非接種群)にだけ追加されています。
この被験者たちの平均流産率は、「CVT+PATRICIA」の対照群(HPVワクチン非接種群)の流産率より明らかに高いことが、[Fig 2]から数値を拾い上げて計算してみると分かります。

◆「CVT+PATRICIA」の対照群(HPVワクチン非接種群)の流産率【A】
176/1727=(流産数)/(妊娠数)=(10.2%)

◆「CVT(update)」の対照群(HPVワクチン非接種群)の流産率【B】
325/2481=(流産数)/(妊娠数)=(13.1%)

【A】と【B】の数値を比較して分かるように、「CVT(update)」の対照群の流産率は、「CVT+PATRICIA」の対照群の流産率より絶対値で2.9%、相対比で28%も高くなっているのです。この上昇は統計的に有意と言えるものです。
このことは研究手法に非常に重大な問題点、欠陥があることを意味しています。

長期観察研究「CVT(update)」の対照群の流産率が先行のRCT試験「CVT+PATRICIA」の対照群の流産率より有意に高くなったということは、「CVT(update)」において新たに対照群に追加された被験者2836名の平均流産率が元々から明らかに高かったことを意味しています。
平均流産率が有意に高い被験者集団をHPVワクチン接種群と対照群(HPVワクチン非接種)に振り分けずに対照群だけに追加すれば、「PATRICIA+CVT」で既に懸念の声が上がっていた流産リスクの上昇傾向がマスクされる(覆い隠される)方向に働くのは、疫学統計的観点から見ても明らかです。

一見、統計標本数を増やし検出力を上げたように見える(見せている)やり方そのものが欺瞞的なのです。
このような研究手法から導き出されたデータや結論には、科学的、疫学統計的な信頼性があるとは到底言えないでしょう。


長期観察研究「CVT(update)」において対照群に追加された被験者集団の流産率が有意に高かった理由は、元々流産率が比較的高い社会層から被験者たちが集められたということが考えられます。
臨床試験が行われた南米コスタリカは貧困や失業が社会問題になっており、20代の若者の失業率が5割という地域もあります。貧困を背景とした劣悪な衛生環境や栄養環境といった要因が、流産率を高くするのは知られているところです。そういった背景下にある社会層から多く集められた約2800名の被験者たちが対照群に組み込まれたと考えられるのです。

案の定というか、お見事というか、「CVT+PATRICIA」で見られていた流産リスクの上昇傾向が、「CVT(update)」ではどの妊娠週数においても全流産においても軒並み下がる方向にシフトしているのが[Fig 2]から読み取れます。

このような「欺瞞的操作」が行われたにもかかわらず、妊娠13週~20週での流産リスクに有意差が出ていることが逆に、HPVワクチンには流産リスクを上昇させる副作用があることをより強く示唆していると言えるでしょう。

【批判ポイント①】で、全流産リスクに統計的有意差が見られなかったのは検出力が足りなかった可能性が高いと書きましたが、元々流産率の高い被験者集団を対照群だけに追加・組み入れるような欺瞞的な方法ではなくて、HPVワクチン接種群と対照群の二群に無作為抽出して振り分ける、真っ当な方法で統計標本数を増やす試験を行っていれば、流産リスク上昇の絶対リスク値:0.8%(相対リスク値:1.37)はもっと高い数値になっていた可能性が充分にあります。

流産率が高い層の被験者たちを対照群(HPVワクチン非接種群)にだけ単純に追加したのは、PATRICIAやCVT試験で既に流産リスクの上昇傾向が見られそれを各方面から指摘されていたので、疫学的に真っ当な方法で統計検出力を上げる臨床試験を進めると、全流産リスクでも明らかな有意差が出かねないと憂慮し、それを避けるために意図的にこのような研究手法(手順)を採用したのではないかとさえ思えてくるのです。

ワクチン接種後90日以内の妊娠における流産リスクの有意な上昇や、統計的に有意とは言えないとしても全体として流産リスクの上昇傾向が見られていた「CVT+PATRICIA」の後に求められていたのは、統計検出力を上げた臨床試験によって流産リスク上昇の懸念に対する明確な科学的答えを出すことでした。当然、研究者たちはそれを理解し意識していたはずです。

NCIの疫学研究者であれば、より明確な答えを引き出すためにはどのような臨床試験計画を立てたら良いか、どれくらいの検出力が必要になるかは充分に検討し認識していたはずです。良質なRCT試験に求められる要件についても、私がとやかく言うまでもなく、当然に理解していたでしょう。

「PATRICIA」と違って「CVT」や「CVT(update)」はNCIが主導した臨床研究であり、それにはワクチンメーカーであるGSK社の関与はないとされています。しかし、試験に必要なワクチン供給という鍵を握っているのはGSK社です。またメガファーマであるGSKには、高給で雇われた統計のプロもいれば医薬品開発に必要な世界各地での臨床試験を遂行するためのノウハウ、その裏表を極めたプロ集団もいます。

GSK社にとってみれば、この臨床研究が行われていた時期は、「Cervarix」が世界市場に広く参入して上げるであろう巨大な利益に大きな期待がかけられていた時期でもあります。
そのような時期に、権威ある一流医学誌にもし『HPVワクチン接種は有意に流産リスクを上昇させる』という公的研究機関の研究者の論文が掲載されることになれば、ワクチンメーカーにとってその打撃、経済的損失は計り知れないものになります。
それだけ“流産リスクの統計的な有意差の有無”は、医薬品としてのHPVワクチンの命運を握っていたのです。

長期観察研究「CVT(update)」において、明らかに平均流産率の高い被験者集団が何故、単純に対照群にだけ組み入れられたのでしょうか。疫学研究の科学的、統計的信頼性を損なうような研究手法を何故、NCIの疫学研究者たちは採用したのでしょうか。
憶測との批判を覚悟で言えば、論文を発表した公務員的地位にあるNCIの研究者とワクチンメーカーの間に表に出ない重大な利益相反がなかったのでしょうか。同じく公務員的地位にあった米国CDCの女性所長が退職後にメガファーマの重役に就任し、保有株式を売却して億単位の利益を得ていた例があります。
色々考えると疑問は尽きません。

いずれにしても、「CVT(update)」で行われた対照群への被験者の追加組み入れの研究手法には極めて重大な問題があると言わなければなりません。

【論文と研究手法に対する疑問点や問題点:批判ポイント③】

HPVワクチン接種群と対照群の間で、妊娠20週以降の早産の発生率および早産児の予後(誕生後の障害発症や死亡など)が臨床試験において十分に検討・評価されていないのも大きな問題である。

医学的には一般に妊娠20週~22週以降の流産は死産と扱われています(国によってその妊娠週数の規定は多少異なるようです)。論文では、HPVワクチン接種群と対照群の間での妊娠0週~20週の流産率の比較と20週以降胎児が生きて生まれたかどうかだけの点しか検討されておらず、妊娠20週以降に生まれた早産児の予後ー障害発症や死亡などが調査・検討されていません。
早産児が障害を負ったり死亡したりするリスクは、妊娠(在胎)週数が短かくなるほど高まることが知られています。

早産児生存率
(出典:「低出生体重児保健指導マニュアル」(厚労省))

妊娠13週~20週での流産リスクがHPVワクチン接種群で有意に増加したという論文の統計データは、妊娠20週以降に発生した早産もHPVワクチン接種群で有意に増加し、並行して早産児の死亡や障害の発症率も増加していることが考えられます。HPVワクチンの副作用としての流産リスク上昇(妊娠損失リスク)を検証するということは、早産児や新生児の予後も含めた総合的な検証が求められるということではないでしょうか。
研究者たちは何故、早産児や新生児の予後を観察・調査する項目を研究に組み入れなかったのでしょうか。ここにも大きな疑問が残ります。

先行の臨床試験でHPVワクチン接種群において流産リスクの上昇傾向が見られたので、両群間の早産児の比率や予後を評価項目に追加すると全体としての流産リスク(妊娠損失リスク)に統計的な有意差が出てしまう可能性があることを憂慮し、何らかの意図的、恣意的な力、バイアスが働いていたのではないかという疑念も拭えません。
この疑念は、批判ポイント②で指摘した対照群(HPVワクチン非接種群)への新たな被験者の追加組み入れにおける欺瞞的な手法に対する疑念とも重なります。

【論文と研究手法に対する疑問点や問題点:批判ポイント④】

対照群であるHPVワクチン非接種群に生理食塩水プラセボではなくA型肝炎ワクチンが接種されているのも大きな問題である。

「CVT」や「CVT(update)」などの臨床試験や観察研究が行われる以前から、ワクチンに添加されている免疫増強剤であるアジュバントの安全性に対する懸念、危惧の声は専門家や研究者たちから上がっていました。
そして、臨床比較試験においては対照群にアジュバント製剤やそれが入ったワクチンではなく、生理食塩水プラセボ(偽薬)を使用すべきだという声も上がっていました。

HPVワクチンの副作用の主要起因がアジュバントにあるとすれば、「CVT」試験のように、臨床比較試験において対照群にアジュバント含有の他のワクチン(A型肝炎ワクチン)接種を設定すれば、HPVワクチンの副作用が過小評価される可能性が高いことになります。
したがって、本記事で取り上げたHPVワクチンの副作用(副反応)としての流産リスク上昇の数値は、実際にはもっと(場合によれば、はるかに)高い可能性が十分にあります。

しかし、これまで行われてきたHPVワクチン(2価ワクチン、4価ワクチン)の臨床比較試験の殆んどで、対照群に生理食塩水プラセボ(偽薬)が設定されていません。これも大きな問題点であると指摘しなければなりません。


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過日、日本産婦人科学会はHPVワクチン接種勧奨の再開を求める声明を出しました。

そこで最後に、産婦人科医の皆さん、特に周産期医療に携わり少しでも流産を減らそう、新生児の予後を良くしようと日頃から奮闘されている医師の方々に、次のような問いを投げかけて本ブログ記事を締めくくりたいと思います。

貴方の所属する「産婦人科学会」は、団体組織として、HPVワクチン接種勧奨の再開を求める声明を出しました。
しかしながら、HPVワクチンで懸念されている流産リスク(妊娠損失リスク)増加というデメリットについては、貴方ご自身による熟慮と判断によって、その懸念は充分に払拭されているとお考えなのでしょうか?


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