『堕落論』坂口安吾 | ななほん

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今年読みたいと思ってリストアップしていた本で、この本を読んでみたいと思ったきっかけ動画はこちら 



『堕落』を非難するわけでも推奨するわけでもなく、ただ人間は堕落するものだ、と、グレーの部分に留め置く内容ととらえたけど、ただの政治批判ではないだろうし、結局著者が何を言いたかったのかよくわからない作品でした。

「人は墜ちる道を正しく堕ちきることが必要なのだ」「墜ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない」とあるけど、この「墜ちる」の定義が広すぎて、一体どんな状態が「墜ちる(堕ちている)」のかとか、個人差があったりするのかとか、一応戦争や敗戦後の日本を例に出してるけど曖昧だし、それを見つけ出して理解するだけで人生終わりそうだし、そもそも見つけ出せないまま終わっておかしくないテーマだし。

このかなり短い作品を一度読んだだけではとらえ切ることは不可能で、この本きっかけに考えてみるとか、そして人と対話したらおもしろいんじゃないかという香りがぷんぷんします。

ちなみに原文は青空文庫にもあって、別に訳文じゃなくて原文でも十分理解できる内容だったので、このモヤモヤを体感してみたい方はぜひ以下読んでみてください。




人間が変わったのではない。ただ、人間へ戻ってきたのだ。人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできない。防ぐことによって人間を救うこともできない。人間は生き、人間は墜ちる。そのこと以外の中に、人間を救う便利な近道はない。