私がボクシングを見始めた1988年。
日本の世界王者はWBC初代ストロー級
(現ミニマム級)チャンピオンの井岡弘樹ただ一人だった。
その井岡もほどなくして王座転落。
一方で年頭から始まった日本人世界挑戦失敗の連続記録はこのあと21まで伸び、約2年間続く事になる。
時代は華やかなりし空前のバブル景気の真っ只中。
謳歌する世の中とは裏腹に、日本ボクシング界は氷河期と言って良い体たらくだった。
同じころ、お隣の韓国では我が世の春のごとく世界チャンピオンが次々に誕生。
その中にはJr.フライ(現ライトフライ)級の両巨頭、
張正九と柳明佑、そして文成吉や金容江、金奉準ら若くてイキの良いチャンピオンも居て、当時の私は韓国がとてもうらやましく、何故日本には世界チャンピオンが生まれないのだ‥?
と自分の人生の出来事かの様に本気で悩んでいた。
解説者のジョー小泉氏は、
「日本人は贅沢になり、ハングリー精神を持つ若者が少なくなった。相対的に身体も脆弱になって顎や骨も弱くなっているのではないか」?
みたいな事を何かの媒体で語っていて妙に納得した記憶がある。
それほどまでに日本のボクシング界は暗かった。
まだ大橋も玉熊も連敗記録の当事者で、辰吉・鬼塚・渡久地の登場まで少し待たなければならなかった。
そしてあれから30数年が過ぎた。
現在の韓国ボクシング界に往年の面影はなく、
逆に日本には、あれだけ渇望されていた世界チャンピオンが沢山君臨している。
しかもその中には、かつて至難の業と言われていた連続防衛や複数階級制覇を成し遂げている王者も少なからず居るというまさに両手に花ならぬチャンピオンベルトのハーレム状態。
これぞ私がずっと夢見ていた光景!
それが目の前に広がって、ボクシングファンの私は幸せの絶頂に居るはずだった。
が、幸せの絶頂にいま私は居ない。
日本人選手の世界奪取の場面を見ても
「あ、へー!勝ったんやー」
位のもので、感激や感動はごく薄い(勿論感激する選手も皆無では無いが‥)。
何故なのだろうか???
そこでふと思った。
30年前の韓国人ボクシングファンは今の私の様な気持ちだったのだろうか?と。
熱狂した時を経て、いつしか飽和し、感覚も鈍くなってボクシングそのものへの興味も薄れていったのだろうか‥?と。
私の中では張がムアンチャイ・キティカセムに二階級制覇を阻まれ、真冬の大阪で柳が井岡弘樹に敗れた辺りから韓国のボクシングは下り坂を猛スピードで転げ落ちて行った印象がある。
当時韓国でボクシングに熱狂していたファンで今は離れてしまっている方に話を聞いてみたい。