扉は開かず。



『最後の希望』デビッド・ヘイは結局何も出来ず、
アッという間に時は過ぎ12ラウンド終了のゴングは鳴った。

持ち前のスピードを生かした左右の動き。アグレッシブな連打も出せず、
踏み込み浅いのジャブ・時々飛び込む様に打つストレートを単発で出すのみ。
批判していたクリチコのワンパターンを自らが繰り返したのは皮肉だった。

ヘイは、巨人クリチコ兄弟前門の虎・ウラディミールの圧力に
飲み込まれてしまった。



WBA.IBF.WBO統一世界タイトルマッチ。
ボクシングの象徴ヘビー級久々の大一番はこうして終わった。

アリ・フレージャー・フォアマン・ホームズ・タイソン・ホリフィールドと連なって来たヘビー級黒人最強の系譜を引き継ぐ男としてヘイは期待されていたが、時代は彼を選ばなかった。


2011年夏。

現在のヘビー級を支配するのは、本拠地ドイツのアウトバーン・メルセデスにも通ずる、まったく無駄の無い理論と技術を追求し
プログラムされたパターンを綿綿と遂行するロボットボクシングだ。
そこには感情を入れ込む余地はまったく無い。

今日それが証明され、多くのボクシングファンのヘビー級に寄せる想いは、
遠いむかしの郷愁に過ぎない現実を突きつけられた。


我々ファンが思うより遥かに高く険しい
機械の塔、クリチコタワーズの時代である。