5つの物語とエピローグからなる。

第3シリーズ2冊目、通算13冊目。

 

今回の主な舞台も横浜。

28歳になった中田正義に加え、中1の男の子二人、女の子一人が加わって、物語は思春期の心をも描いていく。

モデルをしている真鈴はクラスの中では浮いている。

それは仕事が忙しいからで、決して同級生を見下しているわけではないのだが、はっきり物を言う性格が彼女を苦しめているようだ。

一方、みのるはみのるで問題を抱えた母親に育てられたのと、生来の性格もあり、自分に自信がない。

大人からすればもどかしく、また、そんなことで、と思うこともあるが、彼、彼女らは中学1年生。

子供なのだ。

 

羨ましく、そして物語を安心して読み進められるのは、リチャードや正義をはじめとした信頼できる大人たちがそばにいるから。

子供たちは自分の力で気付いていく。

真鈴には、こうアドバイスする。

「あなたのことを相手が好いていようが、いまいが、そんなことは何も関係がない。

誰にも(中略)あなたに不本意な行動を強いる権利などない。

『嫌だ』と思ったことには毅然としてノーを告げましょう。

それがあなたを守ることに繋がります」(100頁)

 

みのるは、母が暴れるのが怖くて、自分のやりたいことを我慢していた。

けれど、顧みられなかった方の自分の心をそのまま出せる大人を得たことで、「自分」を取り戻していく。

 

大人とは、こういう人物でなくてはならないな。

手出ししすぎず、しかし受け入れ、道を共に探っていけるような。

そんな理想の大人であるためには、大人自信が自分に自信を持っていなければならないし、寛容で賢くなくてはならない。

搾取したり、思い通りにしようとしないこと、せめてそれぐらいはできる大人でありたい。