yasudayasu氏との長期停滞論争 / 蝙蝠氏とのクルーグマン解釈論争 | 批判的頭脳

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一般リフレ支持者との対話第二弾として、yasudayasu氏と蝙蝠氏との議論をtogetterにてまとめたので紹介したい。


yasudayasu氏と望月夜の長期停滞論争


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追記:2016/1/6

今、yasudayasu氏が新しい回答をたくさん与えてくださって、このtogetterは継続的に更新されている。
yasudayasu氏は、数量的に見て、均衡実質金利が人口影響のみによってマイナスになるのはもっと後だと考えているそうだ。また、2000年代は正の均衡実質金利が見られたのではないかと指摘している。

しかし、ここ10年20年ほどの均衡実質金利は短期的なマイナス影響を受ける(少なくとも受けるリスクがある)ので、有意に正であると予想されるとも考え難いということ、また2000年代は海外バブルもあったこと(yasudayasu氏は海外バブルのない時期もそうであったと主張したが、バブルが起こっていたとする時期の切り取りがおかしいと思われる)を指摘している。

これからもしばらくこの連続更新が続くのではないかと思われるので、いま記述しているまとめはあまり参考にしないでほしい。あくまで途中経過説明である。興味ある方はこのtogetterを追ってみるといいと思う。


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そこまで長くないので直接読んでいただいても問題ないと思うが、私なりにまとめてみる。

yasudayasu氏はクルーグマンの均衡実質金利長期沈降説に否定的だ。(この説については、拙ブログ記事参照)

まず、「もしこれが事実なら、異次元緩和がBEI(ブレークイーブンインフレ率)を1.5まで引き上げることはなかったはずだ」、と彼は述べた。

しかし私はこれに対し、もし黒田以前の日銀がインフレ率をもっと低い値に維持しようとしていたなら、それによって(現在の名目金利で可能であっても)投資が手控えられていたと考えられ、黒田日銀がその不安を払拭した効果なのではと述べた。
もちろん、投資の制約条件は、日銀の引き締め不安だけでなく、実際の需要への不安もある。だから、黒田日銀が引き締め不安を払拭しても、その効果は限定的で、2%のインフレ目標には近づきそうにもない状態が続いている。

また、yasudayasu氏は、「人口動態変化程度では均衡実質金利長期沈降が起こるとは考えられない」と言うが、私がその論拠を尋ねても特に返答はなかった

彼はほかの一般リフレ支持者とは一味違い、クルーグマンを批判的に見た上で金融単体の有効性を論じているが、そう確信する理由は、少なくとも彼の発言の中に見つけることができなかった。



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蝙蝠氏と望月夜の『流動性の罠&クルーグマン』解釈論争

蝙蝠氏が「経済がマネーの影響をうけないとする学説はあるのか」という問題提起をしたのに合わせて、私が流動性の罠の存在を指摘したことから始まる。

蝙蝠氏は、クルーグマンのコラムを持ってきて、彼が金融緩和を主張していることを用いて反論しようとしたが、すでに私が解説した(および)ように、彼の議論は、まず『現在の』マネーがどうでもよくなっている、つまり現在の金融緩和が無効である前提からスタートしている。

私は蝙蝠氏の引用したコラムの中から上記にあたる部分を抜粋し、その後補足として、「だから期待政策が必要だとクルーグマンは述べているのだ」と返答した。

しかし、ここで議論は急展開を見せた。私の補足回答を見逃したのかもしれないが、蝙蝠氏から

クルーグマンは将来の金融緩和は有効だって言っているのに、その部分を切り取った! 恣意的だ! 話にならない! 時間の無駄!

苛烈な罵倒を受けることとなったのである。


蝙蝠氏が冷静になるための時間を置いて、再度このことを指摘したところ、誤解を認めるどころか

あなたは金融政策が無効だといったり重要だといったり一貫性がない。小学校からやりなおせ

とこれまた痛罵される羽目になった。


一応、私の金融政策理解は金融政策が有効か無効かという議論が重要である理由にまとめてある。

均衡実質金利が長期的に負なので、将来の緩和を約束する期待政策は直接的な効果を持たず、財政政策を伴わなければならない」というクルーグマンの見解を踏襲したものとなっている。


この論争は、単に蝙蝠氏が相手のコメントをちゃんと読んでないという問題にとどまらず、一般リフレ支持者の方々は平均的に、なぜ期待政策が重要なのかということを――――現在の金融緩和が無意味だから、期待政策が提案されたのだということを――――あまりちゃんと理解していないまま、とりあえず金融緩和に賛成するという認識であるという問題も浮き彫りにしたかもしれない。
上記の誤解は、リフレ派(少なくとも、その多く)が、金融政策単体の効果を喧伝してきたことに由来するものだろうと思われる。





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