やり切ること
皆さんこんにちは。広報Mです
初日の大事故も根性で乗り越え、当日作業変更した漆喰仕上げも無事に終え、競技ギリギリに決まった自由課題も綺麗に仕上げ、スピード競技では自己記録更新。
ここまでいろいろありましたが、いよいよ集大成、最後のモジュールです!!
80分で赤壁、土壁、現代漆喰の3つを仕上げます。
決められた塗り厚で、美しく塗り上げることが求められる左官屋の腕の見せどころです
競技前。泰喜さんは落ち着いていて、準備は万端!!
ただ、練習と違う点が一つ。
競技1日目に課題の寸法が一部変更になっているため、漆喰で仕上げた柱の養生のためのプラ板を競技中に寸法通りに切って作成しなくてはいけないのです。
練習ではいつも余裕を持って作業を終えられているので、自分で養生を作るだけの時間は十分にあり、問題はないはず…。
「第4モジュール競技を開始して下さい」ピーーーーッ
泣いても笑っても最後!!頑張れ泰喜さん
まずは赤壁を塗るために、ブルーシートを1つ手に取り、もう1つ・・・と、あれ??泰喜さんブルーシートを探し始めます
え、ええーーーーーーーー引き出しに入れて指差し確認したはず…。私何か間違ってたかな…。
私の心拍数が一気に上がります。
すると、引き出しの奥に落ちていたようで、泰喜さんがすぐに見つけてくれました。
たった数秒の出来事ですが、泰喜さんが物を探す動作をすると、「やばい死にそう。」と思ってしまうほどに心臓がバクバク💦
最後のモジュールも一切気が抜けません。
今度こそ赤壁を塗るために、養生のプラ板を決められた寸法に切断して、まだ湿っている漆喰の柱に貼り付けます。
よし順調
と思ったら、
ぺらり。
何度も剥がれてくるではありませんか…
剥がれてくる養生が鬱陶しそうな泰喜さん。
「どうして?最近はこんなこと滅多になかったのに…」と、心配になる私
すると社長が言います。「大丈夫。いいことだ。」と
・・・え???
柱の漆喰塗りの時に塗った吸水調整剤を薄めたため、漆喰の水引きが早くなりプラ板がくっつきにくくなっていたのです。
「あぁ!そう言うことだったのか!!」私は理由を知れて少し安心しました。
だけど、泰喜さんどう対応するのかな?と見守ります
心配そうにする私とは打って変わり、泰喜さんは至って落ち着いていました。プラ板を抑えるように材料を塗って対処します。
よかった。さすが泰喜さん。ナイス対応
と、安心したのも束の間。いつもより材料の伸びが悪いような…
「そういえば!大会では選手が自分で調整できるように、ほんの少し硬くしてあるかも知れないと話していたな。えぇ〜い!今すぐ競技スペースに入って硬さ調整したい!!!!」と私はムズムズしてしまいます。(余計なお世話ですね)
しかし、なんてことないと言うように綺麗に塗る泰喜さん。
落ち着いて考えたら、たいした問題ではないのに最後まで油断はできないと思うと些細なことに動揺してしまうのですよね…
このモジュール、そんなことが沢山あるのです…。
土壁を塗る時に使う柱の養生のプラ板作成。
予備で渡していたプラ板を切断しており、「いつもと同じ方を使って欲しいのに、予備の方を使っている…」と私はソワソワ
どっちでもいいじゃないかと思うのですが、道具を準備している身としては、何が起きるか分からないと思うとドキドキ…でした。
しかし途中で、本来使って欲しかったプラ板で再度作り直し始めた泰喜さん。
「あれ?どうしたんだろう?」
後から聞くと、切断寸法を間違えてしまったようでした。
予備があって本当によかったぁ!!! と、ヒヤッとしました やはり何が起きるかわかりませんね
無事に養生も作り、ここからは練習通りに行きたい がんばれぇ〜
続いては、砂の配合が多い土でチリ周りを先に塗る『チリ塗り』を始めます。
すると、塗りつけても土がポロポロ…と。
これもまた、練習の時より塗りにくそうに見える…。また私の心配が始まります
(水を足したい・・・。どうにか調整したい。)とウズウズ。
泰喜さんは時折、水を足しながら塗り進め、なんとかチリ塗りを終えます。
はぁよかった…
私、動揺しすぎかな。ちょっと落ち着かなきゃな。と周りを見渡すと、
ものすごく真剣に見守る3人が隣にも
無事に終わるまで気が気ではないのは私だけではありませんでした
いよいよ最後の工程現代漆喰!
残り23分…。無事に終わるかドキドキで見守ります…。どうか無事に終わりますように
すると、ここでも材料が気になってしまいます
材料の調節も含めて競技なのですが、いつもの癖でちょうどいい硬さを提供しようとしたくなり、
「競技スペースに入りたーーーーーい!!」
もちろんそんな事はできませんので、泰喜さんを信じて見守ります。
きっとこんなにいちいち心配していたのは見ている側ぐらいで、選手本人の泰喜さんは動揺せず与えられた条件で最大限自分の仕事をしているように見えました
時間いっぱいに細かなところにもこだわって、
最後のチェックもぬかりなく、
掃除も完璧
そしてついに!ついに!!
ついに!!!
「競技を終了してください」ピーーーーッ
よし!!!!!!!無事に終わった!よかったぁ!!
合計9時間20分 全ての競技が終わりました
お疲れさまーー!!
泰喜さんの集大成を前に写真をパチリ
何ヶ月もストイックに自分に徹底的に負荷をかけ続け努力してきた泰喜さん。
競技が終了して、ホテルまでの帰り道。泰喜さんの表情から、肩の荷が落ちたようなスッキリした雰囲気を感じました。
その表情をやっと見れて、私は心が和みました泰喜さん本当にお疲れ様です
そして!その日の晩は、みんなで美味しい焼肉です
「いやぁ~泰喜はよくやったよ!」
「モールディングが割れた状態から、よく一つも工程を飛ばすことなく最後までやり切ったよね!!」
「ほんとに凄かったです!!」
とその時の会話は、やり切った!!その達成感でいっぱいでした
「いやぁ〜。実はモールディングが落ちて割れた時、やめたいなー。やめてもやることないしなー。て思ってたんですよ。でも最後に大事なことは、気持ちでしたね」
と泰喜さんがその時の心情を教えてくれました。
練習でうまくいかなくなった時も、「どうする?もう帰る?」なんて言いながら手を抜かずに練習をしていた泰喜さんらしいなと、思わず笑ってしまいました
しかし、最後は気持ちって言えるのもすごいなぁ。
技能五輪に出場すると決めてから、現場が遅くに終わった日も、お盆休みの日も欠かさず、塗り壁トレーニングを続けてきた泰喜さんが言うと、言葉の重みが違う。
この一言は、心にずっと残り続けています。
この日は不思議なことに誰も結果に関することは言わなかったし、私も気にもなりませんでした。
全員が「やるべきことを全力でやり切った!!」そんな満足感に浸っていたように思いました。
結果ももちろん大事ですが、「やり切る」ということが何より一番大事なのかなーなんて感じました。
お肉も美味しくて、気持ちも晴れやかで、とーーーっても幸せを感じた時間でした。
ちょっと、裏話。
この時の焼肉屋さん、ものすごく美味しかったのです が、これまた不思議な経緯で見つけたお店でした
私が愛知に出発する前日の夜。なんとなくSNSを見ていたら、ずっと食べてみたいと思っていた精肉屋さんの店主の方がこのお店を紹介していました
その精肉屋さんのお肉も卸しており、更には私が5年前から思い続けてきた農家さんのお肉もあると書いてあり、行ってみたい!!!と思ったら、まさか愛知にあるお店!!!
「でも、名古屋駅から車で15分の場所かぁ。会場からは遠いし、今回は行けないな。」と思っていたのですが、
なんと、社長と愛知で合流した日に「最終日の打ち上げの焼肉の店は広報Mが決めろ。手配よろしくね!」と急遽頼まれたのです
ならば!!ここの焼肉が食べたい!!と提案しました。
まさかまさか、念願が叶うなんて
みんなにも「うまいな!」と言ってもらえて…嬉しかったなぁ
そんな偶然もあり、美味しい焼肉をみんなで食べれたのでした。
結果発表は翌日の閉会式です。
私は、結果がどうなるかドキドキな気持ちと、みんなで美味しい焼肉を楽しく食べれた幸福感を感じながら、ゆっくり眠りにつくのでした。
つづく・・・