朝、実家に寄り、MJを回収して蒼翔と一緒に潤の車に乗せた。
そして診療所に早めに来ていてくれた智くんにMJと蒼翔を託してから、すぐその足でタクシーで相葉総合病院に向かった。潤は出勤するからということで診療所で別れた。
朝ごはんを食べながら、どこか不安気な蒼翔になにかしてあげられることはないかと潤と2人で相談をした結果、MJも診療所へ連れて行くことにしたんだ。蒼翔は太陽とは診療所では一緒にいられるけど、太陽がおばあちゃんと一緒に帰ったら1人になってしまう。残された寂しさは計り知れないだろうから、そうしたんだ。どのみちオレも潤も実家に戻るんだから一緒に連れて行った方が蒼翔にとってもMJにとってもいいしな。
診療所に着くなり蒼翔とMJはじゃれあって遊んでいた。
そんな2人の頭を潤は撫でてから動物病院へ向かい、オレはタクシーで相葉総合病院へ向かったというわけだ。
……コンコン……
「雅紀?入るぞ?」
ノックをしても返事がないということは、きっと眠れているんだろうな。
そっとドアを開けて雅紀の元へ歩いていく。
床に落ちたままのスマホ。
それはどれだけ痛みに耐え続けていたのかを物語っていた。
そのスマホを拾って雅紀の枕元に置く。
雅紀の手の中にはオレの桜色のネクタイがしわくちゃになるほど丸めて握りしめられていた。
そして合格祈願にと渡したお守りもその中にあった。
痛かったよな。
頑張ったな。
お前はどれだけ頑張り続ければいいんだろうな。
汗が滲んだ額に張り付いたままの前髪をそっと避けてその額にキスを落とした。
雅紀。
きっと大丈夫だ。
その足でもう一度歩こう。
手を繋いで同じ速さで歩こう。
な。
ぴくぴく。
雅紀の瞼が少し動いた。
起きるかな。
そう思いながら見つめていると、ゆっくり目を開けた雅紀の瞳が左右を見回す。
そしてその視線がオレを捉えると、嬉しそうにそして照れくさそうに雅紀が笑った。
「おぁよ……」
「雅紀。おはよう」
「ふふ。翔ちゃん…だ…翔ちゃんにキスされる夢…見てた……」
「夢じゃねぇよ?」
ギシッと音を立ててベッドに乗ったオレは雅紀の顔の脇に肘をついて顔中にキスの雨を降らせてから、ひし形のかわいい唇にキスを落とした。
雅紀の手がオレの腰と頭をしっかりロックして、深い深いキスに変わるまで時間はかからなかった。