『夜明けのすべて』物事には暗さも明るさも曖昧な光度もあるということ | dramatique

『夜明けのすべて』物事には暗さも明るさも曖昧な光度もあるということ

 

昨日映画館へ行ったら勢いづいたのか、今日も行ってしまいましたにひひ

動物園か映画館かで迷ったのだけど、小春日和と予報されている後日の方が動物園向きかもしれません。

そんなわけで、三宅唱『夜明けのすべて』を鑑賞@OSシネマズ神戸ハーバーランド。


(公式HPより引用)

PMS(月経前症候群)のせいで月に1度イライラを抑えられなくなる藤沢さんは、会社の同僚・山添くんのある行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。転職してきたばかりなのにやる気がなさそうに見える山添くんだったが、そんな彼もまた、パニック障害を抱え生きがいも気力も失っていた。職場の人たちの理解に支えられながら過ごす中で、藤沢さんと山添くんの間には、恋人でも友達でもない同志のような特別な感情が芽生えはじめる。やがて2人は、自分の症状は改善されなくても相手を助けることはできるのではないかと考えるようになる…




映画呑み部の人たちが、『瞳をとじて』と『夜明けのすべて』を肴に集まって語り合うらしい。ほう、そうなのか(そのためだけに上京するなんてことはないけれどにひひ)。かなりこの作品に肯定的な感じである。

恋愛に持っていかなかったところが良かった…みたいな。


そこは私も同感だ。あと、交通事故が起こらなかったのも良かった(これは私の意見。松村北斗が自転車に乗る度にハラハラしながら観ていた^^;)。


ただ、人によっては、「丁寧に描かれているけれど、“優しい映画”」という言い方をしていたりもする。


言われて初めて「ああ、そうか、そんな見方もあるよね」と思った。


つまり、メンタル的にある種の障害を抱えて生きづらい主人公たちに対して、意地悪に接する人物が登場しない、優しい映画だと。そして、無駄なキャラクターも多いと。


確かに意地悪な人は出て来なかった。2人は周囲の理解に支えられて働けている。

でも、実際のところ、メンタルを病んでいる人に対して、気を遣ってしまう人は多いのではないだろうか。


これが混み合った大学病院とかになると、先日、母の車椅子を押す私に、邪険にぶつかって来て平気な感じの方々も見受けられたので、ケースにもよるのだろう。


職場などでの意地悪な人や登場人物の隅々まで丁寧に描くよりも、集中したかったことや原作との兼ね合いで、今回の作風になったのかもしれない(原作は未読)。


上白石萌音演じる藤沢さんは、日頃は余分に気を遣う性格なのだが、PMSでイライラが抑えられなくなると、ついブチギレてしまう(すごく理解できる苛立ちではある)。そのことを謝罪するために、さらに気を遣って肩身を狭めながら生きていたのが、山添くんとやり取りするうちにだんだんほぐれていく。


松村北斗演じる山添くんは、パニック障害の発作を恐れ、電車に乗れなくなってしまい、徒歩でしか行動できない。転職して来た職場で、何となく周囲を軽蔑しているような、ぶっきらぼうな言動だったのが、最初は苦手だった藤沢さんと接するうちに、いつしか職場環境に馴染み、仕事の内容にも前向きになっていく。


こうしたプロセスをきめ細かく描いている。2人とも病気を受け入れ、それなりに生きていく同志になったのだ。孤独ではないことによる気楽な余裕も生まれたというか。


張り詰めれば詰めるほど、メンタルに良くないからね。




監督:三宅唱

原作:瀬尾まいこ

出演:松村北斗、上白石萌音、光石研、渋川清彦、りょう…

2024年/日本/119分


これから王子動物園に行きます。

猫写真はまた今度。

Bon Voyage★