2003年に、「かまどねこの会」(大阪府高槻市)の公開講座に参加して、その感想を記しました。

講演「DV被害者が直面する現実――被害者である娘と暮らして」に参加しました。              
                             メンズセンター 中村 彰

 「かまどねこの会」(大阪府高槻市)の公開講座に参加しました。話をされたのは北海道に住むMさん。講演テーマは「DV被害者が直面する現実――被害者である娘と暮らして」でした。
 私は3年前に「かまどねこの会」例会で、男性問題について話をしたことがあるのですが、そのとき、Mさんが北海道から参加してくださいました。Mさんと「かまどねこの会」との出会いのキッカケを私がつくるかたちになったのですが、「かまどねこの会」世話人から、「あのときのMさんが話をされるので…」とお誘いを受けたのです。
 Mさんは、3年前、娘さんから夫の暴力について告白を受けた日のことから話し始められました。「娘が出産して私の家にいたとき、たまたま私が遠くへ外出しなければならない用事ができたのですが、娘が留守番したくないと言い出して」と。娘さんから初めて聞く話でした。「お父さんはお母さんを殴ったことある?私は結婚当初から夫から暴力を―」。頭のなかが真っ白になったといいます。母親として父親として娘をどう守ればいいのか。その戦いが始まったあの日から3年。DV被害者である娘を持つ母親のあれこれを語ることを決意されたMさんの話に聞き入り、いつしかMさんも、参加者も、目から涙が伝わっていました。
 娘さんは離婚が成立していて、いまは両親も元で暮らしておられる。月々、元夫から養育費が娘さんの銀行口座に振り込まれる。預金通帳を開けば、忘れてしまいたい男の名前が繰り返し印字されている。忘れたいのに、いやなことを繰り返し思い出させる預金通帳。「狭い町で、いまの住まいから10分も歩けば娘の元夫の勤務先が―」とも話されました。
 娘さんの日記。結婚していたころのページには「殴られて当然だよね」と記されています。夫が日記を読むので、そう書かざるをえなかった娘を思うとつらいと話されました。
 「いま、娘に似た3歳の孫の男の子がかわいい。将来、娘の元夫に顔つきが似てきたとき、孫を愛せるだろうか。孫が少し乱暴な言動をすれば、これは暴力の芽ではないか。この子も暴力をふる男になってしまうのだろうか」と考えこんでしまうMさん。
 どの男を見ても「やさしそうに見えても、この男も暴力をふるうのでは」と考えてしまう。男たちが、ジェンダーの鎖を断ち切って、暴力をふるわないようになってほしいと願っているMさん。
 3年前、私を訪ねてこられたときも、「娘の夫に変わってほしい」というあつい気持ちを語られていました。「娘は離婚したけれど、元夫が他の女性と結婚するかもしれない。その女性に暴力を振るだろう。新たな犠牲者が出ないようにするためには、顔も見たくない憎い男だけれど、娘の元夫も、暴力をふるわない男に変わってほしい」と。
 もしお話をしていただけるチャンスがあるのなら、Mさんの夫さんに、父親としての思いや願いなど心境をうかがえたらと思いました。父親としての思いを共有することから、男たちが、ドメスティック・バイオレンス(DV)をしっかり受けとめる機会にできないかと考えています。
 もうひとりの語り手のNさんは、夫の暴力から逃げたとき、友人から「あんたが悪いのではない。暴力はコンプレックスの裏返し、悪いのは殴った男。DVは一生治らない」と言葉かけをもらったことで、即座に弁護士を立て一度も戻ることなく現在に至っている」と語り、DV被害者である自分の戦いの日々を語られました。離婚調停で繰り返し夫の暴力を訴えているが、夫は「自分はわるくない」とまったく取り合わない。「離婚訴訟に持ちこみたい」と話されました。
(かまどねこの会公開講座 2003.9.26 高槻市立総合市民交流センターにて開催)