和は覚えてるか分かんないけど、おいらは覚えてる。
あの春に、おいらは和をおいらのもんにした。
本当は、寂しがり屋で怖がりなのに、何故か人懐っこいワンコみたいな可愛い後輩だった。
もともと色気はあったけど、デビューして色んな人やものの刺激を受けると、どんどん綺麗になって、匂い立つような色気が出てきた。
それと同時に、和を手に入れようとする人間がわんさか現れた。
「気をつけろよ」
おいらも、翔ちゃんも相葉ちゃんも松潤も、みんながしつこく注意しろって和に言ってたけど、自覚のないアイツは誘われるまま夜の街へ出かけてた。
ある日、和が洒落た個室居酒屋で、若手俳優に腰を抱かれて部屋に連れ込まれそうになってる所に遭遇して、頭にカーッと血が上った。
オイラのもんに何してんだ?
頭に浮かんだのはそれだけ。
気づいたら自分のツレを放って、和をおいらの腕の中に取り返してて。
若手俳優はおいらの剣幕にビビって、しどろもどろに何か言いながら帰って行った。
そのまま和を家まで送って、その日から和を送るようになった。
そのことは他の3人にもすぐにバレて、和を守るための方法を考えた。
とにかく1人で飲みに行かせない。
信頼できる外部の人を増やす。
終わりの遅い仕事は、誰かが家まで送る。
徹底してガードしてたおかげで、無理やり連れ込まれそうになることは無くなった。
と、思ってた。
あの日。
テレビ局のトイレで聞いちまった会話。
和のことを、色っぽいよなって。
抱きてえって。
酔わせてなんとか出来ないかなぁなんて。
冗談なのか本気なのか分かんねぇテンションで、盛り上がる若いヤツらの声を聞いた。
そん時思った。
『和也はおいらのもんだ。誰にもやらねぇ』
その日、和を家まで送って、そのままおいらのもんにした。
和がおいらを好きなのは知ってた。
いつだって、優しい眼差しでおいらを見ててくれたから。
だから頑張れたんだ。
だから、ここまでやってこれたんだ。
手に入れた和は、色っぽいのに可愛くて。
おいらはますます和を好きになった。
さり気ない気遣いも、2人だと素直に甘えてくるのも、おいらのどストライクで、すぐに一緒に住みたくなって。
必死で事務所に掛け合って、一緒に住めるようになって、おいらは夢心地で生活してる。
意外とマメに家のこともしてくれて、なんかよく出来た嫁さんみたいな和。
おいら幸せだなって思ってたら、最近は主婦の不倫が流行ってるって聞いて、急に不安になった。
和は主婦じゃないけど、おいらの世話しててイライラしてるんじゃないかとか、最近また、先輩や後輩と出かけるようになった和に、色んな人からのアプローチがあることとか。
全部が不安材料になって、どうしたら和をおいらに夢中にさせておけるのかとか。
そんなことを連日メンバーに相談するようになってた。
それが、和を1番危険な目に合わせるとは思いもしないで、今日もおいらは松潤の家で酔いつぶれて、空が開け始めた頃に2人の家の玄関を開けた。