2008年10月27日(mon) | 中村江里子過去ブログ

2008年10月27日(mon)

みなさま、こんにちは。日本はいい季節ですよねえ。
先日も日本に数年間、住んでいたフランスの方と話をしていて、秋の日本の話題で盛りあがってしまいました。
彼は、本当に日本が大好きで、パリに戻ってきてから、日本恋しさにちょっと落ち込んでしまったそう。
私も今年は秋の日本を堪能できるので楽しみにしています。

さて、今日はいただいたファンメールにお答えをしようと思っています。
以前、盗難にあったことはご報告をしましたが、詳しいことは気持ちが落ち着いたら書きますね・・・と言っておきながら、随分と時間が経ってしまいました。
正直、今こうしてこの件について書き始めたら、胃がきゅーっと痛くなって、心臓がドキドキしています。
ファンの方から、まだ報告がないので心配をしていますというメールや、心配をしていたのに、ホームページではなく、まったく別の雑誌で盗難について書いていて・・・・どういうことですか?というお叱りのメールもいただきました。
今日は、改めて詳細を書き綴りたいと思います。


盗難にあったのは6月の下旬です。
というより、およそ一ヶ月半にわたって、盗難にあっていたほうがいいかもしれません。
娘を幼稚園に迎えに行ったあと、毎日、公園に行きます。
そこでは、同じ幼稚園のママたちや、ほかの幼稚園の方、ヌヌたちとお話をしたり、挨拶をしたりして、なんとなく顔見知りになります。
ちなみにヌヌというのは正式にはヌーリスと言って、乳母とか保母という意味。ですからヌヌというのは幼児語で「ばあや」というような意味になります。
といっても、ヌヌの多くは結構、若いのですが・・。

ある日、ベンチで隣りあわせになったヌヌと話をしました。
娘と同い年の女の子と、そのお兄ちゃんのヌヌで、夕方4時から8時まで子供たちの面倒を見ているということでした。何度か公園で顔を合わせ、話をしていたのですが、ある日、彼女から「マダム、私は昼間と夜は時間がありますから、よかったらベビーシッターしますよ」と声をかけられました。とても感じのいい人でしたし、公園のママたちやほかのヌヌたちとも親しいようでしたし、他の家庭にきちんとヌヌとして雇用されているというのは、私にとって安心材料でした。

実はこの頃、私自身が体調を崩していて、ちょっとしんどかったんですね。
しかも、以前お願いをしていたベビーシッターさんが来られなくなってしまい、いざというときに手伝ってもらえる人がいなくなってしまったのです。
アパルトマンの管理人さんやお隣の管理人さんたちが、子供たちを可愛がってくれているので、お願いをしたりしていましたが、毎回、毎回というわけにはいきません。
ちょっとトライをしてみようかな?
こちらは夫婦で夜の外出をしなければならないことも多いので、初回、夜、我が家にきてもらいました。

それから、昼間、私が病院に行ったり、息子を置いて出かけなければならないときなど1時間から2時間くらいの短時間ですが、来てもらうようになりました。
何回目かのある日・・・この日、私が支払う分である数か月分の家賃や生活費を銀行に入金をしようと思い、出かけるときに鍵のかかる引き出しに、とりあえずしまっておいたのです。
結局、その日は慌しく、銀行にいけないまま数日、経ってしまいました。
いざ、行こうとしたら・・・お金が見つからないのです。
あれ?引き出しに入れたはずなのに・・・。
いれたつもりで落としたのかな?でも、家中どこにもありません。
バックに入れて出かけて、落としたのかしら?

とにかく忽然と消えたのです。
それから、久しぶりにつけようと思ったジュエリーが見つからず・・。
あっ、もしかしたら、日本にもって行って、そのまま置いてきてしまったのかも。
今度行ったときに確認しよう。

自分でも、なんて思い込みの激しい人間なんだろうと思いました。
これまでパリに住んでいて、こんなことは一度もなかったのに、急に発生したのです。
一体、生活の中で何が変わったのか・・・このベビーシッターが家に出入りするようになったこと・・・。
でも、お金がなくなったとされる日は、彼が家で仕事をしていたのです。
家人がいるときに盗みをするなんて・・・という思い込みもありました。
かなりあとになって納得したのは、この日、彼は30分ほど外出していたのです。
その隙に鍵のかかる引き出しの鍵を見つけ、現金だけを取っていったんですね。

何だかすっきりしないままに、何となく彼女にベビーシッターをお願いしてしまっていました。
6月のある日、私は家で仕事をしたかったので彼女にきてもらうことにしました。
私が家にいるんだから、物が無くなるわけはありません。

彼女が息子を連れて外出をしました。
その間に、彼女に支払うお金を準備しようと玄関の椅子の上においてあったバックからお財布を取り出し、あけてみると・・・・現金がないのです。
ほんの少し残してあって、とにかく枚数が減っていたのです。
確実にわかりました。彼女だったのです。

外出している彼に電話をし、警察に届けることにしました。
しかし、その電話の最中に彼女が帰ってきました。
ここからの出来事はいまでも詳細に覚えていて、実況中継のように書けるのですが・・・簡単に説明をしますね。

彼女が家に入ってきたとき、私は震えていました。
彼が、私との電話の後、すぐに管理人さんに電話を入れて、事情を説明してくれたので、管理人さんがすぐに荷物を届けるふりをして家にきてくれました。私にとってはお金よりも守るべきは息子。まずは息子を管理人さんに託し・・・
「今日、あなたに支払いをしたかったんだけど、今、お財布をあけたらお金が無くなっているの」
「あ~~いいですよ、気にしないで。いつものように、公園で会ったときでいいですよ。」
「違うの。昨日の夜に入れたお金が消えたの。今日、私はずっと息子と二人で家にいたの。この家に入ってきたのはあなただけなの」
「私は取っていませんよ・・・」

取り乱すこともなく、怖いくらいに彼女は冷静で、何だか私はあらぬ疑いをかけてしまっているのでは?と思ったほどです。
彼女のバックの中にもジーンズのポケットにも何も入っていませんでした。
彼女のまえで警察に電話をかけました。
ところが・・・半分笑いながら警察の人は
「マダム、私たちはそちらにいけませんよ。あなたから被害届けを出しにきてください」
「あの、盗んだ人が横にいるんですよ」

初めてフランスで警察に電話をしたので、刃物でも突きつけられていないかぎり警察は来てくれないんだと納得するしかありませんでした。
結局、その後の様々なやり取りの中で、彼女はうまく逃げてしまい・・・その日以来、だれも姿をみていません。

悔しいとか情けないとか、怒りとか・・・様々な感情で一杯でした。
自分を責める気持ちが一番大きかったです。
なぜなら・・・100%信頼をしていたわけではなく、最初からなんとなく心の中にもやもやがあったのに、それに気づかないふりをしていた自分が情けなく、多分、私自身がちょっと弱いときだったから、こういうことになったんだと思い、でも、子供たちに対して何かあったわけではないのだから、もういいじゃない・・という気持ちもあり、眠れない夜が続きました。

眠れないままにパソコンに向かい、ホームページのダイアリーにこの日にあったこと、感じたこと、感情のままに書きました。
書くことで気持ちがすこしはおさまるだろうし、ただただ、聞いてもらいたいと思ったのです。
相当長いダイアリーになってしまいました。

でもあらためて読み返したら、あまりにも感情のままに書いてしまっていたので、生々しく、これ掲載をしていいのかな?と思ったほどです。
家族や事務所のスタッフに読んでもらったのですが、みんなの意見は一致。
もう少し、気持ちが落ち着いてから冷静に書いたほうがいいということになったのです。

そうそう、ベビーシッターですが、翌日、私たちは彼女を雇用していたファミリーに連絡をいれました。
彼らを含め、現金や物がチョコチョコ無くなっていた人たちがまわりに沢山いて、それぞれが被害届けを出しに行きました。
我が家は彼が行ってくれましたが、なんと、このベビーシッターは私たちの住んでる地区では有名なプロの窃盗犯だったのです。
被害届の数は数知れず・・・だそうです。
担当の警察官の人もいるのですから、大変なことです。
捜査中なので詳細は話せないけれども、すごいよということでした。

この警察官の方が言うには、私が警察に電話を入れたとき、普通は来てくれるんですって。
たまたま、運悪く、仕事をしたくない警察官に当たってしまったのでしょうと。
でも、もし、このときに警察の人が来てくれていたら・・・担当の警察官が残念がっていました。
現行犯でないと逮捕が出来ないので・・・。

プロの彼女にしてみたら、私のような人間は簡単にだませたのでしょう。
その後の色々なものが無くなっていることに気づきました。
とってもいやな思いをしましたが、今回はとても勉強になりました。
ひとつ問題は、今でも好意で「ベビーシッターしますよ」と言ってくださる方や、紹介をしてくださる方がいるのですが、怖くてお願いが出来なくなったこと。
人を信じられなくなることって、本当にさびしいことです。

さて、このダイアリーではなく、他のところに盗難のことが掲載されていたというのは、私がフジテレビを退社したときから書いている雑誌です。
ごく一部の企業のある部署に配布されるもので、書店では購入ができないものです。

発行部数も当然、少ないですし、かなり専門的なことも書かれています。
各分野のエキスパートの方たちが原稿を書いていらっしゃるので、私のコラムなどは読まずに飛ばされていることのほうが多いかもしれません。

ダイアリーに書こうと思っていたのですが、掲載をしないことになり・・・何だか、私の中で「それでも誰かに今の胸のうちを聞いてもらいたい!!」という思いが出てしまい、盗難に会った日の数日後が原稿の締め切りだったこの雑誌に書きました。

ところが、それが発売になるや、こんなことがあるんだあと驚いたのですが、週刊誌の方から編集部に問い合わせがあったのです。
この盗難の件を翌週、発売の週刊誌で掲載したいと。
週刊誌の方が目にするはずのない雑誌なので、一体、どうやって?と不思議でした。
出来れば掲載をしていただきたくなかったのですが、それは無理でした。
結果、大きな見出しとともに出てしまい、多くの方から心配の連絡が入り・・・

そして、ファンのかたがたには心配と同時に嫌な思いをさせてしまうことになり、すみませんでした。
へんな言い方ですが、怒るほどに心配をしていただけるなんて・・・と感謝の気持ちで一杯です。今日のこのダイアリーで状況をわかっていただけましたでしょうか?

メトロなどではスリに注意を払っているのに、わざわざ自分から泥棒を家に招きいれていたなんて・・・
これからは、他の人を信用しないのではなく、何か少しでも納得のいかないことがあれば、ごまかさずに対応をしようと思います。

でも、最後に神様がいれば本当に感謝しております。家族に危害がなく守ってくれたことを・・・。