『柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺』と時勢の俳句を読みたくなる今日この頃。夏の大会が終わり、ほとんどのクラブの2年生は就職活動や実習が忙しくなり、クラブ活動には顔を出さない。



毎週月・水・金のソフトテニスサークルは、新谷さんが新キャプテンとなり、先輩たちは誰も出てこなくなったが、変わりに1名、幼児教育学科の同じ1年生『与座さん』が入部した。高校時代までソフトテニス部だったそうで、短大ではやめておこうと思っていたそうだが、同じ幼児教育学科の彩乃ちゃんのからの誘いで入部することにしたそうだ。


男性3人、女性2人からたまに3人。ウォーミングアップはなんとかやれても、試合形式の練習はというと、なかなか難しい。思いを寄せる桃ちゃんは見かけることすらなくなった。



毎週火・木・土に行われるバスケットボールサークルは男子は弓矢キャプテン、女子は新江キャプテンの元、人数は減ったが活気があった。ちなみに全男子キャプテンの富士さんと村亀先輩は、1年で介護福祉士の資格がとれるコースへの編入が決まっていた。たまに橋本先輩も顔を出してくれて、練習試合も楽しくやれていた。

「ねぇ、正木くん。最近、照葉くんと横地さん怪しくない?」

新江が興味津々と俺に声をかけてきた。なんせ新江も照葉に興味津々で話しかけたいのが目に見えていた。新江のようなパンダみたいな顔の女性は照葉の好みではないと思うが、照葉直樹は誰にでも優しく、面白く、友達思いで、顔は・・・俺と同じくらい男前でナイスガイなのだ。

「どうだろうねぇ。そもそも横地には熊本に彼氏がいるんでしょ?」

「それが、最近喧嘩が多いらしくて、照葉にくんに相談してるみたい。」

「直樹がいいって女の子、同じAクラスにも、うちのBクラスにも、いっぱいいるよ。でも、心に決めている人がいるみたいだよ。」

それが新江でないことは明らかだが、なんかすねて向こうへいってしまった。


「それじゃあ、今から試合をします。」

弓矢キャプテンがチーム分けを行う。直樹と横地がAチーム、俺と新江がBチームで試合開始。試合早々、スラムダンクでいう流川と沢村みたいな、ガチガチのマンマークでやりやっている。

横地がレイアップシュートを決めれば、新江は3Pシュートを決めてパンダ顔。パンダさん、頑張るなあ~って見ていた。多分、照葉に対する嫉妬なんだろうけどね。

直樹は相変わらず、スマートに得点を重ねるが、ニコチンパワーが落ちてくると動きが悪くなると本人は言っていた。陸上ホッケ部でバリバリやっていたので、運動神経は抜群である。(^^)


場所は変わり、すみれ荘での飲み会。

「直樹、遊びに来たよ。」

「おう、正木。今日はご苦労様。」

「藤吉も来てたんや。今日の島村の飯なんやった?」

「今日は食べないから、正ちゃん食べていいよ。」

藤吉と同じ下宿に住んでいるおいらは、あまり下宿で顔を合わせる事はなく、直樹の部屋で顔を合わせることが多かった。学校の休みは実家の唐津に帰ったり、逆に藤吉のおやじさんやお袋さんが下宿島村に来ることが多かった。

「正木さん、唐津に来ることがあったら遊びに来てね。」

と藤吉のお母さんが声をかけてくれる。演歌歌手の由紀さおりのような、とても美人のお母さんだ。お父さんの春吉さんは、無骨な職人という感じで、唐津でお寿司屋さんを営んでいる。

「ありがとうございます。その時はお世話になります。」

と頭を下げるのだった。(^^)ρ(^^)ノ


直樹の原付でビールを買い出し、宅飲みが始まった。僕たちの宅飲みは、直樹の弾き語りを聴きながら飲むのがお決まりだ。余計な話しはせず、直樹が気を遣って、歌詞を変えて笑いを取りに来る。テレビもなんとなくつけながら、ビールがいい感じで回ってきて、ふとあの疑問を直樹にぶつけたくなった。

「直樹、新江が横地と直樹が怪しいと聴いてくるんだけど、どうなの?」

藤吉がすかさず、

「直樹、また女の子泣かせるのかよ。」

と突っ込み。直樹が慣れたように

「何言ってんの。横地には彼氏がいるから。」

「なんか横地、彼氏と喧嘩よくするのを直樹に相談するって新江が言ってたよ。」

「バカタレ新江が、へんなことばかり言って。」

「でも、直樹は彼女いないんでしょ。作らないの?」

「いやいや、正木の方がモテるでしょ。彼女作らないの?」

「作らないのじゃなく、出来ないの。(^^)」

そんな会話を聞きつけてか、隣の部屋から貴之が乗り込んできた。

「皆さん、なんで誘わないのかな?」

「いやぁ、貴、寝てたから悪いと起こさなかったよ。」

貴之は寝起きが悪いので、同じクラスとして何度も背中をどつかれている。直樹の横地と怪しい事件の真相は闇のまま、この日の飲み会は終わった。

後日、直樹本人から聞いた話だが、横地の2人で飲みに行こうアピールが激しく、顔も可愛かったので心が揺らぐ事はあったが、彼氏のいる彼女とは行けないと断っていたらしい。直樹らしい男としての優しさを改めて感じたのだった。......続く