「3秒前、2秒前、1秒前、BOSS誕生日おめでとう!」

10月9日の夜23時半にちいちゃんと待ち合わせ。50歳の誕生日を真っ先に祝って欲しくて、ちいちゃんにお願いをした。日本ハムの新庄監督が好きで、『BIG BOSSって呼んで!』と言ってから、ちいちゃんは「BOSS!」とか「BOSSは?」など、周りの人が聞いたらどう思うか気にしながらも、そう声をかけてくれる。


翌日と言ってももう当日になったが、10月10日はちいちゃんの仕事が忙しいのでデートは出来なかった。この日は朝から昼過ぎまでの半日だけ仕事で、夜はイルファーロ久留米に宿を取っていた。なんか50歳の誕生日の夜を一人で過ごすのが、20歳の誕生日を下宿島村で寂しく過ごしたあの日を思い出すのが嫌で、せめて楽しく飲んで過ごしたかったのだ。(^o^)


20歳になったら選挙権が貰え、大人の仲間入りって気はしたが、このまま一生彼女も出来ずに一人で寂しい余生を過ごすのかと思ったものだ。

LINEで「誕生日おめでとう。50歳になったね」と永田くんから連絡が来た。3年前に仙台にレンタカーを借りて旅行した時に、精肉関係の仕事で仙台に行っていた永田くんがステーキ屋を始めたと風のうわさで聞いていた。驚かすつもりで着いてからお店に電話して、予約して会いに行った。もちろん、内緒でね。(*^^*)


宮城県富谷市で『ステーキハウス らいおんの子』を開いていた永田くん。最初の予約では女性の方だったので内緒にしていたが、場所がわからず2回目の電話をすると、ちょっと不機嫌な男性が電話に出た。一通り電話で話していたら、多分新太ではないかと思えてきて、

「実は、佐賀の短大の友人がステーキハウスで働いていると聞いて、ぜひ来たいと思いまして……」

「もしかして、正木くん? うわぁ、久しぶりやね。」

「やっぱり新太やったか。今からご飯食べに来るからね。」

「ありがとう。待ってるね。」


久しぶりに会った新太は、少し髪が少なくなりおっちゃんって感じだった。でも学生時代の面影がなんとなくあり、間違いなく新太だった。

「正木ちゃん、何年ぶり?短大卒業してからだから25年ぶりくらいかな?」

「そうそう。貴之の結婚式にも新太来てなかったからね。」

「ちょうど出張が重なってね。」

「あ、これ新太、お土産(^^)」

「ありがとう。博多の明太子なんて久しぶりやね。」

「正木くん、今日は俺のおごりだからステーキ食べていってね!!」

「2回目はちゃんとお金もらうけどね。」


新太はステーキを焼きながら、この肉はこうでああでと説明してくれた。精肉の卸売の仕事をしていたので、お肉の見る目は自信満々だった。

話は短大時代の話になり、
「そういけば、あの娘はどうなった?」「正木くんと同じアパートの藤吉はどうしてる?」
って昔話に花を咲かせた。

もう仙台に行ったのも4年前だが、未だに思い出したようにLineをくれた。


そしてもう一人、短大時代からの親友『田島くん』から、“50周年おめでとう!元気ですか?もう1年会ってないですね!忘年会はしましょう!12月3日に神戸で中丸くんと飲む予定です。”とメールが来た。

『中丸くん』は小学校5年生からの神戸の親友で、4年間は福岡の東亜大学にいたから九州に対する理解もかなりのものだ。学校は違ったが、一緒に筑紫女子短大の学園祭や平和台球場の最終戦を見に行って、屋台に飲みにも行ったりと、いつしか田島くんとの中丸くんも仲良くなってしまった。


まあ、中丸君は誕生日だからとLineとかで連絡をしてくるタイプではないので放っといて、50歳の誕生日を迎え、沖縄の三線でバースデーを祝ってくれるとわざわざ来た『沖縄料理 絆』で泡盛を飲みながら、田島くんとの思い出を1つ思い出していた。

それは、短大時代から5年付き合った彼女に振られ、もう毎日をどう過ごせばいいかわからない日々を過ごしていた時に、田島くんがとても大好きな『THE ALFEE』の広島市民会館でのコンサートについていった時の話だ。


その日は新幹線で広島に行って、コンサートが終わったその足で福岡まで帰るハードな1日だった。でも彼女に振られて眠れない僕は、考える暇がないくらい忙しい日々が欲しかった。

「正ちゃん、またいい人が現れるよ。」

「そうだといいよね。」

僕は新幹線から見える景色を見ながら、流れる涙を隠そうともしなかった。

“もっとこんな自分になっていたら別れずに済んだやろ?”
“別れた事を後悔するくらい成長してやる!”
“でも、なんで俺ってこんなに短気なんやろ?”

広島に着くまではずっと自己嫌悪で、何もかもが嫌で、戻らない日々を後悔し続けた。田島くんはそんな僕を励まし、話を聞いてくれた。親友って有りがたいなって思った。


「正ちゃん、広島に着いたらお好み焼きでも食べようか。広島風お好み焼きも有名だからね。」

「最近あんまり食べてなかったから、食べたいね。」

広島の街に早めに着いた僕たちは、お好み焼きを食べたり、市街地を観光しながら歩いた。普段見ない景色に心が休まる気がした。 

そしてコンサート会場である、広島市民会館に着いた。チケットはないので、コンサート会場で余ったチケットを売っている人を探した。定価よりも高くついたが、チケットはなんとか手に入った。田島くんは前のいい席を事前に抑えていたので、コンサートが終わったら公衆電話ボックスのこの場所で待ち合わせることを確認し、コンサート会場に入った。(*^^*)


アルフィーのライブが始まったが、立見席であんまり見えなかった。“星空のディスタンス”や“メリーアン”、“サファイアの瞳”など、知っている歌もあれば、ロックのようなフォークソングのような曲、3人の掛合のようなトークに引き込まれた。そして、映画『タッチ3』の主題歌、“君が通り過ぎたあとに”が聞こえてきた。

君のあどけない横顔 
遠く感じる時がある 
そっと優しく口づけても 
悲しみが降りつもる 

だけど涙があふれても 
いつも僕はそばにいるから 
もしも道に迷う夜なら 
道標はこの愛 


君が通り過ぎたあとに 
何が残るだろう 
たとえ今 言えなくても 
きっといつかは……

せつない夜を越えて 
君にめぐり逢う 
それだけに生きてきた 
哀しいほどに好きと 
囁いてみたい 
Please Don't pass me by


僕は泡盛を飲みながら、その時涙って頬を流れ落ちるんだなって思った事を思い出した。その流れ落ちた涙の温かさが忘れられなかった。亡き弟の夢を引き継ぎ、南ちゃんを甲子園に連れて行く夢を叶える。そんなタッチの名場面を思い浮かべながら泣いたのかは覚えていないが、コンサートを終えて帰りの新幹線から見える車窓の風景を見ながら、これから前向きな気持ちで頑張るぞって思ったのを想い出した。


残念ながら店長が体調不良で、“バースデー三線”は聴けなかったが、直樹や貴とよく飲んだ『麗しき古里』を飲んで、また昔の思い出を1つ思い出せた。あと何年生きていくのかわからないが、人生50年自分の為に生きたから、残りの人生は誰かを幸せにする事に生きたいと思う。

そういえば、来月は田島くんの誕生日だなあ。同じように誕生日に“人生50周年おめでとう。早く忘年会しようね!”ってメールでも打とうかな。……終わり