裏下り:強行採決の日の民主党政権「裏下り」容認ロジック | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

裏下り:強行採決の日の民主党政権「裏下り」容認ロジック

秘書です。
あの「転倒事件」のあった衆院内閣委員会の議事録が衆議院のホームページにアップされています。
いろんな問題点があいまいのまま、強行採決されたことがよくおわかりいただけると思います。
この日提出された公明党の修正案に対して、民主党は1回も質問することなく、強行採決。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm
多数党になったとたんに手のひらを返して少数党を踏みにじるこの精神構造、あるいはメカニズム、どなたかしっかり分析をお願いします。

さて、この議事録にはたくさんの論点がありますが、一つだけ、注目の部分をとりあげましょう。

以下の部分は、鳩山民主党政権の「裏下り」容認宣言だと思います。ちょっと長くなりますが引用いたします。正副官房長官の発言にご注目ください。




○平井委員 ・・・きょう、せっかく官房長官も来ていただいておりますし、前回のこともありますので、実はここに日本郵政の坂さん、副社長に来ていただいて、そして損保協会でしたか、それの裏下りの話、後任人事の話等々させていただいたんです。まず、これは田村政務官です、これも何度も何度も答弁させて申しわけないんですけれども、坂さんが、牧野さんがよいのではないかと推薦したという説明、つまり、ここはOBのあっせんがあったという認識で間違いないんですよね。

○田村大臣政務官 お答えいたします。

 細かい経緯もまた必要があれば後で繰り返させていただきますけれども、あっせんがあったということは申し上げておりません。金融庁として、協会に確認をしましたところ、前任者に当たる坂さんから牧野さんを紹介されたというふうに金融庁としては確認をしております

○平井委員 紹介ね。つまり、今の国家公務員法上のあっせんというのを皆さん御存じだと思う。これは、OBの適用という話ではないんですけれども。要するに、国家公務員法上のあっせんというのは情報提供、要するにこの人がいいのではないかと名前を挙げることは、当然これはあっせんなんですね。今の、現行法の、国家公務員法上ですよ。

・・・(略)・・・

○平井委員 つまり、紹介するというのは国家公務員法上のやはりあっせんなんですね。そうなんですよ。ですから、紹介ということは要するにあっせんをしたということで、あっせんという言葉は何か嫌なんですか。そんなことないですよね。まあ、まあこの話はいいです、そうしたら。

 それで、きょう松井副長官も来られておりますのでお聞きしたいんですが、二月八日の予算委員会で、「役所のあっせんにかわってOBがかわりにあっせんをしているようなケースであれば、それは我々がこれからとる措置に対する脱法的な措置」と答弁されていますが、今回のケースは、さっき、ずっと聞いていると、どう考えても、OBみずからが、OBによってあっせんしましたというふうに事実を認めていて、いわば、二月八日の予算委員会の松井副長官の答弁からいうと、これは明らかに脱法的な措置なんですよね。脱法的ですから、脱法とは言わないのかもわかりませんが。

 これで脱法的な措置がなされたことが既に判明していて、このことに対してどのように対処をされるのか、お聞きしたいと思います。

○松井内閣官房副長官 御答弁申し上げます。

 私、予算委員会でこの御質問をいただきまして、もともと、委員も御承知のように、これは国家公務員制度改革基本法は、自民党さんとも公明党さんとも修正合意をして、私もそのときの実務担当者の一人でしたが、再就職あっせんについての規定はなかったですね。自民党さん、そこはのられなかったということはまず申し上げたいと思います。

 我々は、しかし、再就職のあっせんというものは禁止しよう。したがって、当時、渡辺喜美担当大臣とも随分議論をさせていただきましたが、渡辺喜美担当大臣は、官民人材交流センター、先ほどから下品という言葉が出ていましたが、僕らが下品な言葉で言うと天下りバンク、天下りバンクによるあっせんはいいんだというふうにおっしゃっていました。しかし、我々は、その天下りバンク、官民人材交流センターによるあっせんもやめようということで、それを今、現実に、新政権になってから、官庁によるあっせんというのはやめようということで、これはとめています。

 とめているんですが、現実に私が予算委員会で答弁したのは、例えば、役所はあっせんしなくても、役所のOBが役所と意を通じて、事実上、次官や官房長があっせんしなくても、次官OBの人とかどこかの局長OBの人があっせんしたんなら、これはもう、全く役所のあっせんはなくなったとしても、別の代理人がいてあっせんしているようなものじゃないか。私は、こういうことが行われているとすれば、これはやはり脱法的だと思いますね。

 現に、先ほどからの御質問を伺っておりまして、では、官庁OBの一民間人がだれかを紹介したから、今の国家公務員法上これが官庁によるあっせんになるのかというと、恐らくならないという解釈だと思うんです

 我々は、とにかく官庁によるあっせんはやめようということで、そこはとめたんですが、二つ問題があります。それは、過去にやめた人はずっと残っているわけですね。これをどうするか。これはなかなか手を出しにくい問題です。もう一つあるのは、官庁によるあっせんはしなくても、だれかがそれを、官庁の意を通じて別の代理人があっせんするようなことがあってはいけないだろうということは、我々、方針として明確にして、私自身は明確に答弁したつもりであります

 さて、御指摘の話が、先ほど来出ている話は、恐らく、今の牧野さんを損保協会の副会長にされたというのが、これが脱法的なあっせんに当たるかどうかということについて、私も二月の予算委員会で答弁しましたので、内閣府の組織にも要請をしまして調査をしていただきました。していただきまして、田村政務官からも御答弁があったところだと思いますけれども、少なくとも金融庁、あるいは財務省も含めて、あっせんをした事実はない、これは確認をいたしました

 では、当該、牧野さんの前任者の坂さん、これは官房副長官補で、たしか、私の記憶では、委員とも官邸周りで一緒の仕事をされた方だと思いますけれども、坂さんが個人として牧野さんを紹介されたということはあったというふうに私も聞きました。これが本当の脱法的なあっせん、要するに、金融庁なり財務省が、自分たちがあっせんできないから、坂さんに頼んであっせんをさせているということに当たるのかどうかというところまで私は確証を得られていません

 しかし、これは何代か、ずっと損保協会のOB、続いていますね。過去のことは財務省もはっきり言いませんけれども、私は、ある段階まではあっせんがあったんだろうと、これは個人的認識でありますが、そう理解しています。ところが、ある段階から、財務省も金融庁も、あっせんはやっていない。しかし、あっせんをやっていない後に、官庁OBの人、すなわち財務省のOBだった方々が、どうも、個人的に、自分の後任としてだれがいいということを紹介なりし、推薦されているというような心証を私は持っています

 このことが、組織と意を通じて、脱法的に、組織にかわってOBが、連なりのような中で事実上のあっせん行為を行っているのかどうかというところまで私はまだ確証を得ていませんが、いずれにしても、今後、組織によるあっせんを我々が幾ら禁止したとしても、やめた方々がずっと連携をとって、後輩をあっせんし続けるようなことがあってはいけないと思いますので、そこは厳重に、この法案でも提起させていただいているような、第三者的な組織を置いてしっかりと監視をして、そして、今の法律上、やめられた民間人がどなたかを御紹介されたということを必ずしも禁ずることができない状況になっていますが、そこをどう監視し、国民的にそういうことを、疑念を抱かせるようなことをなくしていくかというのは今後の課題だと思っております

○平井委員 これは順番が逆だと思うんですね。

 要するに、法案を通していただいたら監視委員会で調査をするということですけれども、本当は、前回の四月二十八日の私の質問に対して、仙谷大臣も、要するに、少々問題があるなと疑う事案だというふうに御答弁いただきました。つまり、さっきの松井さんの話もそうなんですけれども、やはり何かすっきりしないというのは同じ感覚だと思うんですよ。

 ここで、私は思うんですけれども、これは、内閣総理大臣は立入検査なども含む調査権限が本当はあるんですね。この調査権限というのを全く行使していない、それと、監視委員会というものも実は全然機能させていない。

 ここは官房長官にお聞きしたいんですけれども、現行法では、こういったケースにおいて、総理が立入検査なども含む調査権限を行使することができるんですよ。これは二月の松井副長官の答弁でも、この問題が脱法的な行為というような、お話にも表現もあるんですから、本来はこれはやはり権限を行使すべきではなかったかと思うんですが、官房長官、いかにお考えですか。

○平野国務大臣 行使できるという考え方は、確かに先生の御指摘のとおりでございます。

 しかし、今松井副長官からも御説明ありましたが、同一府省庁において何代にもわたって特定の団体等のポストに再就職している事態について解明すべく、総務省において、所管関係、国からの金銭交付及び退職事由等も含めて、あらゆる調査を今実施いたしているところでございます。

 また、加えて、これは多分、定義が定かではありませんが、裏下りという、表現的に使われていることも含められるのかもわかりませんが、水面下で各府省庁職員による情報提供の疑い等々のある再就職事案につきましては、やはり徹底的に厳正に対処すべくやるべきであるという考え方のもとにおります。しかし、今の、現行の状態では一定の限界もあることも事実でありますが、これは、良識に従う部分と、このような状況をやはり国民にさらすことによって、公開することによって是正をする、加えて、我々としても指導、是正をしていく、こういうことで進めていかなければならないと考えているところであります

・・・(以下、略)・・・



まとめてみましょう。

まず、松井官房副長官は、以下のように裏下りの脱法的措置についていう。


「官庁によるあっせんはしなくても、だれかがそれを、官庁の意を通じて別の代理人があっせんするようなことがあってはいけないだろうということは、我々、方針として明確にして、私自身は明確に答弁したつもりであります」

明確に答弁したというのなら、損保協会副会長人事はどうなのか。松井官房副長官は以下のようにいう。

「坂さんが個人として牧野さんを紹介されたということはあったというふうに私も聞きました。これが本当の脱法的なあっせん、要するに、金融庁なり財務省が、自分たちがあっせんできないから、坂さんに頼んであっせんをさせているということに当たるのかどうかというところまで私は確証を得られていません」

確証を得られていないなら、調査すればいいではないか?でも調査しないで強行採決。
そして、ここから、指定的固定的ポストへの「裏下り」容認論が展開される。


「これは何代か、ずっと損保協会のOB、続いていますね。過去のことは財務省もはっきり言いませんけれども、私は、ある段階まではあっせんがあったんだろうと、これは個人的認識でありますが、そう理解しています。ところが、ある段階から、財務省も金融庁も、あっせんはやっていない。しかし、あっせんをやっていない後に、官庁OBの人、すなわち財務省のOBだった方々が、どうも、個人的に、自分の後任としてだれがいいということを紹介なりし、推薦されているというような心証を私は持っています。このことが、組織と意を通じて、脱法的に、組織にかわってOBが、連なりのような中で事実上のあっせん行為を行っているのかどうかというところまで私はまだ確証を得ていませんが・・・」

「ある段階から、財務省も金融庁も、あっせんをやっていない」「個人的に推薦」ということの根拠はなんでしょうか。何によって立証できるのでしょうか。心証とは何でしょうか。何の根拠も示さずに、「心証」だけで、現役官僚と官僚OBのデカップリングを図る。これこそ、鳩山民主党政権が「裏下り」容認のロジックの根本の一つです。(※郵政改悪の「個人的」な試算と同じですね。全部個人的に処理していく・・・何の責任もない心証で処理していく・・・)

官僚OBのあっせんについて、心証を得ていないはないという。心証がないなら、調査すればいいではないか。でも調査しないで強行採決。

もっと問題なのはこのあと、松井副長官が、現行法上では官僚OBの斡旋を禁止することはできず、また、「今後の課題」としていること。つまり、強行採決したこの法案をもってしても、官僚OBの斡旋を止めることはできないということです。

「今の法律上、やめられた民間人がどなたかを御紹介されたということを必ずしも禁ずることができない状況
「そこをどう監視し、国民的にそういうことを、疑念を抱かせるようなことをなくしていくかというのは今後の課題


今後の課題をどうするのか、そこを与野党協議で議論しなければいけなかったのでしょう?
今後の課題を残して、どうして強行採決するのか?

そして、平野長官も、法律の限界を述べています。法律に限界があるなかの調査委員会ができたとして、どんな効果があるのでしょうか。


「今の、現行の状態では一定の限界もあることも事実」
良識に従う部分と、このような状況をやはり国民にさらすことによって、公開することによって是正をする、加えて、我々としても指導、是正をしていく、こういうことで進めていかなければならないと考えているところであります」


良識?公開による是正?指導、是正?
法律でしばらなければ、百年河清を俟つ、になるのでは?

では、自民党・みんなの党の対案ではどういう対応になるのか?
対案には、現役官僚の天下り斡旋には刑事罰で対応することになっています。
官僚OBが現役官僚との情報交換なしに、斡旋することは事実上できないはずである、ということで裏下りを根絶しようとしていたわけです。

そして、野党は与野党協議をもとめた。しかし、民主党はこれを無視して強行採決で応えた。
そして政権は、大臣等の任命権による天下りを検討中。

そのうえ、増税ですか。
重税国家・公務員天国に向けて突き進んでいくのか否か、参院選が決戦場ですね。