(対等な日米同盟)鳩山首相に集団的自衛権行使の覚悟はあるのか | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(対等な日米同盟)鳩山首相に集団的自衛権行使の覚悟はあるのか


昨日の参院本会議での自民党の林芳正議員の「日米同盟のあり方は」の代表質問に対して、鳩山首相は以下のように答弁された。

「日米同盟は日本外交の基軸だ。日米安保条約が改定され50年という節目の年を迎える。新政権として日米同盟のあり方全般の包括的なレビューをしたい。レビューを通じて、中長期的な視点に立って日米同盟を重層的に進化させる」。

「新政権として日米同盟のあり方全般の包括的なレビューをしたい」との発言は、鳩山首相が26日の所信表明演説で「緊密かつ対等な日米同盟」を明言しており、現状はそうなっていないから、日米同盟を再検討するとの意味としている。

「緊密かつ対等な日米同盟」とは常識的には、日本も集団的自衛権を行使することを含む概念であろう。民生支援の人を出すことをもって対等な同盟関係とは言わない。鳩山首相の考えていることが、日本は自らの集団的自衛権行使に関する制限を取り払い、自衛隊の海外での貢献を拡大することを前提に、普天間基地問題や思いやり予算の問題を全般的にレビューしよう、ということであれば、実現可能性はともかくとして、理論的には整合性がある。

鳩山首相にその覚悟はあるのか。日米安保条約50年の節目に集団的自衛権行使は合憲であるとの解釈に踏み切る覚悟はあるのか。それは連立の枠組みを大きく変えることになるかもしれない。それだけの覚悟があるか。

どうも、昨晩の鳩山首相の記者団への発言(下記記事参照)をみると、そこまでの覚悟があるわけでもなさそうである。

首相の発言は重い。その重さに耐えながら発言しなければならない。とくに、外交・安保は政権の命運だけでなく国益にかかわるものである。すぐに釈明に追われるような発言は公式の場ではしないほうがいい。いずれ、国益を大きく損ねる危険がある。(10月30日記)

(参照記事)日経新聞「首相、同盟再検証の意向」「『日米対等』にこだわり」「米の反発は必至」「政府内にも当惑広がる」

「鳩山由紀夫首相は29日、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を含め、日米同盟を包括的に再検証する考えを打ち出した。沖縄県の米軍普天間基地の移設問題や日米地位協定の改定など民主党が掲げてきた主張が念頭にあり、政権交代を機とした『対等な日米関係』との理念へのこだわりだ。だがこれまでの日米合意を根底から覆しかねない発言だけに米国の反発は必至。政府内にも当惑が広がっている。

『日米同盟のあり方について包括的なレビューを進めていきたい』との首相発言は29日の参院本会議での代表質問答弁で飛び出した。首相はこの後、首相官邸で記者団に『野党だったので必ずしもすべての情報を知りえなかった』と説明。『日米同盟を当然重視する前提』と断ったうえで『思いやり予算から地位協定、普天間などを包括的に調査を進めたい。そのための期間や時間が必要だ』と語った。

首相は答弁で、普天間基地の移設先に関しても『様々な選択肢を調査する』と強調した。移設先を巡って閣内が迷走しているが、県外や国外への移設を求めてきた民主党や自らの主張を踏まえ、あらゆる可能性をゼロベースで検討する考えを示したものとみられる。

日米同盟は自民党政権下で強化の方向で進んできた。1996年4月に橋本龍太郎首相とクリントン米大統領が日米安全保障共同宣言を発表。これを踏まえ、日米両政府は米軍基地の整理・縮小を協議する特別行動委員会(SACO)を設置し、普天間基地の全面返還で基本合意した。その後、日米両政府は移設先をキャンプ・シュワブ沿岸部とする案を決めた。

『民主的に、親切に、透明性を持ってあの状況をつくりあげた』。日米合意当時の防衛庁長官だった自民党の額賀福志郎氏は同日の派閥総会で、現行案の正当性を訴えた。一方、民主党は07年の参院選公約で『政府間合意を優先させた自公政権の手法は日米同盟の最大の基盤である国民の信頼を損なうものだ』と現行案を批判。鳩山首相は26日の所信表明演説で『緊密かつ対等な日米同盟』を改めて主張した。

首相発言は国内外に波紋を広げそうだ。普天間基地に関する現行案は、当時のラムズフェルト米国防長官が基地の移転に不満を抱く在日米軍を抑えて合意にこぎ着けた経緯がある。それだけに、交渉の経緯を知る日米関係筋は『合意を覆せばすべてがゼロに戻ってしまう』と懸念を強める。日米交渉の最前線に立つ外務省はこれまでの外交・安保政策が変質しかねないだけに内心穏やかではない。同省幹部は『普天間基地の移設でもめているのに、地位協定まで含めて見直すのは難しい』と戸惑いを隠さない」。