10月の読書報告。 | 中村堂(東京下町二人出版社)の日々

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夫婦で営む出版社、中村堂の日々を伝えるブログです。
(拠点は東京都中央区。「月島」に住み、「湊」で本を編む日々です)

中村堂 本日のおすすめ

 

今日から11月です。

10月の読書報告です。
10月は28冊、5,642ページを読みました。
今年に入って268冊読みました。
年末には、2022年10月から始めた読書の通算読了冊数1,000冊達成が視野に入って来ました。

9月から読み始めた芥川賞受賞作品ですが、10月は13冊読みました。
芥川賞の全受賞作品は186冊ありますので、まだまだ長い道のりですが、小説は楽しく読めるので完読をめざします。
28冊の中で、印象に残ったものを5冊。


・「ひとり日和」(著:青山七恵/河出書房新社/2007年)
・「乳と卵」(著:川上未映子/文春文庫/2010年)
・「奔流 コロナ『専門家』はなぜ消されたのか」(著:広野真嗣/講談社/2024年)
・「総理にされた男」(著:中山七里/宝島社文庫/2018年)
・「わかりやすさの罪」(著:武田砂鉄/朝日新聞出版/2020年)


その中から何か所か引用します。
・「乳と卵」(著:川上未映子/文春文庫/2010年)
「ああ、巻子も緑子もいま現在、言葉が足りん、ほいでこれをここで見てるわたしにも言葉が足りん、云えることが何もない、そして台所が暗い、そして生ゴミの臭いもする、などを思い、緑子の口の辺りの緊張した様子を見ながらに、しかしこんなこと、なんかが阿呆みたいだ、なんかがどうでもいいのだという気持ちがあって、(以下、略)」(p.97)  
・「奔流 コロナ『専門家』はなぜ消されたのか」(著:広野真嗣/講談社/2024年)
「しかし、直後は、その決断の影響を気にしていたようだった安倍は、三年後に刊行された『安倍晋三回顧録』(中央公論新社・二〇二三年)の中で、『国民に危機感を持ってもらう上では、今でもあの判断は正しかったと思います。その後の世論調査で、いくつかのコロナ対策は評判が悪かったけれど、一斉休校は評価が高かったです』と開き直った。気にしていたのは、教育や家庭への目に見えない影響ではなく、その場の世論の評価のことでしかなかった」(p.66)  
・「わかりやすさの罪」(著:武田砂鉄/朝日新聞出版/2020年)
「そこかしこでコミュニケーションが能力として問われる時代にあるが、関西学院大学准教授の貴戸理恵が「コミュニケーションのように『他者や場との関係によって変わってくるはずのもの』を、『能力』として個人のなかに固定的に措定することを『関係性の個人化』と呼んで」いる(『「コミュ障」の社会学』青土社)。他人との関係性でのみ成り立つものを、自分の能力として問われてしまえば、当然、皆が皆、どうしてその能力が私に欠けているのだろうと悩む。無理がある。だって、コミュニケーションは他者との関係性で成り立つのだから、いつだって欠けているはずなのだ」(p.71)

三連休が始まりましたが、私は、仕事が立て込んでいます。

いつも通りに事務所に行き、12月に発売予定の新刊の原稿整理。
試行錯誤しながら、進めています。
はっきりわかったことは、「大学の先生の文章は、さすがだ!」ということ。

今日読んだ本

「理性の限界 - 不可能性・不確定性・不完全性」(著:高橋昌一郎/2008年/講談社現代新書)

「人間が二人以上いれば、意見の違いが生じるのは当然です。そこで大切にしていただきたいのは、言うまでもないことですが、『他者理解』、つまり自分以外の人々の考え方や生き方をどのように理解するのかということです。このシンポジウムでは、意見が違うという結論を主張するのではなくて、なぜ意見が違ってくるのか、その理由を討論していただきたい」(p.22-23)