【解説】保険業法改正と乗合代理店の比較推奨規制/情報提供義務 | なか2656の法務ブログ

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1.はじめに
10月に発売された、週刊東洋経済臨時増刊『生保・損保特集2015年版』に、今般の保険業法の改正の土台となった、金融庁の諮問会議「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」の委員を務められた、弁護士の錦野裕宗先生の保険業法改正に関する論文が掲載されていました。


そのなかで、乗合代理店などの比較推奨規制についてくわしく説明されていたので、とりあげてみたいと思います。

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・再びかんぽ生命保険のコンプライアンス統括部内でのパワハラを法的に考える/ブラック企業

2.比較推奨規定とは
比較推奨規定とは、今回の保険業法改正の柱のひとつである、「情報提供義務の明確化」の一部分であり、複数の保険会社の保険商品を扱う乗合代理店などが、複数の所属保険会社の比較可能な同種の保険商品のなかから、一定の保険商品を提案する場合の情報提供のあり方を規制するものです(改正保険業法294条1項、改正保険業法施行規則227条の2第3項4号ロ・ハ)。

この規制のポイントは、乗合代理店などが「顧客の意向に沿った保険契約を選別」するか否かで、情報提供義務の内容が異なる点です。


「顧客の意向に沿った保険契約を選別」をする場合は、①取扱保険商品のうち、顧客の意向に沿った比較可能な同種の保険商品の概要、および、②当該提案の理由(推奨理由)、の2つの説明を行うことが義務付けられます(改正保険業法施行規則227条の2第3項4号ロ)。

一方、「顧客の意向に沿った保険契約を選別」しない場合は、当該提案の理由を説明することが義務づけられています。すなわち、特定の保険会社との資本関係や経営方針上の理由など、保険募集人側の理由を説明することが義務付けられています(同施行規則227条の2第3項4号ハ)。

3.顧客の意向に沿った保険契約を選別を「する場合」
この場合、乗合代理店などは、①取扱商品のうち、顧客の意向に沿った比較可能な同種の保険商品の概要の説明と、②当該提案の理由(推奨理由)の説明、の2点が義務付けられます。

この①により、顧客に保険商品の選択肢が示され、顧客がより自由な商品選択が行うことが可能となります。

つぎに、②は、保険募集人から顧客への商品選択上のアドバイスです。

従来の保険業法は300条1項などが、保険募集人などに対して、保険募集にあたって顧客に重要な事項を告げない行為を禁止し、その義務違反に対して刑事罰を設け、あるいは同100条の2が保険会社に対して適切な保険募集がなされる体制整備義務を課すなどの制度により、保険会社側に顧客に情報提供を行うよう促してきました。

これに対して、改正保険業法は、より積極的な情報提供義務の規定を置くこととしました。これが、改正法294条1項の情報提供義務の条文であり、その細目を定める、この施行規則227条の2第3項4号ロの、当該提案の理由(推奨理由)の説明も、まさにその現れです。

とはいえ、対面販売の保険募集において、そもそも簡単なものではない保険商品を保険募集人と顧客との対話のなかで推奨理由を説明することは、話法の定型化が困難です。

しかし、推奨理由の説明が法律で義務付けられた以上、乗合代理店などは組織レベルで、説明の品質と正確性を確保する必要があります。

この点、上述の錦野弁護士は、「個々の保険販売員の能力・保険に係る知識・知見の当該保険募集人組織にふさわしいプロレベルでの確保はもちろんのこととして、典型的な顧客ニーズと取扱商品との関係性の整理、その関係性を顧客に対して説明する「言葉」を、マニュアル等でパターン化し、最低限のレベルを確保すること、必要に応じてシステム的に補うことが考えられるのではないか」との見解を示しておられます(錦野裕宗「改正業法で誕生の比較推奨規制、意向把握義務への思いと期待」週刊東洋経済臨時増刊『生保・損保特集2015年版』44頁)。

4.顧客の意向に沿った保険契約を選別を「しない場合」
このように、乗合代理店が、顧客の意向に沿った保険契約を選別を「する場合」、非常に高度な説明義務を顧客に対して負うことになります。

それに対して、乗合代理店などの負担を緩和するために、改正法は、顧客の意向に沿った保険契約を選別を「しない場合」という選択肢を用意しています(施行規則227条の2第3項4号ハ)。

こちらを乗合代理店などが選択した場合、当該提案の理由を説明することが義務づけられています。すなわち、特定の保険会社との資本関係や経営方針上の理由など、保険募集人側の理由を説明することが義務付けられています。

この説明により、「自分(乗合代理店)は、顧客の意向に沿った保険契約を選別する者ではない」と、自らの立場を顧客に表示する機能(立場表示機能)は極めて重要です。

つまり、保険会社の営業職員でなく、例えば「ほけんの窓口」などの複数の保険会社の保険を扱う来店型保険ショップ(乗合代理店)については、顧客が、「来店型保険ショップは自分のためにベストな保険を選んでくれるだろう」と期待する一方で、乗合代理店側はボランティアでなくビジネスで業務を行っている以上、手数料などの観点から自社にとってより利潤のあがる保険商品を選択し提案するのはある意味当然であり、その両者のギャップが、保険におけるトラブルの原因のひとつとなってきました。

しかし、この立場表示機能が動き出せば、このようなトラブルが防止さえることが期待されます。また、乗合代理店側にとっても、リスク管理および自らの権限を確認する意味でも、この立場表示機能は有益でしょう。

この点、金融庁の改正監督指針(保険会社向けの総合的な監督指針)のⅡ-4-2-9(5)②(注1)はつぎのように規定し、乗合代理店を牽制しています。

(注 1) 形式的には客観的な商品の絞込みや提示・推奨を装いながら、実質的には、例えば保険代理店の受け取る手数料水準の高い商品に誘導するために商品の絞込みや提示・推奨を行うことのないよう留意する。

また、同監督指針Ⅱ-4-2-9(4)(注)も同様に、乗合代理店を牽制しています。

(注) 単に「公平・中立」との表示を行った場合には、「保険会社と顧客との間で中立である」と顧客が誤解するおそれがある点に留意する。

5.保険会社
なお、このような比較推奨規定は来店型保険ショップなどの乗合代理店などを規制の対象とするもので、従来の保険会社は対象となっていません。

これは、改正保険業法で新設される意向把握義務(294条の2)が、「顧客の意向に沿った保険契約の提案および当該保険契約の内容説明」を含んでいるので、この部分でカバーできるとされています。

また、そもそも保険業法300条1項6号は、保険会社の営業職員が自社の商品と他社の商品とを顧客に対して誤解を与えるような形で比較表示してはならないと定め、保険会社が他社商品との比較表をつくるための留意事項として、監督指針II -4-2-2(8)が厳格な要件を定めています(中原健夫・山本啓太・関秀忠『保険業務のコンプライアンス』97頁)。

ところが、来店型保険ショップは、ショップ独自の比較表を作成してしまっているそうであり、このような点も問題となっていました。

今回の保険業法の改正の柱の他のひとつは、「乗合代理店の体制整備義務の創設」です。

つまり、一昔前には存在しなかった、来店型保険ショップなどの大型の乗合代理店におけるトラブルの多発が、金融庁の「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」でも大いに問題視されました。

そのため、来店型保険ショップなどに法の網をかぶせることが、今回の保険業法改正のねらいのひとつです。

6.顧客の意向に沿った保険契約を選別を「しない場合」という経営判断について
今回取り上げた、比較推奨規制に関して、個人的な感想を述べるなら、「顧客の意向に沿った保険契約を選別しない場合」を選択した、保険募集について実力のない乗合代理店は、顧客からの信頼を得られず、遠からず市場からの退場を迫られるのではないでしょうか。

保険商品の提案の場で、「我が乗合代理店は、〇〇生命との関係が強いので、〇〇生命の商品をあなたに提案します」と説明されたら、うさんくさい感じがぷんぷんして、顧客はとてもその保険の保険契約の申込をしようとは思わないでしょう。

推奨理由の説明義務を達成できる実力のある、大手の乗合代理店のみが、保険会社とともに保険業界で生き残ってゆくのではないかと思われます。

7.乗合代理店としての郵便局・日本郵便そして日本郵政
なお、乗合代理店といえば、郵便局すなわち日本郵便も、かんぽ生命、アフラック、住友生命などの複数の生命保険会社から保険募集の委託を受ける超大型の乗合代理店です。

日本郵便は官製の大企業の意地にかけて、「顧客の意向に沿った保険契約を選別をする場合」を選択し、顧客に対する高度な情報提供義務を果たそうとするでしょう。

しかし、日本郵便は金融に係る事務についてモラルハザードな事故がたびたび新聞報道され、パワハラ、過労死、労働訴訟なども恒常的に報道されています。

また、日本郵便を監督する立場のかんぽ生命コンプライアンス統括部自身部内でパワハラを行うなど、日本郵政全体がコンプライアンスやガバナンスがどうしようもない、ブラック企業グループです。

・日本郵政グループ・かんぽ生命保険コンプライアンス統括部がパワハラ/ブラック企業

・再びかんぽ生命保険のコンプライアンス統括部内でのパワハラを法的に考える/ブラック企業

このような三流、四流業務品質・経営品質の日本郵便・日本郵政に、情報提供義務や乗合代理店の体制整備義務を果たすことはとても無理です。

最近の日経新聞や週刊誌などは、日本郵政3社の株価がどれだけ上がるかといった楽観的な提灯記事を全力で書いていますが、日本郵政はワタミやたかの友梨ビューティクリニックなどのようなブラック企業グループです。

たとえば最近、マイナンバー制度の通知カードを早くも誤送付してしまったという報道もありますし、今後、さらに重大な不祥事も起こすでしょう。

日本郵政3社の株価の勢いがどこまで持続するか、ある意味、見物です。

■関連するサイト
・【解説】保険業法等の一部を改正する法律について

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・再びかんぽ生命保険のコンプライアンス統括部内でのパワハラを法的に考える/ブラック企業

・日本郵政の暗部が露呈!パワハラ蔓延、過酷ノルマ&労働環境…裁判多数で上場に影響か | ビジネスジャーナ

・日本郵政の非正規労働者約1万4000人雇い止め――差別温存し定年だけ“平等”|blogos

・マイナンバー通知カード誤配達 全国で初、千葉の郵便局|日経新聞

■参考文献
・錦野裕宗「改正業法で誕生の比較推奨規制、意向把握義務への思いと期待」週刊東洋経済臨時増刊『生保・損保特集2015年版』44頁
・錦野裕宗・稲田行祐『保険業法の読み方[改訂版]』138頁、235頁
・中原健夫・山本啓太・関秀忠『保険業務のコンプライアンス』97頁
・吉田桂公『一問一答改正保険業法早わかり』26頁


銀行等代理店のための改正保険業法ハンドブック



週刊東洋経済臨時増刊 生保・損保特集2015年版



一問一答 改正保険業法早わかり -保険募集・販売ルール&態勢整備への対応策



保険業法の読み方 改訂版: 実務上の主要論点 一問一答



保険業務のコンプライアンス



日本郵政の闇 (別冊宝島 2378)



“まやかしの株式上場"で国民を欺く 日本郵政という大罪





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