建築請負の建物の建替費用相当額の損害賠償請求の可否(積極)(最高裁平成14年9月24日判決) | なか2656のブログ

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 東京商工会議所編『ビジネス実務法務検定試験1級公式問題集(2013年度版)』256頁に、第30回過去問題(共通問題第2問)の参考答案があり、そこに建築物の請負に関する平成14年の判決が判決年月日のみ載っており、内容を知りたいと思ったので図書館で調べてみました。

 

1.事案の概要

 Ⅹは建設会社Yと、本件建物(3世帯住居用の2階建建物)の建築工事の請負契約を締結した。しかし、Yが建築した本件建物は全体にわたって極めて多数の欠陥があり、主要な構造部分にも重大な欠陥があって、建て替えるほかないものであった。

 そこでⅩはYに対して瑕疵担保責任等に基づき建て替え費用などの損害賠償を請求した。これに対して、Yは民法635条ただし書きにより、建物については瑕疵の存在を理由に契約の解除ができないのであるから、建て替え費用を損害として認めることは、契約の解除以上のことを認める結果となるから許されないなどと主張した。

 

2.争点

 建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することは、「建物その他土地の工作物」については重大な瑕疵があっても請負契約を解除できないと規定している民法635条ただし書の規定の趣旨に反して許されないか否か。

 

3.判決

 本判決はまず民法635条ただし書の趣旨について次のように述べた。

「請負契約の目的物が建物その他土地の工作物である場合に、目的物の瑕疵により契約の目的を達成することができないからといって契約の解除を認めるときは、何らかの利用価値があっても請負人は土地からその工作物を除去しなければならず、請負人にとって過酷で、かつ、社会経済的な損失も大きいことから、民法635条は、そのただし書において、建物その他土地の工作物を目的とする請負契約については目的物の瑕疵によって契約を解除することができないとした。」

 そして本判決は本件についてつぎのように判断した。

「しかし、請負人が建築した建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合に、当該建物を収去することは社会経済的に大きな損失をもたらすものではなく、また、そのような建物を建て替えてこれに要する費用を請負人に負担させることは、契約の履行責任に応じた損害賠償責任を負担させるものであって、請負人にとって過酷であるともいえないのであるから、建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることを認めても、同条ただし書の規定の趣旨に反するものとはいえない。」

したがって、建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額を損害としてその賠償を請求することができるというべきである。


ビジネス実務法務検定試験1級公式問題集〈2013年度版〉