こんにちは。

 

公的年金の財政検証の結果が公表されました。


言わば、年金制度の「定期健康診断」のようなもので、5年ごとに実施されています。


今回の検証結果を一言でいえば、「手術しなくてはいけないほどではないので、もう少し様子を見ましょう」くらいのことになりそうです。


給付水準を示す「所得代替率」が何とか50%以上になることが、「様子を見る」とした理由になりますが、そうするために帳尻を合わせたという見方もできそうです。

 

今回の検証結果を見て注目したことは3つ。


一つは、検証の前提となる数値です。これが的確でないと検証自体が信用できないものになります。


まず「合計特殊出生率」は、中位の1.36を採用していますが、昨年の1.20と比べるといかにも高望みの数字のように見えます。


また、人口推計に重要な意味を持つ外国人も、感染症拡大前の水準で増加するとしていますが、そのためには受入体制を整えることが急務になります。

 

もう一つは、基礎年金の拠出期間です。5年伸ばして45年間にする方向が出されていましたので、見送りになったのはやや意外な気がしました。


所得代替率の低下が想定の範囲内に収まったこともありますが、国庫負担が増加することを嫌ったのかもしれません。

 

あと一つは、中高年の立場で気になる、在職老齢年金です。


これも高齢者の就労抑制の原因になっているとの指摘があり、見直しの議論がされてきましたが、見送りとなりました。


見直しや廃止による追加負担がネックになったのかもしれません。

 

こうして見ると、検証の前提もあやふやなところがあり、また、本来手を付けるべきところもおサイフ事情で先送りになった印象が残ります。

 

そんな思いになりながらも、この検証に当たった厚労省年金局数理課の作業ぶりには、頭の下がる思いがします。

 

今回の資料を見るだけで、年金制度のすべてが見えてくるような素晴らしい内容ですので、年金を学習する人は是非見ておきたいものです。

 

今回もお付き合いいただきありがとうございました。次回の更新でお会いできたら嬉しいです。