にほんブログ村
ブログランキングに参加しています
遺留分減殺請求の期限 いつから期間が始まるのか
遺言書や生前贈与によって、法定相続分とは異なる割合で相続させたり、相続人以外に財産を残したりすることができます。
これは、個人の財産はその人が自由に処分できることから、当然といえば当然のことです。
他方で、民法では、相続の分野においては、遺留分という制度があります。
これは、相続では、特定の相続人や第三者に財産を残そうとしても、相続人に最低限の取り分を保障するといった制度です。
しかし、この遺留分の減殺請求は、いつでもできるというわけではありません。民法では、減殺の請求権(遺留分侵害額の請求権)は、遺留分権利者が、「相続の開始」及び「遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったこと」を知ってから1年以内に行使する必要があります。
1年以内に行使しない場合には、時効によって遺留分に関する権利は消滅すると定められています。
また、相続開始の時から10年を経過したときも、同じく時効によって消滅することとされています。
1年以内の期間ですが、「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与又は遺贈」があったことの両方を知る必要があります。
親族間では、被相続人の生前から、特定の親族だけが生前贈与を受けていることを知っている場合もあると思います。
このような場合には、生前から知っているわけですから、相続の開始(=被相続人の死亡)を知ってから1年が期限と考えた方がいいでしょう。
また、遺言によって特定の相続人だけに遺産を全て相続させるといったこともありますが、被相続人がなくなってからしばらくして(例えば四十九日の後や貸金庫を解約した際など)、初めて遺言書の存在と内容を知ることもあるでしょう。
そのような場合には、遺言書の存在と内容を知ってから1年が期限と考えた方がいいでしょう。
では、遺言書が見つかった場合で、無効が疑われる場合などは、どのように考えたらいいのでしょうか。
最高裁判所の判例(昭和57年11月12日判決)では、以下のような判断が出されています。
「『減殺すべき贈与があったことを知った時』とは、贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知った時と解すべきである」
「民法が遺留分減殺請求権につき特別の短期消滅時効を規定した趣旨に鑑みれば、遺留分権利者が訴訟上無効の主張をしさえすれば、それが根拠のない言いがかりにすぎない場合であっても時効は進行を始めないとするのは相当でないから、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて遺留分権利者が右事実を認識しているという場合においては、無効の主張について、一応、事実上及び法律上の根拠があって、遺留分権利者が右無効を信じているため遺留分減殺請求権を行使しなかったことが,もともと首肯しうる特段の事情が認められな
い限り、右贈与が減殺することのできるものであることを知っていたものと推認するのが相当というべきである。」
このような判決がありますので、遺言書が見つかった際に、その遺言書が無効だという疑いがあるとしても、念のため遺留分減殺請求の意思表示は、予備的にでもしておいた方が無難でしょう。