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平成30年7月6日、相続に関する民法等の規定を改正する法律が成立し、同月13日に公布されました。
このうち、遺産分割に関する見直しについてお話します。
(1)特別受益における配偶者保護のための方策(新民法第903条第4項)
現行法では、相続人の中に被相続人から生前贈与や遺贈により特別な利益(特別受益)をえた者がいる場合、遺産分割において、まずその特別受益分を遺産に加算(持戻し)して、それぞれの相続分を算定します。
たとえば、被相続人A、その相続人は妻B・長男C・二男Dであり、Aの遺産は5000万円、生前贈与をBに1000万円していたケースの場合、原則は、相続財産は6000万円とみなされ、それを法定相続分でわけると、B3000万円・C1500万円・D1500円となり、Bは生前贈与分を控除されるので、最終的には、 B2000万円・C1500万円・D1500万円となります。
そして例外として、「持戻しを免除する」という被相続人の意思表示があった場合は、Aの相続財産は5000万円であり、それぞれ B2500万円・C1250万円・D1250万円を相続することになり、持戻しをする場合と比べBは500万円多く取得できます。
今回の改正法では、配偶者の老後の生活保障の観点から、以下の要件を満たす場合には、特別受益の持戻し免除の意思表示があったものと推定する、とされました。
① 婚姻期間が20年以上の夫婦である
② 対象財産が、居住用の建物または敷地
③ 遺贈または贈与された
(2)預貯金の仮払い制度の創設
預貯金は、遺産分割の対象とされ(平成28年12月19日最高裁)、相続人全員の同意がない限り、原則として遺産分割前の払戻しは認められません。
しかし、相続債務(被相続人の借金や医療費)があり、その支払いをしたい場合や、被相続人と生計を同じくしていた者で生活費が必要な場合など、緊急での払戻しが求められることもあります。
改正法により、遺産分割前に相続人に払戻すことを認める制度が二つ創設されました。
① 家庭裁判所の保全処分を利用する方法(新家事事件手続法第200条第3項)
- 遺産分割の審判または調停の申立て、および仮払いの申立てをする
- 仮払いの必要性を疎明する
(相続債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情) - 申立てに基づき裁判所が、仮払いの金額を判断する
② 裁判所の判断を経ないで、相続人単独で預貯金の払戻しを認める方法(新民法第909条の2)
- 払戻しの上限金額あり
「相続開始時の預貯金額(口座ごと)×1/3×法定相続分」
かつ
「金融機関ごと(複数口座ある場合は合算)に法務省令で定める額」 - 払い戻された預貯金は、その相続人が遺産分割により取得したものとみなされます
(3)遺産分割前に処分された財産の扱い(新民法第906条)
遺産分割の前に、遺産の全部または一部が処分された場合、実務では、処分された遺産は遺産分割の対象とならず、残っている遺産のみを分割します。遺産を処分した相続人は、遺産分割において相続分から処分した利益分を引かれることもなく、不公平が生じていました。
改正法により、共同相続人全員(遺産処分した相続人本人は除く)の同意があれば、処分された遺産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができる、とされました。
(4)一部分割(新民法第907条第1項・第2項)
実務で認められていた遺産分割手続きでの一部分割が明文化されました。
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