いわゆる「後継ぎ遺贈」は有効なのか? | 名古屋市,岡崎市の相続,遺産分割,遺言に強い弁護士のブログ|愛知県

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弁護士 杉浦 恵一

遺言を遺す際に、先祖伝来の土地などがある場合には、その土地をまずはAに、Aが死亡したら次はBに、といった具合に、何世代にも渡って取得者・相続人を指定するような場合があります。

このような分割方法・取得者の指定を、「後継ぎ遺贈」という場合があります。

愛着のある土地であるほど、もしくは由緒ある物であるほど、このような「後継ぎ遺贈」をしたくなってくるものです。


しかし、このような「後継ぎ遺贈」は、必ずしも実現されるとは限りません。

後継ぎ遺贈の効力が争われた事例はあまりなく、裁判上は、有効とも無効とも言い難いというのが現状かと思われます。

学説では、「後継ぎ遺贈」はそもそも法的効力がないとして無効と考える説も有力に唱えられているようです。

 

「後継ぎ遺贈」は、概ね「甲土地をAに遺贈する(相続させる)。Aが死亡した場合、甲土地はBに遺贈する(相続させる)。」といった文言が多いのではないかと思われます。

「後継ぎ遺贈」を細かく見てみると、

 ①遺言者の希望は、Aに相続させることであり、Aの死亡後Bに相続させることは、単に遺言者の希望に過ぎない(そのため法的効力はない)。

 ②Aが死亡した場合にBに所有権を移転させることと引き換えに、Aに土地の所有権を取得させる負担付の遺贈である。

 ③Aが死亡した際に甲土地を所有していれば、死亡を条件として所有権がBに移転する遺贈である。

 ④実はAは、甲土地を使用・収益する権限があるだけで、甲土地を処分できない。実質的にはBに対する遺贈である。


 といった、いくつかの類型が考えられます。

 

「後継ぎ遺贈」の問題点は、上の例で行けば、Aが相続した際に問題になってきます。「後継ぎ遺贈」としてAが取得したけれども、Aの遺言書ではCに相続させるとなっていた場合、もしくはAの生前に甲土地がAからDに売却されてしまった場合、「後継ぎ遺贈」の遺言者の目的は達成されないことになります。

この場合、Aは遺言書に定められた条件を守らなかったとして、そもそもAが甲土地の所有権を取得したこと自体が否定されるのでしょうか。


実際にそこまでなるかは不明確ですが、「後継ぎ遺贈」で遺言を遺すと、このような問題が発生します。

そのため、「後継ぎ遺贈」は、次の次の世代にまで引き継がれるかどうか、実際には分からない、不安定な手段と言えるでしょう。

このような問題があることを考えれば、安易に「後継ぎ遺贈」を記載した遺言書を作っていれば大丈夫とは言えません。



このような問題を避けるためには、どうしたらいいのでしょうか。

それは、何が一番の目的か、何が一番重要か、順位付けをすることではないかと思います。

上の例で示すなら、確実にBに相続させたいのであれば、最初からBに相続させることを定めるべきだと考えられますし、最終的にはBに相続されなくても仕方ないという気持ちであれば、Aが取得するところまでしか書かず、Bへの相続は、付言事項などで書いておくといいのではないかと思います。


遺言書は、あくまで紛争を少なくするためのものですので、遺言書を作ったばかりに紛争が増大してしまえば、本末転倒と言えるでしょう。



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