近頃の相続紛争の傾向として、 大きな遺産がない一般家庭でも争いが起こっている と、最近言われております。
平成26年10月28日の日本経済新聞の夕刊では、司法統計から引用して、
遺産額が5000万円以下の遺産をめぐる争いが、
平成15年の4400件弱から、平成25年には約6700件に増えていることが報道されています。
また、平成26年1月から9月の速報値では、
・遺産額が1000万円以下の事件 … 32%
・1000万円を超え5000万円以下の事件 … 43%
あったとされています。
遺産が少ないから相続争いは全く関係ないものだとお考えの方も多いと思いますが、
実際には、争いになる可能性は、遺産額が少ないから低いとは言い切れないものがあります。
そして、平成27年から、遺産の基礎控除が減ることになりますので、
相続税を納付する必要のある件数が増えると予想されます。
相続税を支払う必要がある場合、紛争の件数が増えると言われますが、それはなぜでしょうか。
その理由として、相続税の資金が用意できているかどうかの問題があります。
遺産分割には期限はありません。
亡くなってからすぐでも、1年後でも、10年後でも、
いつでも遺産分割をすることができますし、しなくても違法ではありません。
そのため、今までは相続税を支払わなくてもいい場合、遺産分割をしない例も散見されました。
このような場合、後で相続人が増えすぎて困るといった事例はあるのですが、
分割できなくて死活問題になるということは少ないようです。
しかし、相続税を支払わなければならない場合、分割できないと困ったことになります。
家を売るにも、預金を解約するにも、株式を換価するにも、基本的には遺産分割が必要です。
また、相続税法上の特例(配偶者控除や宅地等の評価を減らすこと)の適用を受けるためには、
遺産分割が完了していなければならない場合もあります。
そして、相続税の支払いには期限があり、
分割できないとか、資金が用意できないからといって、納税しなくてもいいことにはなりません。
そうしますと、少しでも早く遺産分割をするため、いきなり裁判所で調停をする事例が増える可能性もあります。
このような争いを未然に防ぐためには、遺言書の作成や生前贈与などが重要になってきますが、
遺産額が少ない方ほど事前の対策を取っていないのが実情ではないかと思われます。
今後を見越した場合、どのような家庭でも、事前の相続対策が必要になってくる時代になったのかもしれません。

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