
にほんブログ村
ブログランキングに参加しています

励みになりますので、クリックお願いいたします。
弁護士 杉浦 恵一
前回、自筆で書かれた遺言については、裁判所が「検認」の手続をとったとしても、その遺言の有効性を裁判所が保証してくれるものではなく、効力に疑いのある遺言書や、内容が不明確な遺言書が発見された場合には、その解釈等をめぐって、逆に紛争が長期化・複雑化し、せっかく紛争にならないように作った遺言書が逆効果となる場合があるとご説明しました。
自筆の遺言書は、民法上、形式が厳しく決められています。
具体的には、民法968条1項で、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」とされていますので、原則として全文を自分で書き、作成した日付を記載し、印鑑も押す必要があります。
印鑑が押印されていないことで、遺言書が無効になるということも考えられます。
また、訂正の方法についても、民法968条2項で、「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」とされていますので、一度作成した遺言書を訂正する場合には注意が必要です。
遺言書でよく問題になることとしましては、日付が記載されていない、夫婦共同で遺言書に署名してしまっているというような形式的な問題から、内容がよく分からず、遺言書に従って遺産分割をすることが難しいといった問題もあります。
例えば、遺言書があれば、不動産を相続する者に指定された者が、遺産分割協議を経ないで不動産の名義を変更できる場合があります。
しかし、名義を変更する法務局は、遺言書の内容を見て登記できるか否かを判断しますので、不動産が特定されておらず、「○○の土地」といった記載だけであれば、名義変更できない場合もあります。
他にも、相続させる財産が特定されていなかったり、条件付けをしすぎて複雑になりすぎているといった遺言書も散見されます。
遺言書に関しては、今まで出された多くの裁判例がありますので、何が有効で何が無効かは、なかなか判断しにくいところがあります。
また、遺言書を作成したからといって、全ての遺産を遺産分割協議なしに分けられるかというと、必ずしもそうではありません。
金融機関の預金や株式といったものは、相続人全員の署名・押印・印鑑登録証明書がなければ、現実に解約できない場合もあります。
このように、遺言書を作っただけでは、紛争を防ぐことができるかというと、必ずしもそうではありません。

にほんブログ村
ブログランキングに参加しています

励みになりますので、クリックお願いいたします。