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自転車事故の賠償責任と保険
弁護士 田村 淳
1.自転車事故について
2017年12月、大学生がスマートフォンをしながら電動アシスト自転車を運転中、歩行中の女性にぶつかり死亡させたというニュースがありました。近年、健康ブームで自転車利用者も増えているように思われます。今回は、自転車交通事故の特徴及び自転車事故に備えた保険について説明します。
2.自転車交通事故の特徴
(1) 自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」といいます。)が適用されない
自賠責法3条にいう「自動車」には、軽車両が含まれません。そのため、軽車両である自転車運転について自賠責法3条の適用はありません。
(2) 自賠責法が適用されないことの問題点
- ① 被害者が加害者の故意又は過失についての立証責任を負う
民法上の原則に従えば、事故の被害者が加害者に対して損害賠償請求をする場合、被害者が加害者の故意又は過失を主張立証しなければなりません。
しかし、事故の被害者が加害者の故意又は過失を主張立証することは困難な場合が多いです。
そのため、自賠責法3条は、被害者を保護する観点から、被害者に故意又は過失の主張立証責任を負わせるのではなく、加害者が自動車の運行に関して注意を怠らなかったことを主張立証することとしています。- 自動車事故については、自賠責法3条によって被害者の負担が軽減されているというわけです。
自転車については、自賠責法3条の適用がないことから、民法上の原則通り、被害者が加害者の故意又は過失を主張立証しなければなりません。したがって、この点についての被害者の負担が大きいといえます。 - ② 被害回復が困難になりやすい
交通事故被害者の被害回復のためには、金銭的な補償が不可欠です。
しかし、自転車事故の場合には、自賠責法が適用されないことから、自賠責保険から給付を受けることができません。
また、自転車は、未成年者であっても運転が可能であることから、未成年者が加害者となるケースも多いです。未成年者が加害者の場合、賠償資力がないことがほとんどなので、被害回復が困難となりやすいといえます(なお、未成年者の親が賠償責任を負うことはあります)。 - ③ 後遺障害等級認定を受けることができない
自動車事故で、被害者に後遺障害が残った場合には、被害者は、後遺障害等級認定を受け、その等級に応じた慰謝料と逸失利益を請求することができます。
しかし、自転車事故の場合には、この後遺障害等級認定を受けることができません。そのため、被害者は、医療記録等から後遺症の程度等について立証しなければならず、この点について争いが生じた場合には、裁判が長期化するおそれがあります。
3.保険へのご加入を
(1) 保険の重要性
自転車事故を起こしてしまった場合、高額な賠償金を負わなければならなくなる可能性があります。賠償金が支払うことができなければ、事故被害者の被害回復もままならないということになりかねません。
したがって、自転車事故に備えて保険に加入しておくことが重要であるといえます。自転車保険の重要性から、名古屋市を始めとして自転車保険への加入を義務化している自治体もあります。
自転車事故の賠償責任を填補するための保険としては、個人賠償責任保険、自転車保険等があります。
(2) 個人賠償責任保険について
個人賠償責任保険は、個人が日常生活において第三者の生命・身体・財産に損害を与えて損害賠償責任を負った場合に、その経済的損失を填補する保険です。
この保険は、自動車保険、火災保険、傷害保険、生協の共済、大学生協の学生総合共済等の特約として契約している場合が多いので、加入している保険や共済の特約を調査する必要があります。
(3) 自転車保険について
自転車保険は、個人賠償責任保険が特約で付く傷害保険です。自転車保険に加入しておくことにより、自転車事故の被害者となった場合に後遺障害慰謝料や治療費等を加害者から十分に回収できないというリスクにも備えることができます。
(4) 一度保険への加入状況等のご確認を
個人賠償責任保険は特約で既に加入している可能性がありますし、自転車保険は様々な種類のものが販売されているので、一度ご自身の保険ヘの加入状況等を調べてみることをお勧めいたします。
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